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ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
132/148

#130 反撃の手立て


 大久保先輩渾身のスリーポイントシュートの興奮冷めやらぬ中,第2クォーター終了の笛が響く。

 これで前半が終わり,得点は46対43でまだ霧ヶ原が追いかける展開。

 だが,第1クォーター終了時に10点あった点差をここまで追い上げたのだから,十分すぎる結果だろう。


「くそ…」


 と,思っていたらフロアを移動しながら白山先輩が悔しそうに舌打ちをしていた。

 ここまで追い上げれば十分だと俺は思うが,先輩はどうやらそうは思っていないらしい。

 ひょっとしたら,前半は思ったような動きが出来なかった自分に対する怒りなのかもしれない。

 でも,このままどうしても先輩が太刀打ちできないのであれば,後半は交代も視野に入れておかないといけないのは事実だ。

 相手は全国レベル。少しでも隙を見せれば,また試合開始直後のように試合を一気に決められてしまう可能性もあるのだから。



「後半は,まず追いつく所から始めましょう。このまま取って取られてのゲームじゃ勝てない。相手の攻撃を確実に止めて,こっちが得点を取って行けるように」

「はい!」

「後半,彩芽さんと美空さんは1度ベンチに下がって。そこに結と雷知,行けるわね。前半は後輩の2人があれだけ頑張ってくれたんだから,恥ずかしい姿は見せられないわよ」

「あぁ,任せろ」

「大丈夫よ,心配しないで」

「理久,さっきのスリーはすごく良かった。後半もこの調子でお願いね」

「うん,頑張る」


 控室に移動した後は,休憩と同時に後半へ向けての作戦会議が天王寺先輩を中心に行われていた。

 前半フル出場していた火野先輩と神崎先輩は,さすがに疲労の色が濃いためここで3年生ペアと交代。

 ラストのシュートで勢いに乗った大久保先輩は,後半巻き返せるかどうかの重要なファクターになるだろう。

 天王寺先輩はもちろんまだ出るとして,残りは1人。


「…千夏は,どうする?」

「………」


 話を振られた白山先輩は,黙ったまま天王寺先輩に目を向ける。


「……分かったわ」


 それだけで何か伝わったのか, 数秒の沈黙の後,天王寺先輩は困ったように笑い,小さく頷いた。


「でも,これで前半と同じ結果だったら,私にも考えがあるからね」

「……分かっている」

「期待してるわ。

 じゃあ次は…」


 それだけでこの話は終わり,すぐに次の話題に移る。


「…白山先輩,あれだけで良いんですか?」

「ん? あぁ,あの2人はあれで良いのよ」


 隣にいる西田先輩に小さく声をかけると,先輩は苦笑しながら答えてくれた。


「前半戦は上手く相手にやられていたけど,後半も同じだとは限らないでしょ。木嶋だって,そんな心配そうな顔しないの」

「そうですけど…」

「まぁ,後半見てなさいよ。きっと,その心配を吹き飛ばしてくれるようなプレイをしてくれるはずだから」


 そう言う西田先輩はどこか楽しそうに見えた。

 白山先輩はかなりギリギリの所で戦っているはずなのに,まるで現状を打破する術をもう知っているかのように。

 それを知らない周りを面白がっているように。


「…なるほど。なら安心しています」


 そして恐らく,その術は本当にあるのだろう。

 だから,こうやってドンと構えていられるのだ。

 なら,俺の仕事はチームに変な心配をする事じゃない。

 彼女たちを信じて,ベストな状態でコートに送り出してあげることだ。


 俺はみんなに少しでも回復してもらおうと,持って来ておいた密封パックを鞄から取り出し,全員に配り歩く。

 その中身は,前回とても好評だったはちみつレモンだ。


「後半も頑張ってくださいね」


 明るく返事をするみんなの笑顔を見た俺は,それと同じ時間,別の控室で繰り広げられていた会話の事など考えもしていなかった。


 こちらと同じように,後半へ向けての作戦会議をしていた事を――


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