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第11話『解放! アガートラーム』

 ガーディアン騒動が起こる前まで2ヶ月程さかのぼった2月上旬の某日、学校の授業でもネットマナーを扱う題材がいくつか存在する中で、ガーディアンを題材にした人物が存在したという事が一部のネットスレで話題になっていた。

『ガーディアンはネット住民による集合体、この学園都市群セイバーロードを後押ししたといっても過言ではありません』

インカムを付けて教壇に立っているのは、30代より少し若い白衣を着た男性だった。彼は特別講師と言う事らしいが、この教室での講義予定には入っていない。彼の話によると、本来担当のはずだった教師が別の講義が長引いて来られなくなったからという事らしいのだが、信用できるのかが怪しい。

『彼らの行動は、興味本位でマイナー作品をメジャーに押し上げ、BL勢や超有名アイドル勢にも敵対するような某所の上位クラス住民と似たような印象を抱くでしょう』

『しかし、彼らが最終的に到達しようと考えているのは《裏チャートを表へ浮上させ、今の表チャートを黒歴史化》することです!』

彼は黒歴史という部分で教壇を軽く叩き、まるで何かに注目をさせようという気配を見せるように感情をむき出しにガーディアンを批判する。そして、教壇を叩く音で居眠りをしていた生徒も起きたのだが、彼が指摘をするような気配は一切ない。

『確かにガーディアンの作りだした学園都市群におけるネットガイドラインによって、つぶやきが安易に炎上をするような事件も、アフィリエイト系まとめサイトによる誘導炎上に代表される事件は軒並み減りました』

『これによってネットに平和が取り戻されたと考えるのは、大きな間違いと言っても過言ではありません! 我々はガーディアンの実験台として利用されているのです』

彼の言動を聞く限りでは、ガーディアンはネットガイドラインを生み出し、それによってネット炎上等は減ったと説明する一方、彼らは大きな間違いをしているとも指摘する。

『結論から言いましょう。学園都市群セイバーロードは、ガーディアンによって生み出されたリアルMMORPGと言っても過言ではない! そして、運営が厳重封印しているガジェットこそがチート兵器であると』

この発言で講義の方は終了している。もしかすると、彼は『ガーディアンやセイバーロード運営こそが敵対するべき存在』とも言えるような…。


 この人物が代理で担当した講義に出る予定だった人物は、意外な事にプリンシパリティだった事が他の講義を受けていた人物等の発言から明らかになった。ただし、この時に使用した名前は偽名であり、プリンシパリティと判明したのはガーディアン騒動が起こってからだった。

【そう言えば、あの講義に出ていた人物、見覚えがあったな】

【ガーディアンと言う概念を否定し、超有名アイドルこそが神と断言するかのような発言―間違いないだろう】

【まさか、この人物がフェンリルだと言うのか?】

【そうと確定出来る証拠はないが、覆面をしないで姿を見せたという点も疑問に残る】

ネット上で彼の講義動画を見た者たちは、揃ってある人物の名前を思い出す。その人物とは、超有名アイドルプロデューサーをしているフェンリル。しかし、彼は本来であれば狼を思わせるような覆面をしており、講義に姿を見せた人物はフェンリルの偽者と断言する人物もいた。

【彼が出演するテレビ番組では全て覆面をしている。例外があるとすれば、番組初期であのアイドルグループがブレイクする前だけだ】

【確かに一理ある。その一方で、あの覆面には特徴があるのは事実だ】

【あの狼の覆面は市販品であるのは間違いない。それを踏まえると、誰もがフェンリルになれるという事にもなるが―】

【どちらにしても、あの言動で狼の覆面をしていれば完璧だったが】

【確か、あの学校では覆面は禁止だったはず】

唐突な一言が、周囲に影響を及ぼす事は今までにもあった。今回も、最後につぶやいたコメントが周囲に影響を与えようとしている。

【そう言う事か。全ては超有名アイドル側の罠だったのか】

【超有名アイドルは、自分達が気に入らない勢力を物理的にではなく別の手段で排除しようとする。今までの例を考えると、セイバーロードへの潜入も同じような手段?】

ガーディアン騒動以前の超有名アイドルのグッズ転売を巡る事件、別のアイドルグループが発表した楽曲が実はゴーストライターによる作品、BL作品を棚から排除して超有名アイドルグッズを並べようとしていたファンが摘発されたケースもあった。

【今までの事件は共通して、超有名アイドルよりも売り上げが上だったという話を聞く。自分達以外がナンバー1になる事を許さず、全力で排除しようとするのが彼らのやり方だ】

【超有名アイドルの過剰介入は、アイドルを投資の道具にしてしまった気配すら感じる】

【そして、日本は超有名アイドルで地球を征服しようとも考えている可能性も否定できない】

【今の政治情勢ならば可能性はゼロではない。逆に反対を唱えようという物であれば、実力行使も起こすだろう―】

これ以降のログに関しては、存在が確認されていない。ガーディアンがログを削除した可能性もあるのだが、その証拠は存在しないのが現状だ。


#####


 西暦2016年4月9日午後2時40分、ネット上がエクスシアに関しての議論が白熱していた頃、ある人物とコンタクトを取っている人物がいた。

「エクスシアの動画、あれは本物よ。出所は不明だけど、釣りやランキング入りを目的としたような物は感じられない」

草加駅近くのショッピングエリア、そこでスマートフォンを片手に誰かと連絡を取っていたのは瀬川榛名である。

『本物? 既に裏は取ってあるのか?』

「裏は既に取っているわ。しかし、そこで騒げば超有名アイドル勢の思う壺。この流れに逆行して何かを掴まなければ、超有名アイドル勢を駆逐は出来ない」

『分かった。ガーディアンとしては、様子を見る方向で調整を行う』

瀬川が一連の会話後にスマートフォンの通話を切り、別のサイトを立ち上げる。そこには、超有名アイドル以外にもBL勢や他ジャンルの動向まで細かく記載されている。まるで、何者かが体験したかのような記述まで存在しているのだが、虚構記事と言う訳ではない。

「アカシックレコード、どうやらガーディアンも突き止めたみたいね。急がなければ、手遅れになる可能性がある」

そして、スマートフォンで何かを呼び寄せるような着信を入れ、パチンコ店の近くまで歩き出した。彼女がパチンコ店に到着した次の瞬間、目の前から姿を見せたのは白銀のコンテナ。これが意味する物、それは―。

「マネージメントオーダー! リミッター解除、《雪風》!」

白銀のコンテナが展開され、戦闘機を思わせる一方でファンタジー色を持ったデザインのセイバーボードが姿を見せる。これが、彼女のセイバーボードなのだろうか?

「瀬川榛名、《雪風》ゲットセット!」

瀬川が叫ぶと同時に何処からか現れたセイバーアーマーが装着、その姿は一昔にリリースされていたFPSゲームに出てくるようなパワードアーマーを連想させる。これが、彼女のセイバーガジェットなのか?

【アーマー装着完了 オーバーリミットウェポン《雪風》起動開始】

メットのバイザーにメッセージが表示、その直後に雪風が発光し、10秒もしない内にエネルギーの充電が完了した。そして、雪風が向かおうとしていた場所は、松原団地方面―。

「エネルギー充電完了、リミッター解除!」

その掛け声とともにセイバーボードが変形し、雪風にアーマーが装着される。原理としてはパワードアーマーの強化装甲と言うべきだろうか。

「あの通信はガーディアン及び他勢力に傍受されていると考えても問題はない。そうなると、自然に次の一手が見えてくる―」

雪風の発進シークエンスに割り込みをして乱入するプレイヤーはいない。雪風に関われば何が起こるのか分かっていたからだ。


 同日午後2時44分、松原団地ではクー・フー・リンが超有名アイドルファンの勢力を撃破している最中だった。

【雪風がそっちに向かった!】

【どういう事だ? 奴もガーディアンだとでもいうのか?】

【分からない】

【分からないって!?】

【雪風はソロプレイヤーに該当する人物だ。上位ランカーでもグループやクランに所属しているのは誰もが知っている情報の―】

【ソロプレイヤーが無所属と決めつけるのは早計だった! 完全に情報戦の裏を突いているぞ】

あるグループが限定的に使用しているつぶやきチャットでは、雪風が向かっているという話を聞いて慌てている様子が分かる。

【バカな! クー・フー・リンがガーディアンのリーダーだったとでもいうのか!?】

このコメントを最後に、チャットの交信は途絶えている。その頃には、このグループが彼によって全滅と言う状態になっていたからだ。

「既に部隊は壊滅した後か。これは運営に報告する必要性がありそうね」

そして、雪風はステルス機能をフル稼働させて戦闘が行われていた区域を離脱した。彼女を追跡は出来なかったが、所属不明のセイバーボードを目撃したという情報はネット上を騒がせた。


 同日午後2時47分、あれだけの大軍勢が数分で壊滅した様子を見ていたネット住民は戦慄を感じる。

「残念だが、ガーディアンを滅ぼす事はお前達では不可能だ」

上位ランカーの一人でもあるクー・フー・リンがガーディアンの隊長格と言う事実、それがネット上で新たな火種になる事は火を見るよりも明らかだった。

【あれが、ガーディアンのランカー】

【あれだけの人物が相手では、通常兵器では勝ち目がない】

【いっそのこと、リアル重火器や刀で対抗するしかないのか?】

【リアル重火器等は銃刀法違反で捕まる。仮に持ち込めたとしても、セイバーロードでテロ事件でも起きれば―】

【それだけで日本が世界から孤立する事になるのか】

【周辺各国からは、日本が世界へ広めようとしている超有名アイドルを巡って色々な誤解が起こっているという話を聞く】

【観光客も集まっているセイバーロードで、超有名アイドルファンが行動を起こせばどうなるのか、ここまで言えば分かるな】

【そう言う事か。超有名アイドルを推進した総理大臣が辞職に追い込まれ、更には関係各所も炎上するのは避けられない】

【超有名アイドル依存に関しては、アカシックレコードでも指摘はされていたが、ここまでの展開が起こるとは思わなかっただろう】

ネット住民が感じた物、それは利益を生むと言うだけで優遇を続けていた超有名アイドル、そのファンがテロ行為を起こせば一大事になるという事に周囲が気づいていない事だった。


 同日午後3時35分、アンテナショップで談笑をしていたバハムートは、エクスカリバーからとある動画を突きつけられた。

「これは、まさか!?」

「見覚えがあるようだな。彼は今、ドミニオンと名乗って超有名アイドルに対して反旗を翻している」

バハムートは先代の顔を見覚えがあった。そして、この動画に映し出されている人物は間違いなく先代バハムートでもあるドミニオン。

「芸能事務所とは言え、一定の利益が入れば色々な税金が引かれ―!」

そこから、裏チャートの話を聞く事になるのだが、その途中でエクスカリバーは何かを思い出したかのように、言葉を止めた。

「何か、知っている事でも?」

バハムートもエクスカリバーが途中で話を止めただけに、気になる所ではあった。しかし、彼はそれ以上の言葉を口にする事はなかった。

「おそらく、連中の目的か何かに直結している可能性がある。この話をすれば、もしかすると他勢力も無関心ではいられなくなる」

そう言い残して、エクスカリバーはアンテナショップを後にした。

「一体、彼は何を言おうと―?」

バハムートはエクスカリバーが去った後に、1つのUSBメモリがテーブルの上に残されていたのを発見する。そして、店の中で見る訳にもいかなかったので、アンテナショップを出た後でメットを装着、ガジェットのUSB挿入口へセットする。

【アカシックレコードにおける超有名アイドルと対抗組織の戦力図】

そのタイトルを見た瞬間、バハムートは背筋が凍りつくような衝撃を受ける。それは、今まで門外不出とも言われていたアカシックレコードの断片だったからだ。

(この情報を、彼はどこで手に入れたのか?)

バハムートは疑問に思いつつも、あるポイントへと移動をする。そこは、先ほどドミニオンが出没したと言われているエリアだ。


#####


 同日午後3時45分、草加市と足立区の間にある一般道路では、超有名アイドル勢力のセイバーアーマーとスクールブレイカーが交戦をしていた。

【このカードも飽きてきたな。それだけワンパターンと言うかテンプレ展開になっている証拠か?】

【それだけ、この両者の敵対関係は相当なものと言える。これがなければ、白銀の堕天使に代表される勢力は生まれなかったに違いない】

【白銀の堕天使か、エクスシアという人物が各地で超有名アイドル関係者をピンポイントで狙う事件があったが、それと関係があるのか?】

【それは間違いないだろう。先ほどのドミニオンと言う人物も、関係があるという話がネット上でも拡散されている】

つぶやきサイトの方でも、この交戦に関してはワンパターンと見る動きがあった。それだけ、ネット上では見飽きてしまったカードとも言える。

「あの武器は、もしかして―」

アンテナショップを出て、しばらく歩いていた辺りでデュエルを見かけたエクスカリバーは何かの違和感を持った。

(彼が所持をしていたのか?)

ビーム刃の展開される装置が付いている事、形状が一般的なARゲーム用ガジェットと異なるパーツ、使用されているのがセイバーロードの管轄内である事から、スクールブレイカーの持っている剣をある物と彼は考えている。

(あれが、アガートラーム―)

アガートラーム、名称だけはネット上だけでも目撃するのだが、現物を目撃した人物が一切いないというARウェポンの一種である。

『これが、スクールブレイカーの実力か?』

『バカな! 超有名アイドルは日本経済を救う唯一無二の存在なのに―』

『スクールブレイカー、お前のやっている事はいずれ憎悪を生み出し、全てを混乱の渦に巻き込む事だろう』

それぞれのセイバーアーマーの使い手の断末魔、それはスクールブレイカーには一切聞こえていない。あえて、彼が言い返す言葉があるとすれば『お前が言うな』と思われる。

「スクールブレイカー、やはり倒すべき相手は彼になるのか?」

エクスカリバーが様子を見て離脱をしようとしていた矢先、エクスシアが超高速でスクールブレイカーに切りかかってきたのである。

『見つけたぞ! 騒動を広げるだけの存在―ネット上の歪み!』

声のする方向を振り向いたスクールブレイカーは、エクスシアが振り下ろしたビームサーベルを右手で受け止める。その右腕を見た彼は何かに驚いてあっさりとビームサーベルの展開を解除し、若干だが間合いを広げた。

『お前がエクスシアか―』

スクールブレイカーのメットから両目が青く輝きだす。そして、右腕にエネルギーを集中させて再び剣を再展開し始める。

『スクールブレイカー、お前の行動は一見して正義には見えるが、本質は超有名アイドルと同じ事をしているに過ぎない!』

エクスシアの言葉に対して、スクールブレイカーは無言を貫く。どうやら、否定も肯定もしないらしい。

『こちらも本気を出させてもらう! エクスシア!』

次の瞬間、エクスシアのバックパックから別のフェザーブレードも展開、更には形状が同じソードビットを5つも展開する。それを見たスクールブレイカーが慌てるような様子は全くない。

(彼が、噂の白銀の堕天使と言う事か―。そうなると話も変わってくる)

エクスシアがソードビットを飛ばしてきたのと同時に、展開させていた剣を解除する。これに関してエクスシアは疑問に思ったのだが、それを言葉にする前に別勢力による妨害が入った。

『白銀の堕天使もいるとは好都合だ!』

『超有名アイドルの時代は終わる! 次はBL作品の夜明けが―』

BL勢力と名乗る彼らは、何かを言い終わる前にエクスシアのソードビットで撃墜された。そして、それから数分後にはスクールブレイカーの姿はなかったのである。どうやら、ソードビットでBL勢力を攻撃しているわずかの間で姿を消したらしい。

(また逃がしたというのか、手に届く場所まで来たというのに)

何かを言おうと考えていたエクスシアだったが、それは心の内に―。そして、エクスシアも事態が深刻化する前に姿を消した。


 同日午後4時、その後もエクスシアの目撃証言はいくつかで聞かれた。そこでは、超有名アイドルファンをピンポイントに襲撃しているという。

『超有名アイドルファンは駆逐する!』

エクスシアとは違う場所で超有名アイドルファンを撃破している人物、それは不知火こと夕雲ほむらだった。ガジェットの方は、自前ではなくレンタルガジェットである日本刀を使用している。

『超有名アイドルが日本経済を救ったというのに、それを駆逐するとは―日本政府が黙っていない!』

ほむらと戦っていた超有名アイドルファンの男性が叫ぶ。彼の言う事にも一理あり、超有名アイドルのCD売り上げの一部が国債の償却に利用されている事実も存在する。

『日本政府は黙認していただけにすぎない。それも、一握りの芸能事務所が政治家を買収するという行為で』

ほむらは次々と無言即殺という勢いで超有名アイドルファンを気絶させていく。そのスピードには周囲の観客や残存勢力も驚きを隠せない。そのスピードに超有名アイドル勢は付いていけていないのが現状だが、それには別の理由があった。

(機体性能が、セイバーロードのエリア内では落ちているのか?)

あるプレイヤーの一人が、このような事をつぶやいていた。セイバーロード外とセイバーロード内では能力が違う事を思っていた物で、その能力差は10倍にも及ぶ。

『超有名アイドルと言うチートこそ、日本経済に存在不可欠な物だ! それ以外の力なきコンテンツは―』

鎧武者を思わせるセイバーアーマーを装着した男性がほむらに突進してきたのだが、何かの続きを言おうとした所で何者かの狙撃を受けて倒れた。

「この光景、まさか―」

この場面に偶然遭遇していた西雲颯人、彼は周囲を見回して怪しい人影を目撃しなかったか運営にも連絡をする。しかし、そのような反応はないという一点張りの回答が返ってきた。

 同日午後4時2分、ほむらが超有名アイドルファンと交戦しているエリアより1キロ離れたショッピングモール、その屋上ではドミニオンが大型バスターライフルを展開して狙撃をしていたのである。

『これで2度目か―』

彼が意味深な言葉をつぶやくと、次の瞬間にはバスターライフルは各種パーツに分離して大型シールドにも似たガジェットへと変形していた。そして、それを両肩に装着して別の場所へと向かった。

(あれは、白銀の堕天使のパーソナルエンブレムか)

セイバーロード運営の男性が目撃した物、それは白銀の翼に堕天使をモチーフにした鎧騎士をベースにしたエンブレムだった。ちなみに、このエンブレムはセイバーロードのクラン等で届け出がある物ではない。

(彼らもアカシックレコードを知る人物の組織なのだろうか?)

運営の男性は、そんな事を思いながらもドミニオンに関しては特に報告はせず、数分後に見つけた超有名アイドルファンによる初心者狩りとも言えるロードデュエルを摘発して報告するにとどめた。


 同日午後5時、関東地方のニュース番組ではセイバーロード内で起きた事件には特に取り上げず、別の話題で持ちきりだった。

『先ほど、都内にある有名アイドルの芸能事務所が家宅捜索を受けたようです―』

最近になってCDチャートでも話題になっていたアイドルグループの芸能事務所が、ある理由で家宅捜索を受けているという物である。このニュースは、セイバーロードでは一切報道されていない。

「こちらは北千住にある芸能事務所が入ったビルの前ですが、複数の警察関係者が資料を押収して運び出している模様です。今回の家宅捜索は3月に発売されたCDで、別の超有名アイドルにも楽曲を提供しているA氏の―」

その内容とは、家宅捜索を受けたアイドルグループの3月にリリースしたCD、その楽曲を作曲したA氏がゴーストライターなのではないか、と言う匿名の通報が警察に入った事が原因らしい。

『今回の事件は超有名アイドルのファンによる狂言と言う可能性はあるのでしょうか?』

スタジオ内の男性アナウンサーが、北千住で取材をしている女性記者に質問をする。実際、このような超有名アイドルファンによる狂言等は今までにもあった。実際、営業妨害として逆に摘発されたケースもニュースで報道された位である。

「実は今回の事件に関しては狂言の類ではなく、別の事件で既に逮捕された自称作曲家のプロデューサーを調べている際に浮上した物で、警察でも違法楽曲の流通させている―」

しかし、今回に限っては別の事件を調べている際に浮上した物で、実際に証拠も存在しているのだと言う。

【ゴーストライターと言っても、ピンとこないな】

【超有名アイドルの楽曲自体、色々な曲をバラバラにして、それをパズルの要領で組み合わせているだけと言う話を聞く】

【それで単純にミリオンが量産されているからこそ、一部の反社会的勢力が超有名アイドル商法を悪用してオレオレ詐欺や劇場型詐欺に流用しようとした】

【それだけで済めばいいが、別のアイドルや超有名アイドルとは無関係のジャンルに飛び火してしまうという事も避けられない】

【日本政府が超有名アイドルに規制をしなかった結果が、これだと言うのか】

ネット上では、反社会的勢力に超有名アイドル商法が悪用されている現実を見て、更なる規制や超有名アイドルその物を追放しようという動きにもなろうとしていた。

「このままでは、アカシックレコードと同じ末路をたどるだろう。それだけは断固として阻止をしなくてはいけない。過剰介入と言われようと、トータルバランスを崩壊させる事はあってはいけない」

つぶやきサイトのタイムラインをアンテナショップで見ていたクー・フー・リンは、あるプランをガーディアンメンバーへと一斉に指示する。

【それは反対だ】

【トータルバランスだけではなく、現状の不利な状況まで悪化する】

【それでは、白銀の堕天使とやっている事が同じになる。それだけは、さすがに受け入れられない】

【それを行えば、今度は運営がガーディアンの存在に対して更なる不信感を抱くだろう】

【ガーディアンへ情報提供している一件が他の勢力に知れ渡るのは良くない】

彼が送ったプランに反対する者は半数以上だった。それは百も承知かもしれない。

【そこまでの状況になったという事は、元に戻す為にも反撃するしかないのか】

【今のタイミングで、超有名アイドルに消えてもらうと困る】

【ゴーストライター事件は別のニュースに差し替えたが、このような情報操作がこれからも通用するかは不透明だ】

一方で、これ以上の静観は逆にセイバーロードの運営等にも怪しまれると考える人物もいた。それを踏まえ、クー・フー・リンは決断する。


《エクスシア、ドミニオン、プリンシパリティの3名及び白銀の堕天使をガーディアンの敵対勢力と認定し、第1種撃破対象とする》


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