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学園セイバーロード  作者: 桜崎あかり


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15/16

第15話『セイバーロード激戦区』

 西暦2016年4月9日午後6時20分、スクールブレイカーがアガートラームを展開、瞬時にして人型ダークビジョンに似たARアーマーであるアンノウンを消滅させた。

「これが、アガートラーム―」

秋雲ほむらも目の前で起こっている出来事に対し、言葉にできないような衝撃を受けている。近くにいたリヴァイアサン、ドミニオンも同じ考えだろうか。

「あのダークビジョンが偽造ガジェットではないという事は、何かを知っているのか?」

リヴァイアサンが直球でスクールブレイカーに質問をぶつける。しばらくして、アガートラームが消滅し、スクールブレイカーのARアーマーも解除された。

「彼らの使用するガジェットは、とあるアカシックレコードに書かれていた設計図をコピーして開発された―劣化版S級ガジェットとも言うべき存在だ」

スクールブレイカーは途中で言葉を濁し、分かりやすい単語を使用して説明する。

「S級? ああ、ロードガジェットのSランクタイプガジェットか」

どうやら、今の説明でリヴァイアサンは理解をしたようだ。そして、それが何故流通し始めているのか疑問に持ち、それを質問しようとしたのだが―。

「一体、何が目的で動いている?」

ドミニオンとしては、スクールブレイカーの目的には理解できないような個所も存在する。それを踏まえての質問だった。

「それを君達が質問するのか? 白銀の破天使」

「破天使?」

「そう言う事か―」

スクールブレイカーの言った単語に対し、ほむらとリヴァイアサンのリアクションは全く違っていた。ほむらが全く知らないのに対して、リヴァイアサンは何かを知っているらしい。

「白銀の堕天使、これはネットスラングであり誤用の扱いだった。正式名称は白銀の破天使のはず」

白銀の堕天使とは実は誤用の類だったのだ。そして、本来のチーム名は〈白銀の破天使〉で、エクスシアのARアーマーにプリントされている天使の羽をイメージしたパーソナルマークにも、実際に書かれている。

「白銀の破天使? エクスシアの名前に聞き覚えがあると思ったら、そう言う事だったのね」

ほむらは唐突にARバイザーで何かを検索し始めた。キーワードは〈白銀の破天使〉である。次の瞬間、考察サイトをはじめとしたサイトが検索結果として出現し、白銀の堕天使で検索した時とは違うサイトも出てきていた。

「そう言う事だ」

その一言と共に、スクールブレイカーは姿を消す。どうやら、彼も別のエリアへと向かっているらしい。それに加えて、ドミニオンも姿を消していた。

「まだまだ敵勢力は残っているかもしれない。この場所にいる残存勢力を―」

ほむらは残存勢力を撃破してから別の場所に向かおうとしていたが、バイザーを見ると何かの反応が別のエリアで確認されていた。反応の大きさを見ると、先ほどのアンノウンと同じレベルにも見える。

「行く場所は決まったか?」

リヴァイアサンの方は別働隊が駆けつけてくれる事になっている為、このエリアにとどまるらしい。ほむらもエリア残留を考えていたが―。

「ここは、超法規的処置で該当のエリアへ向かいます」

ほむらは超法規的処置を使って、反応のあったエリアへと向かう事にした。フルスピードを出せば10分で到着出来るだろう。


 同時刻、草加市内を調査していたバハムートは超有名アイドルとは別の地下アイドルファンと交戦をしていた。

『地下アイドルと聞いて、少しは違う特徴を持ったアイドルのファンと考えていたが、結局は超有名アイドルと一緒か』

抵抗をしてきたためにガジェットの機能を停止したのだが、結局は地下アイドルも地上アイドルと同じで、儲かればよいという流れになっていた事にバハムートは怒りを覚えていた。

『アカシックレコードに書かれていた、同人楽曲や音楽ゲーム楽曲のみが支持される世界になるのも時間の問題か』

バハムートはレポートに書かれていた文章を思い出す。そこには、超有名アイドル楽曲が衰退した後に何がブームになっているかと言う考察もあったのだが、一部の世界以外では同人楽曲と音楽ゲームの楽曲がメインになっているという物だった。

『間に合うか? あの場所まで―』

バハムートが見上げる先に見えるのは、それはセイバーロード運営本部ビルだった。


#####


 同日午後6時30分、ネット上のまとめサイトで現存勢力についての状況がまとめられていた。

【ガーディアンは上級ランカー及びクー・フー・リンが倒されているが、一部勢力がいまだに健在】

【超有名アイドル勢は撃墜情報がいくつか出ているが、戦力的には減っている気配が見えない】

【白銀の堕天使は規模が不明だが、主力3名は健在】

【セイバーロード運営はシステムを取り戻して、反撃を始める所だろう】

【それ以外に乱入している勢力は確認されていないが、既にBL勢は壊滅しているという未確認情報もある】

これらのまとめに関しては閲覧者が非常に増えているように思える一方で、何か釣り針を隠しているのではないかと言う話もある。

 その一方でガーディアンの動きが鈍くなっている事が別のまとめ記事で指摘されている。その理由として、ある単語を記載しても非表示になる時間にラグが生じているという情報が存在し、その真相が現在調査中だ。

『ガーディアンの情報対策が裏目に出たのか、それとも―』

一連のタイムラインをスマートフォンで確認していたのはルシファーだった。不知火の追跡を含めてプランが白紙になってしまったというのもあるが、それ以上に運営が混乱している状況を不審に思っている。

『どちらにしても、ガーディアンにとっては良くないニュースなのは間違いない。それを、どの組織が利用するのかは別として―』

ルシファーの方も下手に超有名アイドルへ関われば危険な展開になると判断し、該当エリアからは退却する事にした。ルシファーと同じ判断で撤退した勢力も複数ある。

 そう言った影響があるのかは不明だが、セイバーロードにおいて稼働中のガジェット数が一時的に10000を下回ったという話がネット上で拡散した。

【常時接続可能ガジェット数が10万と考えると、これ位が快適だと判断するが―】

【あくまでもセイバーガジェットの数が1万以下と言う事だろう。他のARガジェットもセイバーロード内で稼働している】

【セイバーロードはデスゲームの類でもなければ、ウォーゲームと言う訳でもないだろう。何故、接続数が減少傾向になるのか?】

【現象の理由は色々とあるが、おそらくは超有名アイドルの芸能事務所大手に買収でもされた可能性が否定できない】

【買収よりも、逆に無用なトラブルを回避する為に接続をしていないのが大半だと思う】

【セイバーロードは回線切断のようなトラブルはないが、ARガジェットの誤作動で思わぬ怪我をする事があるらしい。そうしたネットの記事を見た事がある】

【それは、他のガジェットで起きた事故を合成したコラ画像の可能性がある。今までもガジェット絡みでは事故が報告された例はない】

【違うな。それは、報告があっても意図的に情報を操作してなかった事にしている可能性がある】

接続しているガジェット数が減っている事に対し、ネットでは議論が展開されている。中には、ガーディアンが情報規制をサボっていると思われる部分もいくつか存在していた。

「ガーディアンの動きも鈍くなっている証拠か。既に警察の摘発を受けたのか、それとも―」

つぶやきのタイムラインを追跡していたのは、該当エリア近辺へ到着したスクールブレイカーだった。ARアーマーを装着していない時はゼロ=ランスロットと呼ばれているのだが、ネット上ではスクールブレイカーが一般的である。


 同刻、フェンリルのロケバスは草加市へ入る直前の道路で足止めを受け、そこに姿を見せたのはエクスカリバーだったのである。

「そこまで知っているという事は―貴様、エクスカリバーか?」

ロケバスを降りたフェンリルは、彼が今回のルートに気付いた理由が分からずにいた。

 セイバーロードへ入る車両は基本的にゲートがある道路から入らないといけない事情がある。その中でも、ゲートの空席情報はネットでも簡単に手に入るのだが、空席のゲートが道路の混雑具合とリンクするかと言われると疑問が浮かぶ。

『お前達が裏で買収をしていた政治家がセイバーロードの運営にもぐりこめるように調整、更には超有名アイドルが都合よく介入出来るようにガイドラインやシステムを調整しようとしていたのは事実!』

「馬鹿な!? 貴様も知らない訳ではないだろう。セイバーロードが治外法権、ありとあらゆる勢力の過剰介入を許さないと」

『確かにセイバーロード運営は、超有名アイドル勢力の力押しや財力にものを言わせた商法、タニマチを利用した商品展開、炎上商法等を特に警戒していた』

「そこまで超有名アイドル勢力を拒否しているセイバーロードに、我々が買収した政治家が入り込める訳がないだろう?」

『芸能事務所の有名アイドルがセイバーロードに参加出来ないというのは知っているだろう。あれには無用な混乱を避けるためとは別に、もうひとつの理由が存在する』

「それがガーディアンとでも言いたいのか?」

『仮にガーディアンの中に超有名アイドル所属のアイドルや芸能事務所関係者が紛れ込んでいても、不思議ではないだろう』

「話にならないな。ガーディアンは超有名アイドル商法に対し、最も反論をしていた組織だ。それは、現状でも変わらない」

 話の途中でフェンリルが超有名アイドル部隊を呼び出し、彼女達にエクスカリバーを倒すように指示をする。そして、到着した複数の資材搬入トラックから降りてきたのはパワードアーマー型を含め、新型も投入されたARガジェット軍団だった。

『何故、セイバーロード運営に超有名アイドル関係者が全くいないと断言できる? この手の産業スパイや炎上の火種を作る事は超有名アイドルにとっては十八番だろう?』

「そうした姑息な手段を使ってでも超有名アイドルを唯一のコンテンツに―確か、アカシックレコードにも似たような事が書かれていましたね」

フェンリルが指をパチンと鳴らすと、パワードアーマーが起動し、エクスカリバーに向かって襲いかかる。しかし、エクスカリバーが怯むようなリアクションは全く見せない。

『そこまで知っていて、何も改善せずに放置するつもりか?』

別のガジェットコンテナを呼び出し、本来使用するガジェットとは別にショットガン型ガジェットとヘビーマシンガンガジェットを取り出し、それを二丁拳銃にしてパワードアーマーを即座に沈黙させた。

「ゼロ距離射撃からのバースト射撃だと?」

エクスカリバーが取った戦法とは、ショットガンによる頭部一点集中のゼロ距離射撃からヘビーマシンガンによるバースト射撃。それによって、パワードアーマーは即座に機能を停止し、プレイヤーも同時に気絶した。

 デスゲームの類ではないではないが、エクスカリバーが取る戦法や戦闘スタイルはデスゲーム系小説等で見られるような物が多い。何故、彼はこうした戦法をあえて取っているのか?

「こちらも強行策を使ってでも超有名アイドルによる絶対支配を実現させる為に―」

『フェンリル! 貴様は日本から超有名アイドルコンテンツ以外を追放して、一体何をしようと言うのか』

「それは日本経済の活性化に決まっている!」

『こうした強行策で日本を活性化したとしても、喜ぶのは一部のタニマチや投資家連中だけだ! 他の市民が本当に喜ぶというのか?』

「日本に必要なのは、超有名アイドルファンと金を投資してくれる勢力だけでいい!」

『やはり、全ては繰り返されると言うのか!』

お互いに正論とは言い難いような話の応酬が続く。フェンリルもアカシックレコードをある程度知っているのだが、聞く耳持たず。増援の方は次々と現れるのだが無限と言う訳ではなく、駆けつけるのに道路の渋滞で対応できない部隊も一部で存在した。


 同日午後6時35分、現状で到着している増援も半分を切った。エクスカリバーの方も疲労気味だが、余力は残っている。

『お前はアカシックレコードがどのような性質を持ち、それが何を意味するのか分かっていない!』

エクスカリバーが道路から別のコンテナを呼び出し、今度はチェーンソーを思わせるようなロングソード型ガジェットを手に取る。そして、エクスカリバーではなく手に取った武器で超有名アイドルを次々と気絶させていく。

『アカシックレコードにアクセスできる少数の人間が、世界を自由自在に出来るという事自体が超能力に等しい! それが可能な勢力は超有名アイドルだけで十分だ!』

フェンリルが手にしていた物、それはガンブレード型のセイバーガジェット《レ―ヴァティン》、その力を発動させようとした時に事件は起こった。

「これは、どういう事だ? セイバーガジェットが暴走をしているだと?」

思わずフェンリルは悲鳴を上げながら叫ぶ。ARアーマーは装着されているのだが、デザインがダークビジョンに似ている。これが、一体何を示しているのか。

『元々、セイバーガジェット自体が超有名アイドルのような悪意の力を拒絶するシステムになっている。おそらく、敵の手に渡った際の対策も考えていたのだろう』

「我々が悪意の力―どういう事だ?」

『アカシックレコードでも賢者の石と呼ばれ、他の世界でも欠陥箇所が指摘されている状況下で指摘を無視して強行、その力はブラックリストに書かれる程の猛威である事は火を見るよりも明らかだろう』

「認めない―超有名アイドルが絶対悪など認めない。我々は神だ! 超有名アイドルこそ、日本で国家予算を生み出す存在であり、全てを支配する力!」

フェンリルのARアーマーが黒くなっていくだけではなく、彼の思考さえも掌握しているように見える。まるで、超有名アイドル商法に縛られていったタニマチのようにも感じ取れた。

『その考え方こそ、悪意の力だというのが、まだ分からないのか? そのような考え方がBL勢のような存在を生み出し、他の勢力に対して徹底抗戦を仕掛ける。コンテンツ業界内で戦争が起きている状態だ』

「そうでもしなければ―日本経済を活性化させるのは不可能だった。お前も分かるだろう。今の日本はバブル崩壊を引きずって未だに脱出出来ないでいる事に」

『だからと言って金の力に物を言わせた偽りの経済活性化では、いつか疲弊する! 1万人弱のタニマチを利用して1000兆円以上の赤字国債を2年で完済を目指すような計画は、初めから不可能だ』

「不可能はない! 不可能を可能にする、超有名アイドルならば―」

次第にフェンリルの思考は失われ、ARアーマーが装着完了した頃には完全に乗っ取られたと言っても差し支えのない状態に変化する。そして、超有名アイドル信仰以外を悪と認定するかのように、エクスカリバーに襲いかかってきた。

『フェンリル! お前はコンテンツの可能性さえも全て踏み潰し、その行動によって海外からも脅威と指摘された! ここで、お前の野望だけではなく超有名アイドル商法その物を断ち切る!』

エクスカリバーはアカシックレコード・フルアクセス状態のエクスカリバーを構え、そのまま突撃をする。そして、エクスカリバーの振り下ろしたビーム刃の斬撃と同時にフェンリルのARアーマーは瞬時に砕け散った。それと同時にエクスカリバーのセイバーガジェット、セイバーアーマーも砕け散る。

「エクスカリバー、お前は何を求めていた?」

斬撃による衝撃で吹き飛ばされるフェンリルは言う。それに対し、彼が口を開く事はなかった。

(超有名アイドル商法の駆逐、それだけではコンテンツ業界に平和は訪れないのか。何が足りなかったというのか―)

エクスカリバーは砕け散ったセイバーガジェットを拾う事無く、その場を後にした。近くにあったアンテナショップの証言によると、彼は別の試作型セイバーガジェットとARアーマーをレンタルしたのだと言う。


 同日午後6時45分、セイバーロード関連の報道特番もいくつかのテレビ局が切り上げ、一部以外は午後7時からの番組は通常営業に戻すらしい。L字テロップで続けるという案もあったが、それは受け入れられる事ではないとテレビ局内で反対意見が出ている。

【特番は一部を除いて午後7時までらしい。国営放送の方も午後7時からは通常のニュースに戻すという話だ。セイバーロードの話題はトップで扱う可能性もあるが】

【セイバーロードの事件は、改めて炎上商法が非難される展開を生み出した】

【どちらにしても、ああいう商法は法律で規制すべきだ。下手をすれば、これが原因で世界が滅亡する可能性だってある】

【世界滅亡は言いすぎだが超有名アイドルが炎上商法を悪用し、まるで一昔の―】

【それ以上の発言は危険だ。超有名アイドルの一件に宗教的な要素は全くないのに】

【それよりも気になるのは午後7時から通常番組に戻すテレビ局の中で、超有名アイドルが出演する番組が2つあるという事だ】

【つまり、一歩間違えれば不謹慎と言われて番組が炎上する可能性が否定できないと】

【実際に炎上するかどうかは、放送されてからではないと分からない。ただ、逮捕者の中には超有名アイドルのメンバーが混ざっているという話がある】

【もしかすると、引き続き報道特番になる可能性も否定できないのか】

ネット上では色々な話がタイムライン上で流れている。ガーディアンが機能していないのか、それとも別の事情があるのかは不明だが検閲がされているような様子はない。


 同刻、エクスシアは周囲の超有名アイドルを駆逐しながらドミニオンと合流する為に移動を開始している。移動方法に関しては高速移動用のブースターユニットを使用し、エネルギーの節約をしているようだ。

『あれは、まさか?』

エクスシアの目の前を若干見覚えのあるARアーマーがすれ違ってきた。しかし、向こうには交戦するような様子は全くない。

(バハムート? 一体、セイバーロードの本部へ向かって何をする気なのか)

エクスシアも思う所はあったが、途中でプリンシパリティからの通信が入る。

《まずい事になった。エクスカリバーのセイバーガジェット反応が消えている》

『どういう事だ? エクスカリバーは別の場所で交戦中のようだが―』

《それはガジェットとしてのエクスカリバーではない。どうやら、何処かで破壊されたと考えられる》

『あのガジェットが破壊される可能性はあるのか?』

《それは、こちらでも調べてみる》

通信の内容は、エクスカリバーのガジェットが破壊されたという物だった。しかし、この内容をあっさりと信用出来るかと言うと疑問が残る。それは、エクスカリバーがアガートラームと同様に厳重封印指定がされていたガジェットだったからだ。

『どちらにしても、今から向かう場所へ行けば答えが出るか―』

エクスシアの向かっているエリア、そこは足立区と草加市の間にある道路のひとつで、そこでフェンリルの目撃証言があった場所でもある。


 同日午後6時50分、アニメを放送しているテレビ局以外ではテロップに速報が表示された。

【午後6時40分、東京都足立区で超有名アイドルのプロデューサーを不正な政治献金に関与したとして緊急逮捕】

このテロップを見たとき、視聴者の半数以上が政治献金という単語に疑問を持った。

「政治献金? 2020年に開催される国際スポーツ大会へ、超有名アイドルを全面的に押し出すようなネタがあったような気配はしたが―」

運営本部でテレビを見ていた西雲颯人は疑問を持つ。テロップでは超有名アイドルのプロデューサーとしか書かれておらず、これが誰を指すかは特定されていない。

「アイドルのプロデューサーで有名な人物は数百人以上、それから政治家と裏でパイプを作っていた人物となると―」

西雲と同じ場所でテレビを見ていた松鶴イオリも、人物を特定させるには情報が足りないと考える。

《逮捕された人物がフェンリルであると現地目撃者の証言から判明。超有名アイドルに関して野党からの追及は回避不可能か?》

ARバイザー経由で伝えられた情報、それはフェンリルが不正な政治献金に関与していたと言う物である。

【予想通りだな】

【フェンリルが有名政治家とのパイプを利用してランキング等を不正に改ざんしていた疑いもあったが、これで確証が持てた】

【超有名アイドルと言う違法チートは完全に排除すべき。今の音楽業界はチート勢力の広告塔という存在でしかない】

【音楽業界が超有名アイドルと言うチートで占拠されているというのであれば、小説サイトではBL勢と言うチートがチャートを独占しているという事か】

【結局、どの世界でもチートが猛威を振るうのか。チートと言う概念自体を存在から消し去らないと平和にならないのか?】

ネット上にはチート勢力の排除、チートに関する規制法案を即日提出して成立させる位の行動力が必要、夢小説勢もチート勢力になっている等の声が流れていた。相変わらずだが、一部の単語も規制されていないように見える。

「ガーディアンの本来あるべき姿を歪めた、本当の意味での邪悪が動き出す。彼さえ沈黙させれば、全てが終わる」

一連のタイムラインを見つめていたリヴァイアサンは、突如として表示されたマッピングを元にして《ある存在》の足取りを追う事にした。



 同日午後6時55分、バハムートはセイバーロード運営本部のビル近くにあるショッピングモールまでたどり着く。ここまでくれば、運営本部も目と鼻の先である。

『バハムート、お前を通す訳にはいかない!』

ショッピングモール近辺にいたのは、何とセイバーチーフだった。しかも、ハイブリッドブースター《朱雀》の完成版以外にも複数の銃火器で固めており、ヘビーコマンドという気配を感じさせる。

『セイバーチーフ、例えあなたでも私を止める権利はないわ!』

バハムートは強行突破を考え、アカシックレコードのフルアクセスを起動させようとするが、システムの方が機能することなくガジェットがダウンしてしまった。

『このままでは―』

ガジェットのシステムがダウンし、セイバーチーフのビームブレードを回避する手段も限られる中、バハムートはARアーマーをフルパージし、何とか高速回避をする事に成功した。

『貴様はロードファイトのバハムート!? 何故、貴様がロードデュエルに参加している』

瞬間的にセイバーチーフの腕が止まった。ロードファイトにもバハムートが存在し、その人物が目の前でロードデュエルに参加している。その事実に驚きを隠せなかったからだ。

「私がロードデュエルに参加した理由は、超有名アイドル商法を軌道修正させる事。色々な憶測記事も出てきたみたいだけど、これが真実よ」

黒髪のセミロングで前髪が整っており、眼の色は黒、ムチムチという気配のインナースーツ姿、それが目の前にいるバハムートである。そして、セイバーチーフを睨みつけると同時に目の色は赤に変化し、別のコンテナ倉庫から飛行ユニットらしきものが出現する。

『あのユニットは、ロードファイトのガジェット!?』

本来、ロードファイトとロードデュエルで使用するガジェットは別物であり、ロードファイトのフィールドでセイバーガジェットは起動しない。その逆も同じだ。

 しかし、このショッピングモールはロードファイト及びロードデュエルのフィールドとしても機能している事で、両方のガジェットを使用する事が可能になっていた。つまり、バハムートが先ほど呼び出したのはロードファイト用のガジェットである。

「その通りよ。ここはロードファイトのロケテストが行われる聖地としても有名なのは、貴方も知っているでしょう? つまり、ここでは両方のガジェットを無条件で使用出来る」

バハムートのセイバーガジェット及びセイバーアーマーは既に本部の方へ転送されているが、ロードファイト用のロードガジェットでならば戦闘を続行できる。

『そう来るのであれば、こちらはこうだ!』

セイバーチーフのシステムが瞬時に変更され、白をメインとしたインナースーツが黒へと変化する。そして、武装の一部が瞬時にして中距離タイプの物へと入れ変わっていた。

『ロードデュエルとロードファイトのどちらでも運用可能なハイブリッドガジェット、既に開発されていたとは―』

バハムートも思わずため息をもらす。それ位にハイブリッドガジェットは名前ばかりが先行し、ネットで炎上していた程の都市伝説に近いガジェットだったからだ。

『さぁ、決着を―』

セイバーチーフがビームブレードを構えた瞬間、別の第3者が介入してきた事を示す警告が表示される。

『一体、誰が乱入してくるというの?』

バハムートにも同じ警告が表示され、そのポイントが示す方角を振り向くと、そこには赤い甲冑にオーバーリミットウェポン《信玄》を構えた真田幸村が立っていた。

『両者ともお互いに武器を収めよ! 我々が戦うべき真の敵はガーディアンの中にいる』

幸村の話に対し、バハムートは若干信ぴょう性に欠けると考えていた。ガーディアンの首謀者と言われていたクー・フー・リンは既に逮捕されているはず。

『クー・フー・リン、フェンリルを影で操っていた存在、それが一連の事件を導いた全ての元凶―』

突如として、セイバーチーフはメットを外し始める。そして、その素顔を見たバハムートが一番驚きを示していた。

『武蔵アカネ、お前がセイバーチーフだったのか』

バハムートは欠けていたピースが見つかったかのような思いで武蔵を見つめ、その場に膝をついた状態で倒れる。


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