第13話『データベース』
西暦2016年4月9日午後5時50分、テレビ局で報道特別番組のゲストとして出ていたフェンリルは、別の場所へ向かう為に準備をしている。
「各メンバーは決戦に備えよ。超有名アイドルが唯一無二の存在だという事を改めて思い知らせるのだ」
フェンリルがロケバスに乗り込み、他の超有名アイドルメンバーに指示を出す。実は、このロケバスは最新鋭のコンピュータ等を乗せており、万が一の事件があった時に遠方から指示を出せるように改造が施されている。
(あとは、他の勢力がどう動くか―)
フェンリルも焦っていたのかもしれない。自分もガーディアンにとってはコマの一つと言う可能性がある事を。
「あのプロジェクト自体がガーディアンによるおびき寄せる餌だとすれば、あの時に投資募集を告知したのも全ては計画通りだったという事か」
彼は、ふと思い出した。それは2006年の学園都市群セイバーロード資金援助に関する告知にまでさかのぼる。
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西暦2006年某日の午前中、埼玉県草加市にある某ビル。後にセイバーロードの運営本部となった場所では、複数の投資家と思われる人物が受付を済ませて集まっていたのだ。
「あなたもですか?」
「奇遇ですね。オイルマネーで莫大な資産を得たのに、今度は学園都市の投資ですか?」
受付スペースより少し離れた場所にある雑談スペースに集まっているのは、有名な財閥出身の人物や建設大手の副社長と言った大物ばかりである。雑談用スペースでは名刺交換、今回とは別の商談を持ちかける人物もいた。
「財閥関係者、建設大手、個人の億万長者、更には競馬で億単位の資金を得た個人投資家までいるのか」
この当時でもフェンリルは覆面を被っていた。ただし、この時の覆面は市販品の狼の覆面に目の部分で若干の塗装修正をしただけの物である。
「セイバーロードの投資に関して、お話を伺いに来ました」
「では、こちらのシートに必要事項を記入してから、このシートを向こうの窓口へお出しください」
受付の女性は狼の覆面に関して全く指摘をするような事無く、必要事項が多く並んだマークシートをフェンリルに手渡した。
シートに関しては投資目的をアンケート方式で問いかける物で、書こうと思えば10分もかからずに書き終える事も可能だ。
【今回の投資家募集を何処で知りましたか?】
この項目では、ネット上、雑誌の特集、週刊誌、テレビのニュース番組に代表されるような物が並ぶ。確かに、それらしい報道があったのは事実だが、それ以前からこの話を知る事が可能なのだろうか?
【どのような目的で投資を考えようとしましたか?】
こちらの項目は、自分の名前を売る為、税金対策等のような項目が存在する。どういった意図で項目を作ったのか謎な物も存在していた。項目にない場合は、その他を選んで記入する方式らしい。
【これは競争入札ではありません。それを踏まえて投資金額を公表できる範囲でお答えて下さい。なお、金額は未記載でもかまいません】
最後の項目は、色々な意味でも含みを持たせたような質問である。これによって、売名行為を目的とした人物を割り出そうとしているのか?
フェンリルは15分程でアンケートを書き終わり、順番を待つ事にする。アンケートを書き終わった順と言う訳ではなく、内容を審査した後で受付から呼び出しがあるらしい。
「奴はダメだったようだな」
「競馬で大儲けし、その税金対策を考えていたのだろう」
「競馬自体が悪いという訳ではないが、イメージとしては競馬投資詐欺事件で悪いイメージの方が強いのかもしれない」
「アンケートを手抜きしたような人物が次々と落ちている印象か」
奥の方でコーヒーを持ち込んだタンブラーで飲んでいるのは、建設大手とアミューズメントの中堅所という肩書きの男性である。
『フェンリル様、確認する項目がありますので受付へお越しください』
近くの椅子に座って休憩をしようと思った矢先、フェンリルは受付へと呼ばれた。そして、受付ではアンケートの内容確認と同時に―。
「この金額に関しては本当でしょうか? 今回の投資家募集は入札等とは異なりますが、これで問題がないかご確認をお願いします」
受付嬢は、マークシートに書かれた金額に関して確認を求めていた。これに関しては、セイバーロードの運営側も疑問視をしているらしい。
「その金額で間違いはありません」
「それさえ聞ければ問題はありません。もうすぐ、説明会がありますのでしばらくお待ちいただければ―」
その後、あの展開になるとは予想できなかったのである。最高金額を提示したのはフェンリルであり、あの場の誰よりも資金提供の理由も筋が通っていた。それなのに、あの一件が表になったのである。
第1回の投資説明会から1週間と少し経過した頃だろうか。ネット上では騒がしいとも言えるような雑誌の写真コピーが出回っていた。この写真コピーはセイバーロードでは出回らなかったが、それ以外の地域では目撃されるケースが相次いだ。
《超有名アイドルの芸能事務所大手、日本征服計画を発表か?》
週刊誌報道から数日~数週間後にはフェンリルの芸能事務所がプロジェクトからはずされる事になり、セイバーロードの資金調達計画は振り出しに戻った。
「やっぱり。そう言う事だったのね」
この週刊誌を図書館で見ていたのは、瀬川榛名だった。何故、彼女が超有名アイドルの不祥事にも近い事件に興味を持っていたのか?
それから仕切り直しされた第2回の投資説明会。そこにはフェンリルの姿はなかったが、その話を聞きつけた大手芸能事務所の社長が何人か姿を見せる。
「最近は違う業種も進出したか?」
「大方、例の芸能事務所と考えは同じなのだろう。セイバーロードは有名になる為の宣伝材料、本来の目的は事務所所属のアイドルを増やし、タニマチの数を増やすと言ったやり方だろう」
「それとは別にゲーム会社が姿を見せているのが気になる」
「ゲーム会社? ここ最近はARゲームが開発されているという話だが―」
雑談スペースでは、前回の審査で落選した建設大手とアミューズメントの中堅所の男性が受付の様子を見ていた。
「向こうとしては大金を出して名前を売ろうとするような投資家よりも、ちゃんとしたビジョンを見据えている投資家を選ぶ傾向がある」
「前回は、あのような状況でも100兆円を集める事は出来た。それを踏まえると、あの事件は運営にとっては想定外でも、大きな宣伝材料になったのは間違いない」
彼らの予感は的中し、第2回でも芸能事務所大手が大量の投資を宣言するという展開となった。しかし、この芸能事務所は外される結果となった。
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それから半年後、芸能事務所Cが何処からか運営の資金難と言う話を聞き、資金援助をしたいと協力要請が入る。
《超有名アイドル商法のテンプレ、またしてもネット上へ拡散する》
しかし、この芸能事務所Cもフェンリル等と同じ人種と言う事が調査の結果判明し、プロジェクトからは外されてしまった。
《ソーシャルゲーム大手、セイバーロード計画に出資へ》
2007年1月にはソーシャルゲーム大手が出資するが、2009年にはコンプガチャをはじめとした問題が表になり、それが原因でプロジェクトからはずされたという。
スポットではなく固定のスポンサーが確定したのは2009年4月だった。そのスポンサーは、過去に説明会へ何度か姿を見せた事もあったゲーム会社である。
「確か、あなた方は以前にも姿を見せていたようですが―」
運営ビルで行われた交渉の場では、運営スタッフの何人かの男性とゲーム会社の担当と名乗る女性が話をしていた。
「あの時は様子見の為に別の担当を行かせましたが、様々な資料をチェックした上で我々のノウハウが役に立つのでは、と思いました」
女性は、運営スタッフの一人に名刺を手渡した。その名刺には―。
《ARゲーム開発チーム主任 瀬川榛名》
ARゲーム開発の肩書きを持っている瀬川、彼女は主にARゲームを開発しており、現在ロケテストが行われている複数のゲームにも関係している人物だ。
「ARゲームですか。ゲームと言うと、ソーシャルゲーム等と同じと―」
「それは違います。ARゲームはソーシャルゲームとは違い、新たな可能性を持っています。学園都市の目的、それに一番合っている物と判断しております」
「どのような違いがあるのでしょうか? 具体例があれば、それを提示していただきたい」
「では、現在ロケテストを行っている機種の映像を交えて説明いたします」
ARゲームとは何か、と聞かれた瀬川は既に運営側が用意していたプロジェクターを使って1本の動画を見せた。それは、現在行われているロケテストの映像である。
「これは!?」
「一体、どういう事かね?」
「これがゲームとは信じられない」
「どのようなトリックを使用しているのか?」
運営スタッフは、映しだされた映像を見て衝撃を受けた。まるで、実際にプレイヤー同士が戦っているかのような内容には賛否両論である。
「見た目は特撮番組のリアル版とも言うべきでしょうか―。これが、我々の開発した新作ゲームであるARシステムです。これによって、ゲームはゲーム以上の付加価値を生み出す事は間違いありません」
瀬川の言う『ゲーム以上の付加価値』について、何人かのスタッフから質問が飛び出す。言い方は違っていたが、大体は同じだと瀬川は把握しているようだ。
「アニメやドラマ、さまざまな番組でグッズが制作され、主題歌CDが作られ、更にはイベント―と言う商業展開はご存知でしょう。しかし、ARゲームはさらに先を目指しています」
次に映し出された映像は、ARアーマーと呼ばれるインナースーツの上に装着されるスーツの設計図だった。そこには、色々な指定がされており、これが試作の段階である事を思わせる。
「このARアーマーは、実際に救助活動等でも運用できるようなシステムを持っており、『ありとあらゆる環境下をゲームとして捉える』事が可能になっています」
瀬川の発言を聞き、周囲がざわめき始める。猛反対を即座にするようなリアクションはなかったが、ざわめきが収まるのには少し時間がかかった。
「皆さまの不安もごもっともです。この技術は、一歩間違えれば軍事兵器にも転用が可能であり、最終的に戦争やテロ活動に応用がきくと言っても過言ではありません。しかし、本来のダイナマイトが生まれた理由を考えれば、ARシステムが別用途への転用が可能である事もご理解いただけるでしょう」
そして、瀬川は設計図の次に何かの文章を映し出す。これは、超有名アイドル商法が将来的にすべての世界を掌握するという事が書かれているホームページの記事だった。
「信じられん」
「以前に超有名アイドルの芸能事務所から出資の申し出があったが、こういう裏があったのか」
「超有名アイドルが全世界を征服するとは―」
「しかも、我々の世界ではなく全てのフィクションを含んだ世界を思いのままにできるとは、話が飛躍しすぎている」
「君は本当に超有名アイドルの全世界制服が起こると本気で考えているのかね?」
こちらに関しても予想はしていたが、想定内と言う反応だった。
「世の中に絶対はありませんが、近い将来に起こる可能性は否定しません」
瀬川の目が真剣になった。それ程に超有名アイドルのマインドコントロールとも取れるような世界征服を許さない―という意思の表れだろう。
「個人で不満を爆発させ、それが事件に発展し犠牲者が出る事は避けるべきなのです。それが『超有名アイドルを有名にする為』という理由だった場合、他のコンテンツにも影響を及ぼすのは火を見るよりも明らかです」
次に映し出された映像はARアーマーとはよく似ているような物だが、実際には違う種類のアーマーである。
動画はアカシックレコードのデータベース内に入っている物で、超有名アイドル商法打倒の為であれば承諾の必要なく使用する事が出来る。
「これらの動画は、どのように撮影されたのか?」
クマの着ぐるみを着た人物が唐突に質問をする。しかも、議長席やスタッフ用のスペースでもなく、パイプ椅子の並ぶゲストスペースからだ。
「動画の撮影方法は企業秘密ですが、善意の投稿であるとだけ言っておきましょうか。アカシックレコード自体、そうしたデータが目まぐるしく更新されている世界なのです」
この話を聞き、再び周囲がざわつき始めた。目まぐるしく更新されるデータ、それがアカシックレコードの正体なのか?
「この動画で使用されている物はARアーマーではないようですが、どのような技術でしょうか? ロケテスト動画の時と明らかに技術も違うように感じ取れます」
次に質問をしたのは、パイプテーブルの特別席にいる男性だ。この人物は動画投稿サイトでも有名な生主で、今回は特別に招待されたのだと言う。
「ロケテスト動画のARアーマーは、この技術をはじめとして色々な設計図から改良を加えて、この時代に合う物を完成させました。今の動画に登場している物は、強化型装甲と言う更に別な物です。詳細に関しては、今回は関係がありませんので省略する方向でお願いします」
ロケテスト動画のARアーマー、それは他の世界で使用されているガジェットをこの世界で使用出来るようにチューニングされた物だと言う。そして、それらは強化型装甲をはじめとした他の世界の技術が使用されている事も判明した。
「超有名アイドルファンは、ファンタジー世界で言うような海賊や魔王軍に例えられる世界もあります。このような世界が出ているという事は、ファンのモラルが完全に崩壊したという証拠です」
映像の方は動画であり、超有名アイドルファンによる悪行の数々が映し出され、それに立ち向かうのはARアーマーのような物を装着した女性アイドルやコスプレイヤー。これが、アカシックレコードの映像なのだろうか?
「君は、何をセイバーロードで学ばせようと言うのかね?」
この質問を投げたのは、今まで話を聞いていた西雲颯人だった。議長席にいる訳ではなく、ゲスト席でサングラスをかけて見学をしていた。どうやら、覆面調査員のような立場で今までの様子を見ていたらしい。
「超有名アイドルファンのような、自己利益の為ならばどんな事でも行うような存在を生み出さない為の、コンテンツマナーを学ばせるのです。その為のARゲーム、ロードデュエルを提案します」
西雲の質問に答える瀬川、それを聞いた西雲は急に笑い出したのである。自分から質問をしておいて、出した答えに対して馬鹿にしているのか?
実際には馬鹿にしているという意味で笑った訳ではなく、それは彼が放った一言にも込められていた。
「面白い事を言う。自分も賢者の石を求めるかのような最近のコンテンツ業界には嫌気が刺していた。それを打開する為に、あえてゲームを利用した学園都市を作ると言うのか」
西雲の目は本気だった。彼女のような発想こそ、セイバーロードで求めていた物だったのかもしれない。
こうして、瀬川をサポートアドバイザーとして起用、学園都市群セイバーロードは加速度的にプロジェクトが進むという展開を迎えた。そのスピードは、西暦2013年1月の地点で80%と言われている。
「まさか、ここまでのハイスピード開発が実現できるとは」
運営スタッフも、このように驚く声が多かった。その一方で『アカシックレコードに頼り過ぎている』という発言も出ている。これに関しては瀬川の方も否定はしていない。
「ハイスピードなのは、ロードファイトをはじめとしたARゲームのデータを流用しているからです。アカシックレコードの技術を使用している部分は否定しませんが」
瀬川の方もアカシックレコードを積極的に使用する事に関しては不安があり、これによって新たな争いが起こる事を考えていたからだ。
2013年10月のチート技術を利用した超有名アイドル勢の襲撃、それは瀬川が懸念していた事が現実になった瞬間でもあった。この事件に関しては、スクールブレイカーが《全てを駆逐したとネット上で言われている》。
【超有名アイドル勢を退けたのは事実だが、一部で取り逃がした物が存在する。それが、後のガーディアンを―】
【超有名アイドル勢を駆逐したのは事実としても、BL勢等はスルーしているという話もある】
【果たして、スクールブレイカーは超有名アイドル勢を駆逐出来たのか?】
ネット上では色々な説が浮上しているのだが、この件に関しての公式見解はセイバーロード側からは一切発表されていない。
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西暦2016年4月9日午後6時、ネット上のつぶやきは通常放送されているアニメがメインになっている。他の番組は全てセイバーロード関係の番組になっているのが、アニメの実況に走る原因だろう。
【民放は1局、国営も1局、UHF局は置いておく。一言言いたいのは、特番が多すぎる】
【重要法案成立等で特番を組まれるのも問題だが、一部エリア限定のセイバーロードを全国ネットで流す必要性があるのか?】
【超有名アイドルの宣伝のような物か?】
【こうなってくると、日本は超有名アイドルが支配している国と言う印象を海外に持たれるのも時間の問題だ】
【それだけではない。超有名アイドルとBL勢は、間違いなく黒歴史とも言える存在になる。それはアカシックレコードにも書かれている】
【アカシックレコード?】
【アカシックレコードだと?】
【アカシックレコード、一体何だ?】
唯一、アニメの実況ではなくセイバーロードの特番を実況していたつぶやき。そこではアカシックレコードと言う単語が出た途端に動揺をはじめ、遂には同じ単語が1000近くつぶやかれる事態となった。
同刻、真っ暗と言う訳ではないがセイバーロードのエリア内では特殊なライトが点灯し始める。これはLEDの一種と言う事らしいが、実際にどのような理由で点灯したのかは不明だ。
「夜戦か。まさか、このような流れになるとは」
メットを外し、息を落ち着かせていたのはクー・フー・リン。他のガーディアンメンバーでネーム度と呼ばれるメンバーは半数近くが運営によって拘束されたという話がネット上にも拡散している。
「まさかガーディアンのスパイが存在したとは予想外―」
何かつぶやこうとスマートフォンを取り出してメッセージの入力を行おうとしていたのだが、スマートフォンがジャミングで使用不能になったのである。これが意味しているのは、白銀の堕天使が姿を見せた事だ。
『残念だが、存在しているのはスパイだけではない』
その一言と共に姿を見せたのは、巨大ロボットである。全長が10メートル近くという大型セイバーアーマーの開発は進んでいるのだが、トライアルのみで実際に投入された形跡はない、はずだった。
「お前は、白銀の堕天使―!」
クー・フー・リンは慌ててバイザーを被り、背後を振り向く。あの巨体による一撃を喰らったらガジェット破損だけでは済まないだろう。
『ガーディアン、お前達が行っている事は到底認められるような事ではないだろう。その力はデウス・エクス・マキナに匹敵する』
巨大ロボットのヘッド部分が変形し、そこから顔を見せたのはプリンシパリティだったのだ。
「貴様、アルケーか!?」
クー・フー・リンは、自分が使用する物とは別のハンドガンガジェットで応戦をするのだが、大型ガジェットである《プリンシパリティ》には全く効果がない。
「アルケーと言う呼び名自体は、自分も気持ちのよい物ではない。ここは―」
『速攻で決めさせてもらおうか!』
プリンシパリティはクー・フー・リンが攻撃の意思を見せたのと同時に、戦闘モードへシフトした。先ほどのヘッド部分が再び変形し、プリンシパリティが戦闘態勢に入る。
戦闘態勢に入った次の瞬間、右腕が変形し、シールドと組み合わさって大型のパイルバンカーが展開された。その後、クー・フー・リンが大きな衝撃を受けて、20メートル近く吹き飛ばされる。
「馬鹿な。あれだけの衝撃なのに、周囲の建物はノーダメージなのか?」
『お前は勘違いをしている。これは、あくまでもARゲーム。これが現実の戦争かテロとでも思っていたのであればお笑いだな』
「吹き飛ばされたのは事実なのに、これでは―」
クー・フー・リンは何かをプリンシパリティに向けて訴えようとしたが、その途中でARアーマーの機能が停止し気絶する。
『お前達がセイバーロードをMMORPGだと考えていたのと同じように、別の勢力が違う解釈をしていた。そのぶつかり合いこそ、別勢力の狙いだという事に気付かなかったのか?』
何かの核心に気付いていたかのような趣旨の発言をするプリンシパリティだったが、彼の声は残念ながらクー・フー・リンには聞こえていない。
『この世界を操っているのは神なのか、それとも人間なのか』
プリンシパリティの意味深な発言、それは超展開とも言えるような流れを生み出すフラグになるのか―。
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