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学園セイバーロード  作者: 桜崎あかり
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第5話『ロードファイト・ログ』レポート2

※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、フィクション扱いでお願いします。あくまで虚構という方向で…。


※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。


※イメージレスポンス、挿絵等も随時募集しております。プロフィールにも書いてありますが、特に早いもの勝ちではありません。お気軽にお問い合わせください。


※第5話もpixivと同日投稿になっております。


※今回も関してはタイムリーネタが存在しますので、肌が合わない方はご注意ください。


※2013年11月19日午後11時43分付:誤字修正、炎上ビジネスの着せに関しては釣りで合った事が~→炎上ビジネスの規制に関しては釣りであった事が~

 国会では超有名アイドル商法を支持する勢力と、反対する勢力で分かれているという話があるらしい。当初は経済発展の為には多くの分野が動き出すべきと考えていた。


しかし、いつしか超有名アイドルが1年で1000兆円という規模の利益を上げると、あまりにも莫大な利益を上げる事に対して疑問を抱く人物が現れ始めた。


これをチートと呼ばずして、何をチートと言うべきか―。この議論は日本中を揺るがすほどの大事件に発展した。


(週刊誌に掲載された、超有名アイドル商法の存在を疑問視する記事より)


#####


 超有名アイドルが新しい展開としてドラフト制度やペナントレース制度を導入するという話題が出た時、猛反発の声が多かったという。


どちらにしても、炎上させる事で話題になろうと考えていたような気配がするのはだれの目から見ても明らかだった。


次第に炎上を意図的に発生させて話題になろうと便乗する企業等が暗躍した結果、『炎上禁止法』のような法律も必要とネット上で叫ばれるようになったのである。


しかし、この法律を実際に成立させようとすれば壁がいくつもあるのは間違いないだろう。


どの世界でも炎上商法を利用して便乗商売をしようと考える企業は存在する。アカシックレコードでは、それらの企業を『アフィリエイト系まとめサイト』と言う呼称を使っていた。


これらの企業のやる事は民衆を扇動して「超有名アイドル以外のコンテンツは駆逐すべき」という思考を植え付ける為にあると言う。


彼らの行動理念を簡単に説明すれば「超有名アイドルファン以外は悪そのもの」と言える。これらの企業を見分ける為には、CMやテレビ番組を見れば分かりやすい。


超有名アイドルの起用率が90%を超えていれば、超有名アイドルに買収されたと考えられる。


こうした企業を単純に悪と認定するのは難しい。それだけ、超有名アイドルの保有している資産が想像を絶するのかもしれない。


(とあるアカシックレコードの記述より。日付は西暦2013年11月11日と書かれている)


#####


 セイバーロードの端末は一般人には使い道がないと思われがちだが、実は役に立つ要素がある。


それは、エリア内の観光名所や店舗等を検索する事も可能なのだ。この機能、実は無料で利用する事が出来る。


アンテナショップ内に置かれている物はセイバーガジェットの呼び出し機能はなく、基本的にコンテナの近くやカタパルトが展開できる場所におかれている端末に関してのみ適応される機能らしい。


雨の時には端末が濡れてしまう懸念もある為、基本的には銀行のATMと同様に小型店舗(コンビニ等)がセットになるケースが多いらしい。


(セイバーロードガイドブックより。なお、このガイドブックは希望者に対して無料で配布されている)


#####


 1、服装に関して


学園都市群での服装に関しては、特に規制は設けていません。これは、セイバーアーマーや新型スーツ等の試験運用がスムーズに行えるようにするための特別処置で、日本政府にも許可済です。


周辺の一般市民に迷惑をかけない物であれば、アニメやゲーム作品のコスプレでも問題はありません。実際、セイバーアーマーの中にはゲーム作品に登場するアーマーをモチーフとしたコラボ機体も存在します。


ただし、全裸等のような警察を呼ばれるような格好はご遠慮ください。具体例に関しては、添付されている別紙に目を通される事をお勧めいたします。


 2、持ち込み可能の荷物について


特定禁止物以外に関しては、その他の法律で禁止されている物に関しては持ち込みが認められていません。ロードファイト用のガジェット類に関しては、別項目をご参照ください。

(その他の禁止されている荷物の詳細関しては、別紙をご覧ください)


超有名アイドルのCDの現物、CDの限定版に付属されている握手券等の特典、ライブ会場やイベント限定の物販物は持ち込みが発覚した際には没収となります。


学園都市群では悪質なネット転売屋等を駆逐する為、さまざまな超有名アイドル規制を他の都道府県以上に進めております。皆さまのご理解とご協力をお願いします。


 3、セイバーアーマーに関して


ロードファイト用のアーマー及びガジェットの持ち込み自体は問題ありません。しかし、以下のような物に関しては持ち込みを禁止といたしております。


【ロードデュエルで使用可能にしたロードファイト用ガジェット】


【内部パラメーターを違法に改造したガジェット(ロードファイト用、ロードデュエル用問わず)】


【殺傷能力を保有しているガジェット(ロードファイト用、ロードデュエル用問わず)】


【超有名アイドルのグループ名やアイドルの名前等が刻印、あるいはマーキングされたガジェット及びアーマー(ロードファイト用、ロードデュエル用問わず)】


【ネット炎上を仕向けるような精神攻撃やハッキング能力を有しているガジェット(ロードファイト用、ロードデュエル用問わず)】


【その他の危険性が生じる物】


これらの持ち込みが発覚した場合、罰金などを含めた厳罰処分が発生いたします。最悪、アカウント没収となりますのでプレイヤーの皆様は、これらの行動を自重していただくようお願いいたします。


(セイバーロードガイドブックより)


#####


 複数の学校や商業施設等を含めて管理体制の簡略化を図るというのがセイバーロードの目的とされている。その一方で、それだけの目的で莫大な予算が必要と言う話も疑問が浮かぶ。


確認されるだけで商業施設以外にも、ゴミ処理施設の改良、ソーラー発電施設の増強、風力発電施設の新規建設、再就職支援センターの完備、洪水等の自然災害に対応する為の設備増強と言った事が行われていた。


しかし、これらの施設は全てカモフラージュであり、本当の目的はロードデュエルとセイバーロードであるという話もネット上で浮上しているのは事実だ。


ロードデュエルで使用するガジェットのエネルギー源も疑問に残る個所がある。あれだけ莫大なエネルギーを、どのように供給しているのか―。


その為の太陽光や風力発電、水力発電と言う気配を感じさせるのだが、電力を他の都道府県へ販売する目的だったとしても細かい部分を含め、発電施設が多すぎるように思える。


やはり、ロードデュエルが未知のエネルギーを運用しているという話は嘘なのだろうか。


(ロードデュエル系の議論スレより)


#####


 炎上ビジネスに対し、日本政府は規制を含めて検討に入っているという噂を耳にする。


その原因は、間違いなくBL勢に絶大な人気となった某作品の影響だろう。既に、2014年には警察沙汰になった事を理由に作品を打ち切ったらしい。


しかし、炎上ビジネスの規制に関しては釣りであった事が判明する。このような餌を用意した背景には、超有名アイドルによる企業買収が加速していた事が原因の一つと言われている。


(あるアカシックレコードの記述より)


#####


 バハムートからのメールは疑うのが正解と言うのがテンプレになりつつある。しかし、それ位に出会い系サイトの誘導や数字選択型くじの予想勧誘という内容が多い事も事実だ。


現在、スパム系メールに関しては減りつつあるが、今度は某作品の―。


(バハムートからのメールをチェックする前に行う事スレのテンプレ冒頭文より一部抜粋)


#####


 西暦2016年4月8日午前12時30分、別の図書館で調べ物をしていた秋雲ほむらは、アカシックレコードとは別の記述を発見して驚く。


その内容とは、学園都市群セイバーロードの予算を超有名アイドルの芸能事務所が投資しようとしていた事実だった。


しかし、運営は超有名アイドルの目的を独自で調べ、その内容に危険性を抱いて資金提供を断っている。


その後も複数の芸能事務所が接触したが、どのような結果になったのかは分からない。超有名アイドルでは大手の事務所が2社も蹴られた事で、芸能関係とは組まないという印象を抱いたのだろうか。その真相は不明と書かれていた。


それからしばらくして、他の大手会社が次々と資金提供に対して挙手をしたが、運営が書類を審査した結果で不採用となっている。


2007年1月、ソーシャルゲームの大手が書類審査で合格となり、この1社と複数の会社が共同出資と言う形で学園都市のプロジェクトへ参加する事となった。


この一件に関しては新聞でも大きく取り上げられた一方で、セイバーロードの目的が未だに見えてこない事に対して不安を抱く住民も少なくない。


住民説明会では『軍事目的の都市ではない』や『住民に不安を与えないように努力する』(意訳)の2点を強調していた。


 ほむらが辞書を調べている途中で、セイバープレートに着信が入った。着信音はマナーモードへ自動的に切り替わっている為に鳴らないようになっている。

《この世界の真実は図書館には存在しない。動画サイトのウェブサーバー施設にアカシックレコードへアクセスしたサーバーが存在する》

メッセージの内容を見たほむらは読んでいた本を元の場所へ戻し、ウェブサーバー施設のある場所へと向かう準備をし始める。

「周囲の人たちを巻き込む訳にはいかないか」

走って図書館を出る訳にはいかないので、周囲に音が気付かれないような感じで歩く。実際、早歩きだったとしても周囲の人物がほむらの方へ視線を向けるかと言われると、疑問が残るような状況だったのかもしれないが。


 図書館を出たほむらは、図書館の近くにあるコンビニへと足を運ぶ。中には店員以外は客が数人と閑散としている。そんな中で、ATMコーナーの隣にあるセイバーロード用の端末の前でほむらの足が止まった。

「動画サイトのサーバーセンターは、確か―」

ほむらが検索していたのは、大手動画サイトのサーバーセンターである。分かりやすい目印はソーラー発電施設の隣に建つビルという事なのだが、ソーラー発電施設自体は学園都市の中に無数存在する為に、位置検索をして確認する必要があった。

「学園都市はソーラー発電を推進する為の施設としてスタートしたという話も経済雑誌で書かれていたが、本当の狙いは何だ?」

セイバーロード計画に関しては色々な説が多く乱立しており、その全てが真実には程遠い。最も近いという意見が出ている説もなく、これが学園都市の存在を疑問視する意見が浮上する原因となっている。

「こんな時にメールだと」

ほむらが再びセイバープレートをチェックすると、メールが新規で1件入っていたのである。時間的には、コンビニへ足を運んでいる途中だろうか?

《非常事態が起こった。サーバー施設へ行く前に、この場所へ向かって欲しい。位置は端末で検索が出来るはずだ》

こちらも差出人が不明のメールである。しかし、差出人不明でもセイバープレートの識別IDまでは隠し通す事が出来ない。最初の差出人不明メールはスマートフォンか携帯電話経由だが、セイバープレートからセイバープレートへのメールの場合はIDが公開される仕組みとなっている。

「このIDは―バハムート?」

バハムートとはネームドランカーの一人で、その実力はセイバーロード内のニュースでも何度か特集を組まれる程である。しかし、その為か同じ名前を登録した偽物が多いという事でも有名だ。

「しかし、バハムートの偽者は多いと聞く。ネーム被りは認められているが、ここまで被りが多いと規制が出てきてもおかしくはない」

実は、ネームドランカーと同じ名前をかたって投資を呼びかる詐欺未遂事件も起きていた。その為、有名ランカーと同じネームの重複登録を不可とする新ルールが議論されている。バハムートは、その対象に含まれていた。

「まずは、この場所へと向かってみるか」

端末で検索した結果、問題のエリアは風力発電施設が近くにある松原団地付近と言う事が判明した。しかし、この場所はサーバーセンターからは逆方向の位置である。ほむらは、一応向かってみる事にした。

「その前に、腹ごしらえをしないと」

ほむらは端末の隣にあるペットボトル飲料のコーナーを少し眺めて、黒い炭酸飲料を手に取る。少し前にはこの手の商品でダイエットに効果があるという物も売り出されていたが、その熱も冷めて定番の飲料ばかりが並んでいるようだ。

「簡単に食べられる物がいいわね」

次に足を止めたのは、レジ近くにある弁当コーナーだった。のり弁当やシャケ弁当、幕の内等の定番以外にも、チャーハンとサラダを足したような中華弁当、たこ焼き定食、そばめし弁当等のような珍しい物も並べられている。

「気分的にはピザとオムライスもセットにして、この3つかな―」

手に取ったのは、サラダサイズのミートソースパスタ、数種類のバジルソース入りミニピザ、オムライスのおにぎり2つ。他にも何かとろうと考えたが、レジの方で気になる物があったので、先にレジへと向かう。

「いらっしゃいませ」

「あと、このチキンナゲット『醤油ラーメン味』をもらおうかしら」

レジにいたのは男性バイトだった。そして、ほむらは商品をカウンターに置き、調理済のメニューコーナーに置かれているチキンナゲットを指さす。その後、ほむらがバッグから取り出したのはセイバープレートである。

「支払いは、こちらの方でお願いします」

「ポイントでの支払ですね。分かりました」

バイトの男性も疑問を持つことなく、バーコードを読み取る機械に似ている小型のスキャナーでほむらのセイバープレートのID部分を読み取る。

《ID認証が完了しました。1200ポイントで支払処理を行います》

この流れに、スポーツ新聞を手にしてレジ待ちをしていた男性も言葉にはしないが驚いていたようだ。


 ほむらがコンビニを後にして近くのアンテナショップで食事をしている頃、バハムートからと思われるメールを受け取った別の人物が動き始めていた。その人物達は、指定された場所の近くにあるアンテナショップで複数人単位で場所を陣取っている。

『ランカーのバハムートと言えば、上位ランカーの中でも一番のネームドプレイヤーだ。彼から1勝出来れば、大幅なポイントが得られるのは間違いない』

彼らはランカー狙いのプレイヤーだった。このメールは不特定多数に送られている一方で、その内容を疑うような様子は一切ない。

「やめておくんだな。バハムートは偽名であり、偽者が存在する事もニュースで示唆されていただろう」

陣取っているプレイヤーたちの目の前に現れたのは、赤い目をした狼の覆面を被った背広の男性だった。

『貴様、何の用だ』

「君たちがランカーに興味を抱くように、私も優秀なプレイヤーを求めているのです」

『優秀なプレイヤーだと? どういう事だ』

「我々の計画に賛同していただければ、用意できる範囲の報酬を差し上げましょう。勿論、成功報酬は別扱いで」

狼の覆面をした人物の話を聞き、少し時間が欲しいとばかりにプレイヤーたちは作戦会議を始める。

『その話、本当だろうな』

プレイヤーたちのリーダーと思われる鎧武者の男性が現れ、狼の覆面をした人物に向かって刀を突き付ける。しかし、刀と言ってもARと呼ばれる拡張現実によって作られたCGの刃だ。

「この私に対して、力で押し通す気ですか?」

狼の目が怪しく光り出したと思ったのと同時に、鎧武者の持っていた刀から刃が消えたのである。これには周囲のプレイヤーも驚いていた。

『バカな? 貴様、どんなトリックを使った!』

鎧武者は周囲を見回し始め、更には刀の鞘に付いているスイッチと思われるボタンを何度も押し続ける。しかし、刃が再び現れる事はなかった。

「セイバーガジェットはロードファイト用のロードガジェットと同様、AR技術を利用しています」

『それとセイバーガジェットに何の関係がある?』

「私が使用しているトリックは、AR技術の応用みたいなものです。ロードガジェットで使用可能な戦法は、セイバーガジェットでも可能なのですよ」

覆面の人物が指をパチンと鳴らすと、鎧武者の刀は元に戻った。一体何が起こったのか、周辺の人物も全く把握できていなかった。

『お前の目的は何だ』

「目的はありませんよ。ただ、ロードデュエルを炎上させてほしいだけの事。超有名アイドルにとって、ありとあらゆる商法を規制しようとする学園都市の方針は邪魔なのです」

それから10分の交渉の末、彼らは覆面の人物に協力をする事になった。他にも、覆面の人物は複数のプレイヤーに声をかけては、同じような条件を提示して手ごまを増やしていたのである。


 同日午後1時、食事を終えたほむらはメールで提示された場所へ到着した。既にほむらはアーマーを装着しており、臨戦態勢という状態である。

『時間に遅れたという訳でもないのに、この静けさは何―』

周囲を見回すと、風力発電用の風車が動き、環境適応型の全自動で動くAIカーが近くの道路で走り、周囲の市民が野次馬化することなく目的地へと向かっていく。

《インフォメーション 未確認ユニットが接近中》

『このタイミングまで分からなかった? どういう事なの。新手のステルス機能でも持った―』

ほむらが周囲の光景に違和感を抱いていたのだが、数秒後にバイザーへ表示されたメッセージは敵接近を意味する警告だった。しかし、周囲にダークビジョンの反応はない為、ほむらは戸惑っていたのである。

『仕方がない、ここは別の武器を用意するしか方法は―』

近くにあったコンテナに番号を入力し、コンテナが開くと同時に姿を見せたのは、ミサイルランチャーを思わせるようなデザインをした長方形の大型シールドだった。その長さは、折りたたみ状態でも2メートル近くある。

【オーバーリミットウェポン《ソロモン》】

ミサイルランチャーに書かれていた文字、それはオーバーリミットウェポンだったのである。基本的にはオーバーリミットウェポンは上位ランカー以外には使用できない仕組みで、その理由として初心者狩りプレイヤーが出現する事で新規プレイヤーが参戦しなくなるという状態を防ぐ為となっている。

《オーバーリミットウェポンを接続します》

次の瞬間、折りたたまれた大型シールドが長方形のミサイルランチャーとシールドに分離、ミサイルランチャーはほむらが装備している背中のブースターユニットに接続、シールドはほむらの左腕に装着された。

『この一撃で沈める!』

ほむらがシールド裏に隠されていたスイッチを押すと、背中に装着されたミサイルランチャーが変形、片方で3発、合計6発のミサイルが発射されたのだ。

『その程度の攻撃、かわすまでもない!』

ミサイルの直撃コースと思われる場所で足を止め、彼は持っていた槍を振り回し、自分にめがけて飛んできたミサイルを全て切りはらったのだ。


 その人物は赤い鎧武者を連想させるアーマー、鎧武者とは矛盾するかのようなSF調の赤いバイザーメット、自分の身長に近い長さの赤いマフラーという外見の人物だった。アーマーの方も極限に軽装化されており、プレイヤーの安全よりも機動力を優先しているようにも見える。

『お館様の為にも、ここで負けるわけにはいかないのだ!』

彼の台詞を聞き、ほむらはまさか…と考えていた。ランカー以外でランカーに近い実力を持っている人物、彼の名は真田幸村。その他のランカー勢が一番警戒している人物で、第1小隊でも要注意人物としてリストアップされていた。

『まさか、あの真田幸村か!?』

そして、幸村はほむらに急接近する。そのスピードは高速ではないものの、あっさりと間合いを詰める程のスピードだった。ほむらの方も奇襲に近い状態で間合いを詰められた為、思わずシールドを手放してミサイルランチャーもパージする。

『われらの目的を達成する為にも、邪魔をする勢力は誰であろうと叩く!』

間合いを詰めた幸村が槍を突きつけるが、間一髪の所でほむらは両腰のブレードで弾き飛ばす。

『ロードデュエルの真の敵が見えていないの?』

ほむらの問いにも幸村が答えるような気配はなく、幸村は弾き飛ばされて道路に置かれている槍を拾って再び構えなおす。

『やはり、ARとやらは慣れない物だ。槍が道路に突き刺さる事もなく、棒だけが道路に転がる―』

幸村の一言にも一理あると思いつつ、ほむらはブレードを再び両腰のマウント部分に戻し、今度は別のコンテナからレールガンを回収、それを幸村に向かって連射する。しかし、レールガンの弾も幸村にとっては遅く見えるらしく、あっさりと回避された。

『ロードデュエルを潰そうと考えている勢力、超有名アイドルを駆逐しなければセイバーロードに平和は訪れない!』

『超有名アイドルよりも、我々が目を向けるべき敵は別にいる!』

『それはあり得ない! BL勢力も、その他のセイバーロードを妨害しようとする勢力も駆逐された。残るは超有名アイドルのみ!』

『超有名アイドルだけが悪いのか、全てのアイドルを含めてせん滅するのか! お前は何をしようとしているのだ!』

幸村の一言を聞き、ほむらはレールガンを手放す。そして、彼女はセイバープレートを操作してヘッドバイザーを展開した。バイザーが展開されると、そこからは汗まみれとも言えるほむらの顔が現れる。

「超有名アイドルはコンテンツ業界に新しい風を吹き込んだ。その一方で、彼女達は超有名アイドル商法や炎上ビジネスと言った悲劇の連鎖を生み出すシステムまで置き土産として置いて行った!」

『それが誤解と言う物だ。確かに超有名アイドルは新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけを作った。しかし、それをうまく扱えなかっただけだ』

「あれだけの物は扱えるわけがない! それを扱おうとして、ユーザーから非難を浴びて消滅した作品は多数存在している。だからこそ、争いの種は全て根絶しなければならない」

『その為には、運動会のようなゲームも取り上げようと言うのか! それこそ学園都市群は不要ではないのか』

「学園都市は違う! 学園都市は来るべき異星人を打倒する為の―」

『そう言う設定のアトラクションパークではないのか? お前達は学園都市に踊らされている。違うか!』

お互いに白熱した論戦を展開し、気が付くと幸村の方は姿を消していた。一体、どういう事なのだろうか。


 幸村が姿を消して5分が経過した午後1時20分、ほむらは改めて周囲を見回した。すると、その答えがあっさりと出ていたのである。

「これは、超有名アイドルのファン―」

思わずほむらも震えが出ていた。幸村と交戦していた場所から1キロ近く離れた場所で、大量の超有名アイドルファンが使用したと思われる人物のアーマーが次々と破壊されていたのだ。

「これが真田幸村の実力か」

肝心の人物は既に警察か運営辺りに回収されたと思われるが、大破したアーマーだけが放置されている。これも後ほど回収される可能性が否定できない。

「少し、もらっていくか」

ほむらは手持ちのロングソードで放置されていた肩アーマーを切断、その断片を持ち帰る事にした。


 午後1時30分都内大手ビルの社長室、何かのテレビ映像を見ていたのは銀色の狼の覆面をしたフェンリルだった。表情を読み取る事は難しいが、映像の出来事に関して怒りを覚えているようにも見える。

【申し訳ありません。まさか、あの真田幸村が動いていたとは予想外でした】

フェンリルは手持ちのスマートフォンで、ある人物が送っているつぶやきを確認していた。

【他にも想定外の勢力が動いているようです。再び妨害工作がくることも、かんがえられます。このままでは】

次のつぶやきは途中で送信されたらしく、一部がひらがなのままになっている。後半にどのような文章を入れるつもりだったのか?

『どちらにしても、作戦の決行は変わらない。我々の財力を甘く見ない事だ』

フェンリルの目が怪しく光る。彼の正体は何者なのか、それを知る者は少ない。


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