表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
144/148

#138 勝利に向かって


 木下先生からの言葉で,諦めかけていたチームの雰囲気が変わった。

 その中心にいるのはやはり,これまでとは見違える動きをしている2人のエース。

 この終盤になってマッチアップしている相手を圧倒する活躍を見せ始めている。


 天王寺先輩は,何をするにも常に張り付かれやり難そうだった上月さん(4番)相手に,何の躊躇いもなくドリブルで抜き去り,鮮やかにパスを出し,正確にシュートを決めていく。

 白山先輩は,第3クォーターから持ち直しようやく均衡に持っていった池田さん(5番)をゴール下で圧倒。自分のスペースを確保し,リバウンドを奪い,センターとは思えない巧みなパスワークで相手を翻弄している。


 その2人を中心として,他の選手の動きも良くなっている。

 起点となるパスが変わればそこからの動きはこうも変わって来るのか。

 天王寺先輩や白山先輩から始まる完璧ともいえるパスワークは,同じガードとして尊敬すら覚えてしまう。


 それに加えて,ディフェンス面でも良い方向に変化が見えてきた。

 ゴール下の支配権を白山先輩が奪った事で,相手の攻撃は自然とミドルやロングシュートに絞られる。

 しかし,攻撃の起点となるガードの上月さん(4番)を天王寺先輩が抑えているため,そうそう良い位置でボールが受けられない。

 そこでリバウンドも取られる可能性が高いとくれば,一気に決定率は落ちる。


 その結果,何と僅か1分足らずで点差は5点まで縮まる。

 このペースでいけば,こちらが逆転できる可能性は非常に高い。

 この快進撃に,桜高校は堪らずタイムアウト。

残り1分半を残した所で,物理的に流れを切ってきた。


「行けるわ,みんな。残り1分半,集中よ!」

『はい!』


 それでも,今のみんなは止まらない

 誰も何も言わなくたって,この集中は試合終了まで途切れる事はないだろう。

 相手が取ったタイムアウトだし,俺からも特に言う事も無い。

 それよりも,1分間たっぷり休んで貰った方が良い。


「待ってますからね。先輩たちが勝って,笑って戻ってくるのを」


 結局,俺が口を開いたのはタイムアウト終了後,ベンチから出ていくみんなに対してだけだった。

 言葉自体は最終クォーター前のものとそう違いは無いが,心の持ちようは大きく違う。


「えぇ,任せておいて!」


 そう答える先輩の表情も明るい。

 きっと,今の先輩たちなら何でも出来る。


 俺はこの時,この試合が始まって初めて,安心してみんなを見送る事が出来たのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ