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ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
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#118 これからのために

「水瀬先生,ちょっと良いですか?」


 地区大会優勝から一夜明けた月曜の朝練,練習を見に来た水瀬先生に声をかける。

 目的はもちろんあの事だ。


「どうした?」

「いつでも良いので,学園長とお話がしたいんですけど,時間を取ってもらえないでしょうか」

「ふむ……」


 俺の言葉を受けて少し考え込む様子を見せる先生だったが,俺の真剣な気持ちが届いたのか,最終的には首を縦に振ってくれた。

 今日中には日程を決めると言い残し,先生は体育館を後にした。


 その後は気長に連絡を待つつもりだったが,先生からの返答は思いのほか早く,朝練が終わる間際になって再び先生が体育館へとやってきた。


「今日の昼休みであれば時間を取ってくれるそうだ。それで大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます」

「学園長も私も,木嶋には期待しているからな。これからも頼むぞ」

「はい。出来る限りの事はやってみます」


 笑顔で頷くと同時に朝練が終わる。

 さぁ,次は学園長との話し合いだ。



 昼休みが始まってすぐに職員室の扉を叩くと,水瀬先生が学園長室へ案内してくれる。

 1年生のこんな時期にこれだけ学園長室に行く生徒も珍しいのだろう,職員室にいる先生たちの視線が痛い。

 でも,女子部のマネージャーになった時からそんなのはもう慣れっこだ。

 俺は気にしない素振りで水瀬先生の後に続き,学園長室へと向かった。


「地区予選優勝おめでとう。それで,私に話とは何かな」


 部屋に入ると,すでに学園長は準備万端な様子で待ち構えていた。

 どうせ俺が切り出す話だから部活関係だという事は分かっているだろう。

 昼休みの時間も限られているので,俺は一気に本題から話に入る事にする。


「県大会までに,木下先生を女子バスケ部に復帰させてあげたいんですが,力を貸してくれませんか?」

「木下先生…ですか……」


 俺の言葉に学園長の目の色が変わったが,そんな事は気にせず続ける。


「もう県大会まで時間がありません。でも,コーチも監督もいない今のチームじゃ,どうしても限界があります。言っている事が無茶なのは覚悟の上でのお願いです。俺は,あの人たちの力になってあげたいんです。だから,お願いします」


 一息でそこまで言い切り頭を下げる。

 予選大会前実際に会い,話を聞いた限りでは木下先生の事が難しい問題だというのは知っているし,だから大会中は考えないでいた。

 でも,これから先の事を考えたらそんな事も言っていられない。

 今のチームが全力を出し切るためには,先生の復帰は最優先事項だ。


「…分かりました。こちらで出来る事なら協力は惜しみません。私も,木下先生には早く復帰して欲しいという気持ちは同じです」

「あ,ありがとうございます!」


 学園著の言葉にパッと顔を上げるが,そんな俺に向かって学園長は「でも…」と言葉を続ける。


「前にも言ったと思いますが,先生にとってこの女子バスケ部は,特に天王寺さんや白山さんは,とても大きな意味を持っています。そんな先生の心を動かすのは,大変ですよ」

「…分かっている,つもりです。それでも,俺に何か出来る事があるのなら,俺はそれを最後まで頑張りたいです」


 真剣な表情でそう言うと,学園長はふっと笑みをこぼす。


「やはり,君に頼んで正解でした。

…では,これを渡しておきます」


言いながら渡されたのは1枚のメモ用紙。

そこにはとある住所が書かれていた。


「今,木下先生はよくそちらに顔を出しているようです。放課後にでも行ってみれば,先生と会えるかもしれませんよ」


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