表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
1/148

#1 始まりは突然に(1)

 ムッとする空気を切り裂いて、キュキュッと心地よい音が耳に響く。

 広いコートを縦横に走るボールと、それを追いかけるプレイヤーたち。

 時に激しく、時に静かにネットが揺れ、その度に歓声が沸く。

 中学総体県大会、決勝。

 勝てない相手ではない。実際に以前の大会では勝ったこともある。

 しかし、パスも、シュートも、うまく決まらない。

 体が重い。全身が針金で固定されたように動かない。

 

「こっちだ!」

 

 いつもなら反射的に動けるチームメイトからの声に、反応ができない。

 点差が、開く。

 俺たちの焦りなど知らず、時計の針は無情に時を刻んでいく。



 そして―――



 その日、俺たちの中学最後の総体が終わった。






~ダンマネ!~





木嶋遥斗きじまはるとです。霧崎中きりさきちゅう出身、ポジションはガードです」


 春の陽気が学校中を取り囲む四月。

 俺は第一志望だった霧ヶ原高校きりがはらこうこうに合格し、順調に高校生活をスタートした。


新巻大地あらまきだいちです。園部中そのべちゅう出身、ポジションはセンターです」


 古ぼけた体育館に響く声は、新入生の挨拶。

 今日からようやく仮入部期間が始まり、一年生は思い思いの部活へと足を向けていた。

 霧ヶ原高校はあまり部活に力を入れている学校ではないので、興味のある部活が無い生徒は無理に部活に入る必要はない。そのためか、部活が始まると全体の半数近い生徒は帰路につくことになる。


「う~ん、まぁ一日目だから仕方ないとはいえ、一年生は君たちだけか…」


 入部希望者の自己紹介を終えたところで、キャプテンが頭をかく。

 今日からバスケ部に希望を出したのは、俺たち二人だけ。

 それどころか、現在バスケ部の正式な部員は、三年生が三人だけ。二年生は、去年のウィンターカップを最後に全員辞めてしまったらしい。


「ま、まぁ……気を取り直して練習始めようか。二人の実力も見ときたいし」

『はいッ!』


 ここから、俺の高校生活が始まる―――








 はずだった。







 ガラリと大きな音を立てて、突然開かれた体育館の入口。

 その向こうに立っていたのは顧問の水瀬みなせ先生と、学園長の姿。

 何事かと驚く俺たちの前で、学園長はゆっくりと口を開いた。


「本日の職員会議で、この部活の廃部が決定した」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ