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学園セイバーロード  作者: 桜崎あかり
2/16

第2話『学園都市群セイバーロード』レポート2

※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、フィクション扱いでお願いします。あくまで虚構という方向で…。


※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。


※イメージレスポンス、挿絵等も随時募集しております。プロフィールにも書いてありますが、特に早いもの勝ちではありません。お気軽にお問い合わせください。


※第2話もpixivと同日投稿になっております。3話以降は「小説家になろう」を先行にするかを含めて検討中と言う方向でお願いします。


※「小説家になろう」バージョンでは、ピクシブ版2話と冒頭を少し変更しています。


※午後7時41分付:両腕が2つ書かれていたので、片方を両脚に修正。誤字修正:ポテトチップスを撮ろう→ポテトチップスを取ろう(ある意味では間違っていない気配もしますが、あえて修正)

 西暦2016年4月1日、草加市の一部エリア〈学園都市群セイバーロード〉の各地で行われたロードデュエルは学園都市の風物詩としても有名だった。


彼らがロードデュエルに本気を見せる理由、それは学園の科目としてロードデュエルが存在する事に加え、卒業の為の単位としても認められている事が理由の一つと言われている。


その一方で、突如としてスポットライトを浴びることとなったロードデュエルには、さまざまな妨害があった。


ネット上で書かれているだけでも、不正データを使用した事による単位不正取得、外部持ち出し不可と言われているセイバーガジェットの転売、その他にも超有名アイドルやBL勢力等による妨害工作…。


それらを列挙していくと、それだけでも自由研究用のレポートがいくつも提出可能な数になる。


警察としてもニュースで稀に話題となるセイバーガジェットの密輸組織を摘発したいのだが、運営の力が強すぎる関係で手が出せない。


その昔、政府与党がセイバーロードを掌握しようと超有名アイドルの芸能事務所と組んで何かの計画を実行しようとしたが失敗という情報が出てきたのだが、数ヵ月後には記事が差し替えられていた。その為、真相は不明である。


セイバーロードの真相を掴もうという事は、何か強大な圧力とも向かい合わなければならない。その証拠が色々な妨害工作等に当てはまる。


果たして、この世界に真実は存在するのか?


全ては嘘と偽り、超有名アイドルのチートで埋め尽くされている可能性は否定できないだろう。


(ある人物のSNSサイト記事より一部抜粋だが、某所の物と比べて若干手が加えられている)


#####


 民放テレビ局もアニメ専門チャンネルに変更した1つを除いては、超有名アイドルの番組に支配された状況が続いている。それだけ、超有名アイドルの財力は無限に近いと言える。


その内、1局に関しては超有名アイドルに対しての不適切な演出や行為で自滅をしたという気配を思わせる。このテレビ局は、後にアニメとスポーツ専門チャンネルへと鞍替えをする事になった。

(口パクと言われているのだが、芸能事務所側は否定。しかし、テレビ局側は芸能事務所側の指示があったという事で、お互いに意見の食い違いがある)


事実を報道するテレビ局は、どこもなくなってしまったように見える。まるで『全てはゲーム内の出来事であり、実際の事件ではない』と思わせる位に偽装された情報が住民をコントロールしている。


唯一、それが適用されていないのが埼玉県内にある学園都市群セイバーロードだという。


それ以外にも、ソーシャルゲームで町おこしを考えたり、アニメ作品の聖地巡礼を定着させようと考えている地域も含めて…。


(あるニュース報道を受けて書かれたと思われる虚構記事の一部抜粋)


#####


 ロードデュエルには、国際スポーツ大会の正式種目へ採用させようという動きがあるらしい。当然のことながら、運営は否定をしている。


ロードデュエルが観光的な部分でも収益を上げている事が、こうした噂が出る原因になっているのだろう。


一方で、これらの動きは超有名アイドル以外のコンテンツを炎上させ、超有名アイドルを神化させる為の動きともネット上では言われていた。


2年前に超有名アイドルに対して《不適切な演出》があったとして、該当するテレビ局が規模を大幅縮小し、アニメ+スポーツ特化チャンネルへ鞍替えした事件は記憶に新しい。


これらの事件は、日本が超有名アイドルに支配されている国家である事を海外へアピールする為の物なのだろうか?


更に言えば、芸能事務所側は無尽蔵とも言える大金を使って、地球を買収しようという計画を立ち上げているらしいという話もあるのだが―何処かの勢力が超有名アイドル側の炎上を狙った物とも言われ、真相は定かではない。


(ある虚構記事を受けて書かれたSNSサイトの記事より)


#####


 西暦2016年4月2日、学校の方は土日の授業は一切ない。しかし、ロードデュエルに関しては単位を取る為の物とは別に、土日限定のロードデュエルも存在する。

「あれって、ロードファイトじゃないのか?」

ギャラリーの一人が、セイバーガジェットの一部装備を見てロードファイトと言うのだが…。

「よく見ろ。あのアーマーはロードデュエルの物だ」

「ロードデュエルは学校の授業と同じ物、平日限定と聞いている」

「祝日もやっていると、ロードデュエルとロードファイトの区別がつかなくなるな」

ギャラリーもセイバーロードで展開されているロードデュエル、それ以外のエリアで展開されているARゲームであるロードファイト、お互いの区別がつかなくなっている気配があった。

「元々、ロードファイトを発展した物がロードデュエルと言われている。制作にかかわっているメーカーが同じかもしれない」

ギャラリーの話に割り込んできたのは、身長170位の黒髪ショートカットという男性だった。


 彼の服装を見る限りでは、特にロードデュエルとは無縁な冒険者とも言うべきコスチューム姿には周囲も驚きを隠せない。

「ロードファイトを開発した会社がセイバーロードに出資したという話は、ニュースにもなっている。しかし、向こうもロードファイトは知っているはずだ」

メガネをかけている男性が冒険者の人物に対し、冷静に反論をする。下手に彼を怒らせるのは不利益と判断しての事だ。

「確かに、ロードファイトはロードデュエルがロケテストされる半年前にはゲーセン等で稼働していた。運営側もある程度の情報を仕入れているのは間違いないだろう。それに加えて―」

その一方で、冒険者は何か含みを加えたような話をしようとしていたが、途中で爆音に遮られて周囲に聞こえるような事はなかった。

「何だ、今の爆音は?」

「機体が爆発したような物ではないようだが、どういう事だ?」

「向こうの方で光が見えた。おそらくは誰かが撃破された可能性がある」

ギャラリーの方も、爆発がした方へと向かう。その方角は草加駅の近辺に該当する。爆発と言ってもCG的な爆発であり、駅の近くで爆破テロが起きたという訳ではない。その証拠として、近くにある交番も爆発を聞いたはずなのに動き出す気配がない。


 一方で冒険者の方は、その方角へ向かうような仕草は見せず、別方向へと姿を消した。

「平日ではないと、あの連中は一切動かないだろう。こういう時に限って、彼らはガイドラインを守るというのか? あるいは、何かの偽装と見破られないようにする為の作戦か」

彼は右腕に装着したセイバープレートを確認し、反応が現れないと判断して別方向へと向かったのである。

「彼らの動きがない以上は、こちらも身動きが取れない。今回は出直すか」

冒険者はが向かっているのは、足立区の方向だった。そこからはセイバープレートは使用出来るがガジェットを呼び出す事は出来ないエリア―あくまでもガジェットを運用できるのはセイバーロードの範囲内限定である。

《ガジェット運用範囲外に出ました。セイバーガジェット、各種武装のセーフティーを起動します》

冒険者はセイバーガジェットを未所持だった為、特にセーフティーが起動するような様子はない。ガジェットを持っていた場合、セーフティー起動と同時に停止、ガジェットもただの玩具と化する。


 同日午前11時、爆発の起きた方角では既に5体ほどのセイバーアーマーが倒れており、更にはネームドのセイバーアーマーも苦戦しているように見える。

『アレが噂のリヴァイアサンとでもいうのか?』

ネームドランカーである〈ワイバーン〉は、目の前にいるネームドランカー〈リヴァイアサン〉に苦戦を強いられていたのだ。ドラゴンのデザインに酷似したアーマーも、損傷が激しい為にドラゴンとは識別出来ない。

〈リヴァイアサンはネームドランカーでも危険な存在だ。一時撤退を推奨する。これは一種の警告だ〉

両腕、両肩、両脚、胴体、大型のドラゴンブレードに合計8つのドラゴンヘッドがデザインされたアーマーを装備、カラーリングは青だが、若干の銀を思わせるラインが存在する。それがリヴァイアサンの外見だ。

『一時撤退だと!? ロストにならなければバトルには影響はない。陣地の取り合いをしている訳ではないのだ!』

ワイバーンの方は、通信で撤退の警告を聞き流す。リヴァイアサンはネームドランカーだが、自分よりは順位が下である。ならば、順位を考えればわずかな勝ち目が存在すると思っていた。

「ネームドランカーと言えど、超有名アイドルの番犬と化した連中には興味ない」

彼の一言に逆上したワイバーンは、近くにあったコンテナから即座にロングスピアを呼び出し、それを槍投げの要領で力いっぱいに投げる。そのスピードは、槍投げ選手のそれとはケタが違う。


 しかし、リヴァイアサンが避けるモーションを取るような気配は一切ない。槍が直撃すればロストではないにしても、致命傷は確実。セイバーガジェットの破壊力は、一般的な武器と呼ばれる物とはケタが違うのだ。

「お前は何も分かっていない。セイバーガジェットならば、この攻撃を避けなくても―」

その一言と共に、リヴァイアサンは大型ドラゴンブレードをシールドとビームエッジロングソードの2つに分離、ビームエッジロングソードを思いっきり振り回す事で、ロングスピアのパワーを相殺したのである。

『バカな。今のロングスピアは攻撃力10000オーバーの武器だ。それを、ああもあっさりと弾き飛ばすのか?』

パワーを相殺されたロングスピアは、地面に突き刺さることなく普通に落下した。この光景を見ていたギャラリーも言葉に出来ない位の衝撃を受けている。一体、何が起こったのか?

「攻撃力1万オーバーだと? その武装はオーバーリミットウェポンとして厳重に封印されている。攻撃力に見合わない反動の武器を使っているという事は、その武器はチートを使用している証拠だ」

『今の武器がチート!? チートの何がいけないというのだ? 超有名アイドルも全てが上手くいっているのはプロデューサーが莫大な金を使ってメディアと政府を買収―』

「やはり、そう言う事か。アカシックレコードの介入がない世界にも、超有名アイドルと言う名の悪意を持ったチートが存在する。つまり、この世界にも世界線と言う概念が存在したという事か」

『超有名アイドルが悪意のチートだと? それはBL勢力の間違いじゃないのか? あの作品も間違いなくチートの―』

ワイバーンが何かを言おうとした瞬間、アーマーが強制的に機能を停止したのである。これに関して、リヴァイアサンが何か疑問を抱くような事はなかった。周囲のギャラリーの方は、リヴァイアサンと対照的に何が起こっているのか分からない位に慌てている。

「情報は相変わらず、超有名アイドルがロードデュエルに介入している可能性があるという所までしか分からない。一体、何が起きているのか」

リヴァイアサンの方も別勢力に狙われている訳ではないが、デュエル終了後には即時撤退をする。他にメンバーを連れている訳ではなく、彼は単独行動のようだ。


 同日午前11時10分、リヴァイアサンのデュエルが終わった頃に動きがあった。どうやら、不正デュエルがあったという事でマスコミ等が現地へ駆けつけているらしい。テレビ局の中継車と思われる車両が複数、セイバーロードへ入っていくのを目撃した人物もいる。

「またマスコミか。相変わらず、彼らは何も分かっていない」

この様子を見ていたのは、身長170センチ位、青の背広に黒のセミロングと言う男性である。ちなみに、ネクタイはしていないようだ。

「マスコミも、所詮は超有名アイドルへネタの提供をしているだけの存在になり下がった。そして、フーリガンと化した超有名アイドルファンが他コンテンツに対し、炎上を仕掛けてネット上を混乱させる」

彼の口調は近くで話を聞いていた人物が、何処かで聞き覚えのある物と錯覚する。何処で聞いたのか思い出すには少し時間がかかっているようだ。

「超有名アイドルのやり方は、いずれ日本だけではなく、世界、地球、銀河系をも滅ぼす思考である事は間違いない。あの商法だけは、他の世界でも賢者の石と呼ばれている禁忌の存在―手を出すべきではなかった」

そして、彼は考えていた。超有名アイドル商法は賢者の石とも言うべき禁断の領域であり、それに依存する日本は破滅の道をたどる事になるだろうと。

「超有名アイドル1組がいれば、全ての災いから守ってくれるという思考を持つ人物がいる限り、このような商法は繰り返される。それこそ、合法化された詐欺商法その物だ」

次第に周囲の人物が減っていく。彼に関わると不幸になるという訳ではないが、自分達に被害が及ぶのを避けているような気配である。

「どちらにしても、超有名アイドル商法が間違っていると欠陥を指摘しなかった事が、この流れを引き起こしたのは間違いない。選挙権があるのに、それを行使をしなかったのと同じように」

彼は、先ほどまで外していた携帯音楽プレイヤーのイヤホンを取り出し、それを耳に取りつける。イヤホンと言うよりは、その形状はインカムにも近い。


 イヤホンを取り付けて30秒もたたない内に、何処かから連絡が入った。セイバープレートを確認すると、緊急通信と表示されている。

『例の勢力が動き出しました。BL勢力の駆逐は確認されているので、別のカテゴリーでしょう』

「分かった。そちらへ―」

『実は、この近くで目撃証言があるという情報が入っています。そのまま目的地へ直接調査をお願いします』

オペレーターと思われる女性の声を聞き、該当エリアへ急ぐ必要があると思っていたが、どうやら近場に出没するらしいという話だった。

「この近くか。マスコミが動いているのが、その証拠かもしれない」

そして、彼はマスコミが向かっている方角を振り向く。既に始まっているという気配だろうか?

『既に交戦は始まっているようです。急いで下さい』

「言われなくても分かってる」

交戦は既に始まっていた。それを止める為に、彼は全速力で近くの端末機へ走る。そして、端末機で彼が取った行動は他のプレイヤーが行わない、全く別の行動だった。


 最初に彼が行った行動、それはポケットから別の機械を取り出した事だった。それは、先ほどの通信で使用した携帯音楽プレイヤーのような〈セイバープレイヤー〉である。そして、彼がコールした台詞も他とは全く違う物だった。

「マネージメントオーダー! リミッター解除、《セラフ》!」

彼がセイバープレイヤーを端末へかざすと、彼の背後に全長1メートル強のコンテナが高速で『出現』した。コンテナが出現した周囲には多くのギャラリーもいたようだが、怪我などは全くないという。どのようなシステムでコンテナが出現したのかは不明だ。

【オーバーリミットウェポン《セラフ》】

コンテナに書かれていた文字は英語だ。そして、コンテナの色も通常のガジェット等で使われるグレー主体の物や青、ランカー専用を意味する赤とは違い、白銀である。

「オーバーリミットウェポン、それは人間では扱う事が不可能を意味している武器。その力は惑星1つを崩壊させるほどの絶大な火力をシミュレーション上で再現して見せたという―」

白銀のコンテナを見たギャラリーの一人がつぶやき、それを写真に収めようとスマートフォンをコンテナへ向けた。しかし、次の瞬間に起こった事は周囲にも衝撃を与える物だった。

「そんな、バカな!」

彼がコンテナに向けたスマートフォンは、突如として『電源が切れた』のである。不具合や動作不良の類ではなく、瞬間的にバッテリー切れが起きたというのが正しいのかもしれない。

(聞いた事がある。オーバーリミットウェポンを封印するコンテナは、複数の封印プログラムを起動させている関係で電力を大幅消耗するという。そして、コンテナに内蔵した太陽光発電システムだけでは飽き足らず、周囲の電力を吸収する素材を使用しているという―あれは本当だったのか)

偶然通りかかったのは、これから別の場所へ出撃しようと考えていた不知火だった。彼女も端末を起動させ、セイバーガジェットを呼び出す所である。

「セイバープレート等の学園都市で作られた電気を使う物に特殊なコーティングがされていたのは、この為だったのか? あるいは、マスコミに知られてはいけない物がブラックボックスになっている可能性も否定できない」

彼女は何か疑問に思う部分もあったが、まずは別件を優先させる為に所定のエリアへと急ぐ事にした。あの状況では、半径50メートル近辺のコーティング未対応端末は機能停止している可能性がある。


 出現したコンテナ正面が開き、その後に周囲の扉も開く。そこから出現したのは、戦闘機と言うよりは何かのブースターユニットのようなデザインをした白銀のセイバーガジェットだった。周囲も、これがオーバーリミットなのか―と疑問を持っている。

「西雲颯人、《セラフ》ゲットセット!」

彼の掛け声とともに、セラフがブースターユニットとアーマーの2つに分離をした。そして、彼の着ていた背広もセイバーガジェット用のインナースーツに変化し、アーマーが装着されていく。

【アーマー装着完了 オーバーリミットウェポン《セラフ》起動開始】

メットのバイザーにメッセージが表示され、その後にエネルギーがセラフに注入される。10秒もしない内にエネルギーの充電は完了、そのスピードはセイバーガジェットの2倍速だ。

「エネルギー充電完了、リミッター解除!」

彼の一言共に、セラフのアーマーカラーが白銀から青の混じった白銀へと変化する。おそらく、青はエネルギーの色と思われる。

「超有名アイドル、私を楽しませてくれるかな?」

彼の名は西雲颯人にしぐも・はやと、セイバーロード運営サイドの人物でもある。ある時には学校で日本史を教える事もあれば、今回のように超有名アイドルをハントする事もある、謎の多い人物だ。


 同日午前11時16分、セラフが向かっていた商業施設エリアでは、全長3メートルでSFに出てくるような緑の鋭角的デザインのロボットが複数体暴れていたのである。

『今となっては、我々に逆らう者は国家反逆者と同義!』

『超有名アイドルこそ、日本を救う事が出来る救世主なのだ』

『海外のアーティストは、我々が育てたのと同然! その恩を忘れた者には天罰を!』

ロボットの方から聞こえる男性の声は、まるで超有名アイドル以外のアイドルは存在を認められていないと感じられるような発言を続ける。彼らは超有名アイドルのファンで、投資家ファンや狂信者、タニマチとも呼ばれているような勢力。セイバーロードでは一種の〈部外者〉とも言われている存在だ。

「超有名アイドルは英雄ではない! 彼らは芸能事務所と一部の政治家に利用された広告塔にすぎない。それが分からないのか」

セイバーロード第2小隊の男性メンバーが彼らの発言を否定した。セイバーロードの存在意義、それは超有名アイドルのような日本にとって〈不適切な利益〉を上げる〈チートアイドル〉の存在を許さない―若干の意訳が混ざっているが、大体あっている。

『あの商法が不適切だと? 冗談はやめてもらおうか』

『警察に強制調査を受けていない以上、公式に認められているも同然だ! 売れていないアーティストやファン側の言い分に便乗するような事こそ、我々にとっては悪そのもの』

彼らには、第1小隊の説得も受け入れてもらえるような状況にない。こう着状態は20分以上も続き、第2小隊にも被害が出始めている。

「大量に売れれば正義だというのか? 莫大な利益を得る為の意図的な手抜き作品を世界は発信する事こそ、完成度の高い作品を求めるファンにとっても悪だとは思わないのか!」

第2小隊の隊長も彼らに対して反論、手持ちのビームランチャーで反撃をするのだが、その攻撃はバリアによって無効化されてしまった。おそらく、こう着状態になった原因の一つは、彼らが扱うチート技術という可能性も否定できない。

「こちらへ急速に向かってくるセイバーロードがあります。これは―」

「どうした?」

第2小隊のメンバーが未確認のセイバーロード反応をバイザーで確認し、それを隊長に伝えようとした。しかし、伝えようとしたと同時に彼らの前に姿を見せたのである。

「ネームドクラスの超有名アイドル絡みと思ったが、レベル1勢力とは」

姿を見せたのは、何とセラフだったのだ。発進した場所から商業施設エリアまでは5キロ近くある。一番驚いたのは、ここにセラフが現れた事実を知った超有名アイドルファンだった。

『我々をレベル1だと! 冗談はやめてもらおうか』

複数のメンバーがセラフに対して攻撃を仕掛ける。相手はビームやミサイルだけではなく、ガトリングやマシンガン、バズーカ等も所持しており、全弾直撃でもすると生命の危機さえある。


 しかし、それらの攻撃はセラフの前では完全に無力と言うしかなかった。攻撃に関しては全て、セラフに到達する前に消滅をしたからだ。

「分からないのか? セイバーロードでは他のエリアで使用出来たチート技術の類は、一切無効化されると」

セラフが見せた余裕の表情、それは超有名アイドルファンには全く見えていない。それは、セラフのメットバイザーが特殊加工の為に素顔が見えない仕組みになっていたからだ。

『俺たちの技術がチートのはずはない! 全てはバイヤーから手に入れた正規品だ!』

「その地点でチート品だというのが分からないのか! セイバーガジェットは全て非売品で外部への持ち出しは特例を除いて認められていない。つまり、外部バイヤーから購入した物は99%以上がチート品として不正改造された物だと!」

『チートだったとしても、何故チートを使う事が悪いのだ!?』

「人は過ぎた力を使用すれば、欲におぼれて全てを手に入れようとする。それを実行したのが、今のお前達が応援している超有名アイドルだという事を!」

次の瞬間、セラフは背中のウイングを分離、6つのウイングは2段階に変形し、何かの遠隔操作兵器を思わせるようだった。

『お前の使っているオーバーリミットウェポンも過ぎた力ではないのか?』

右肩が赤い機体に乗っている男性アイドルファンは、サブマシンガンを連射してセラフの方へ急接近する。しかし、セラフがサブマシンガンを避けるアクションを取る事はなく、逆に右手を開き相手の方に右腕を突き出した。

「オーバーリミットウェポンが過ぎた力と言うのは百も承知の上だ! この力はチートではなく、運営に認められた最強の力でもある!」

そして、右手に展開されたシールドバリアでサブマシンガンの弾丸を無効化、先ほど展開した6つの遠隔操作兵器は今の機体を攻撃し始めた。


 遠隔操作兵器の直撃を受けた機体は機能停止、乗っていたパイロットも脱出をする。機体は爆発せず、そのまま煙だけが上っていた。

『バカな。我々の機体が、たった一撃で?』

リーダーと思われる人物が驚く。この機体はロードファイトでも使用されている物で、それをロードデュエルでも使用できるようにしたというのがバイヤーの売り文句だったが…。

「ロードファイトとロードデュエルではシステム的な部分は同じだが、攻撃力等のパラメーター部分は根本的に違う。簡単に流用できると思ったら、それは間違いだ」

その後、他のロボットも先ほどの機体と同じ末路をたどった。11時20分には運営のパトロールカーが現れ、超有名アイドルファンを逮捕した。逮捕の理由は「超有名アイドルの宣伝行為」である。


 同日午前11時30分、ロードデュエル専門チャンネルでニュース速報が流れた。セラフの姿は確認できなかったが、彼の撃破した煙を上げた機体は映し出されている。

『今回の事件を受けて、ロードデュエル運営サイドは超有名アイドルファンによる同種の事件に対し、全ての事例を根絶するまで戦い続けると宣言しました』

『一方で、東京にある大手芸能事務所前では大勢のマスコミが取り囲み、所属アイドルに今回の事件をどう思うか取材を試みようとしているようです。しかし、これに関しては芸能事務所側が特にコメントをする事ではないと門前払いを行っていると現地では伝えられています』

このニュースをファストフード店でチェックして驚いていたのは、インナースーツ姿の松鶴イオリだった。少し早いお昼を食べる所で、トレーには焼きそばハンバーガーとカリカリに揚げられた出来たてポテトチップス、持ち込みタンブラーに入っているエナジードリンクが置かれていた。

「超有名アイドルが莫大な利益を上げる度に、日本政府が裏で操っているのではないかと言われる位、今の超有名アイドル情勢は政治と切り離せる気配はない」

そして、ポテトチップスに手を付けながらニュースを眺めている。しばらくして、衝撃的なニュースが流れ、イオリのポテトチップスを取ろうと考えていた手が止まった。

「これは、海外アーティストの締め出しにつながる恐れもある。何としても、超有名アイドルの暴走を止めないと」

見ていたニュースの内容は、海外が超有名アイドルに対して違法手段で利益を得ているという指摘が相次ぎ、それに対して政府が「超有名アイドル保護」を理由にコンテンツ鎖国を行おうという物だった。


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