#13 偵察終了
「いや~楽しかったな」
「あぁ。久しぶりのバスケだったし…」
楓高校からの帰り道を大地と談笑しながら帰る。
『こら! 勝手に何をやっている!』
武の鮮やかな3ポイントが決まったと同時に体育館へやってきた顧問の手によってゲームは終了。
俺たち2人は問答無用で体育館を追い出されてしまった。
最後に見た柏木先輩が俺に対して妙な表情を浮かべていたのが少し気になったが,特に問題はないだろう。
彼は3年,これから公式試合で会う確率はもうほとんど無いのだ。
同じチームだった3人のこれからについては,あのキャプテンからの嫌がらせ等不安な面も無い訳ではないが,とりあえず実力は示したのだから無下にされることはないだろう。
「やっぱり,バスケは楽しいな」
そんな事を考えていると,大地がしみじみと言う。
俺だってそれは同じ気持ちだ。
高校に入ってからはまともにプレイもさせてもらえない状況だったので,今日のゲームは本当に楽しかった。
「また,やりたいな…」
「…あぁ」
改めて思う。
いつか男子バスケ部を復活させて,大地や先輩,まだ見ぬ仲間たちと一緒に夢の舞台へ行きたい,と。
「でも久しぶりに神経使ったら疲れた~…。なぁ大地,どこかでラーメンでも食べて帰ろうぜ」
「お,良いねぇ。この辺はまだ良く知らないから,おすすめの店を教えてくれよ」
「オッケー。じゃあ行くか」
今日の偵察は,きっと「女子部のマネージャー」からしたら落第点だろう。
でも,俺にとっては満点合格の内容だった。
――でも,天王寺先輩は許してくれないだろうなぁ…
大地と共に自転車を走らせながら,俺は明日の部活で天王寺先輩に今日の事をどう説明するか頭を悩ませることになった。