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ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
110/148

#108 第1クォーター終了

「ナイスシュート!」


 文香のスリーが決まり一気にこちらが逆転したことで,相手の表情が明らかに曇った。

 それは一瞬の油断からきた僅かな判断ミスかもしれないが,キャプテンのマークを抜かれたのは予想外だったのだろう。

 練習試合での経験を元にこちらを崩す作戦だったのだろうけれど,あの練習試合から成長しているのは相手だけじゃない。

 もちろんまだ見せていない武器だってあり,文香のフェイダウェイもその1つだ。


真上に跳んで放つ一般的なシュートと違い,フェイダウェイは後ろに仰け反りながら跳ぶのでブロックに捕まりにくい。

しかしその反面,バランスの悪い体勢で打たなければならないため,シュートを決めるには十分なボディバランスと筋力が必要不可欠となる。

もちろんそれは一朝一夕で身に付く物ではなく,中学時代から続く絶え間ない努力の結晶なのだ。


「ここまで温存してきた文香の秘密兵器。もっと驚いてくれなきゃ困りますよ…」


 本来であればこんな所で出す必要はなかったかもしれない。

 この試合をどこかで見ているかもしれない,県大会で戦う相手に余計な情報を与える必要は無いからだ。

 でも,それではあいつの気持ちがおさまらなかったのだろう。

 本当に意地っ張りで負けず嫌いな所は中学からずっと変わっていない。


 でも,これで完全にこちらに流れが傾き始めたのも事実。

 まずはそれを喜ぼう。


「さぁ,ディフェンス止めるわよ!」

『はい!』


 そこからは,すっかりいつものリズムが戻ってきた霧ヶ原とは対照的に,楓高校は攻撃も上手くかみ合うことなく攻撃失敗が続く。

 全員で攻めるこちらに対してのディフェンスに変化はなく,もちろん止められることもあるが,前半のようなロースコアゲームではなく,じわじわとこちらが点数を伸ばしていく展開になった。

 結果,第1クォーター終了時点でまずは28対7という大きなリードを霧ヶ原が取ることができた。


「お疲れ様です!」


 ベンチへと戻ってきた選手にベンチメンバーでタオルとドリンクを渡し,場所を開ける。

 見た目ではまだそれほど疲れてはいないようだが,このインターバルで少しでも体力を回復して貰わなければならない。


「おつかれ。あのスリー,さすがは元エースシューターだな」

「……当然」


 肩を叩きながら文香にドリンクを渡すと,先程のタイムアウトとはまるで違う自信に満ちた表情が返ってきた。

 相手の3年生キャプテン相手に互角以上の戦いが出来るあたり,さすがとしか言いようがない。

 他を見ても,すっかりと落ち着きを取り戻したメンバーは余裕の表情を浮かべている。


「この調子で,この後も攻めていくわよ」

『はい!』


 天王寺先輩の号令に全員で威勢よく答える。

 この調子なら問題なさそうだ。


「………」


 なさそう…なのだが,俺の中にはどこか小さな棘が刺さっているような,何か大切な事を見落としているような不安感が残っている。

 ちらりと相手ベンチを確認してみても,特に怪しい動きがある訳ではなく,監督とキャプテンが細かく指示を出しているだけだ。


「大丈夫…だよな……」


 どうしても不安がぬぐいきれないまま,第2クォーター開始のブザーが鳴った。


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