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学園セイバーロード  作者: 桜崎あかり
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第1話『学園都市群セイバーロード』

※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、フィクション扱いでお願いします。あくまで虚構という方向で…。


※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。


※イメージレスポンス、挿絵等も随時募集しております。プロフィールにも書いてありますが、特に早いもの勝ちではありません。お気軽にお問い合わせください。


※第1話に関してはタイムラグはありましたが、pixivと同日投稿に。2話以降は「小説家になろう」を先行にするかを含めて検討中です。


※誤字修正(10月23日午前12時18分付け):発信→発進

 西暦2006年、埼玉県では大規模な都市再生計画が密かに動き出していた。


市民にも悟られないようにする為、ダミーの会社を存在させてまで進行していた計画に対し、東京をはじめとした関東地方が揺らぎ始める。


計画の名前は『学園都市群セイバーロード』、複数の学校や商業施設等を含めて全てを統合して管理体制を含めて簡略化を図ろうという物だった。


この計画に必要な予算は1000兆円を超えるような規模であり、それだけの資金を埼玉県のみで何とかするのは不可能と判断、計画は中止に追い込まれる。


そんな中、とある芸能事務所が素性を明かさない事を条件に500兆円という莫大な資金を提供、都市計画は順調に進む…はずだった。


その芸能事務所の正体とは、日本でもっとも有名な超有名アイドルグループが所属する芸能事務所だったのだ。


それを知ったプロジェクトメンバーは、超有名アイドルによる日本支配計画をネット上で知り、芸能事務所を強制的にプロジェクトからはずしたのだ。


わずか半年で計画は再び資金難を迎えて、中止危機となるのだが…これを聞いた別の超有名アイドル事務所が資金提供を申し出る。


今度は大丈夫と思われていたが、こちらも以前の超有名アイドルと同じような野望を抱いている事をネットで知り、こちらも強制的にプロジェクトからはずされる。


 西暦2007年1月、今度は大手のソーシャルゲームメーカーが都市計画を拾い上げた。しかし、2年後の2009年に色々なトラブルを抱えて、プロジェクトを外される。


最終的にプロジェクトのスポンサーが固定されたのは2009年4月に資金提供を申し出た、大手ゲームメーカーだった。


ゲームメーカーと言う事で警戒をしていたプロジェクトメンバーだったが、資金提供は100億円と他の企業と比べると小さいものだった。


それでも、彼らが持っているノウハウはプロジェクトに重要だと考え、歓迎する方向になった。


それから数年の歳月が経過した西暦2013年10月、突如として超有名アイドルと思われるチート技術を使った集団がセイバーロードに姿を見せる。


しかし、その大軍勢を1人で駆逐した人物がいた。その人物とは…。


#####


 西暦2016年4月1日午前9時58分、草加市内にある高校の教室、そこでは日本史の授業が行われていた。生徒の方はホワイトボードに書かれているポイントを、ノートへメモする熱心な人物が多いように思われる。

『これは【学園都市の真相】という本の一部抜粋である。実際、学校の日本史でもセイバーロードに関する記述は存在する』

教壇に立っている彼が教えている科目は、飛躍しているような内容もあるが日本史で間違いない。しかし、彼は寄り道や蛇足のような事を話す事が多い事でも有名だった。

『その一方で、一部の学校はセイバーロードの記述自体に不信感を抱き、該当する日本史の教科書を採用しないという話題もニュースで取り上げられた事があった』

彼は学園都市群に関しての歴史に関して違和感を抱いていた。東京で学習した日本史と教科書の内容が違うという事もあるのかもしれない。

『それは、過去に歴史認識の相違で議論された時と同じ流れである。どうして、日本は超有名アイドルを支持し続けるような国になったのか? 原因は色々とあるが、政治家が芸能事務所から裏金を受け取っていた説が有力だろう』

超有名アイドルバブルで莫大な利益をあげた一部芸能事務所や投資家を名乗るアイドルファンがピックアップされ、他のジャンルは規制によって駆逐していくという考え…それを一部の裏金を受け取っていた政治家が支持する。そう言った世界になっていく事を、彼は嫌っていた。

『一連の真相に関しては定かになっていない部分がある。一説には、超有名アイドルの所属事務所から賄賂を受け取り、それによって超有名アイドルが有利に…』

しばらくしてチャイムが鳴り、授業が終わった。一部の生徒は既に別の学校へと向かう準備をしている。


 午前10時、この教室にとどまる生徒は特にいないようだ。それどころか、別の生徒が授業を受ける為に教室へ入る準備をしているような流れも存在している。

「今日の授業は、ここまで。続きは明日にでも…」

メガネをかけた30代位の男性教師が、インカムの電源を切って教室を後にした。生徒数は30人強程、生徒の年齢は10代後半から20代前半がメインだが、かなりバラバラのように見える。

「この人の日本史は大学のソレを思わせる気配もする…。やはり、生徒の年齢層がバラバラなのも理由の一つだろうか?」

この生徒のように、授業の様子に関しては大学の講義を思わせる気配さえ感じた生徒もいる位だ。

「終わったか。単位を取る為とはいえ、この授業は退屈でいけない。体育とか課外実習を取るべきだったな」

「そう言うなよ。セイバーロードで単位を取る為には、最低限のメニューを取らなければいけない。日本史も、その一つだ」

教師が出たタイミングで、ブレザーの制服を着た男子生徒2人が雑談を始める。

「確か、日本史、国語、教養辺りが必須項目か。数学がない辺りは助かったというべきか?」

2人とは違う男子生徒が話に加わる。彼の制服は学ランだが、この学校の生徒で間違いない。

「しかし、それらの必須項目は〈とあるメニュー〉を隠すためのカムフラージュと言われている。それが…」

男子生徒の一人が、カバンから取り出したのはタブレット型のパソコンに似た物である。しかし、市販されている物とは一回り小さい。

「セイバープレートか。確か、セイバーロードも単位が取れる学科だったな」

学ランの人物はセイバープレートに見覚えがあるらしい。そして、セイバーロードが単位を取る事が可能な学科である事も知っていた。


 さまざまな機能を一か所に集中させた大規模学園、その名は〈学園都市群セイバーロード〉。学園計画自体は2006年から立ち上げられていたが、本格的に起動したのは最近の事だ。それまでは完成された部分だけで暫定的に運営をしていたのである。


主な機能は、小等部、中等部、高等部、大学に該当する専門学部、更にはセイバーロードという特別学科、その他にもアミューズメント施設や商業施設まで存在している驚きの学園都市なのだ。


中等部は30位の学校が存在するが、月曜はA学校に行き、火曜はB学校へ…と言う事も可能。それ程に斬新で自由なシステムを持つ学園都市である。


どのような目的で生み出されたのか、それに関して研究する人物もいるのだが…。


一方で、学園都市群に関しては存在に疑問を抱く個所もあった。ネット上でも、疑問点だけを列挙して学園都市を炎上させようとする勢力が存在する位である。

【これほどの規模を持った学園を作って何をしようと考えているのか?】

【学園都市に、このようなシステム(ロードデュエル)が必要なのか?】

【超有名アイドルをPRする為だけのステージ】

このような意見以外にも、多数のコメントがネット上でも書かれていた。


しかし、学園の真相を性格に知る人物がいるかと言われると疑問が残る部分がある。偽の情報が巧妙に混ぜられている為と言うのもあるのかもしれないが…。


#####


 4月1日午後1時、学園都市群セイバーロードでは〈あるゲーム〉が展開されていた。その名をロードデュエルと言う。


ロードデュエルでは、セイバーガジェットと呼ばれる武装を装備し、セイバーアーマーと呼ばれるアーマーを装着したプレイヤーの姿が何度か目撃されている。学園都市の目玉とも言える存在になっており、海外観光客を目当てにしたツアーが存在する位には人気を獲得していた。


アーマーのデザインは、それこそ十人十色という位のバリエーションが存在し、セイバーガジェットは道路から射出されたり、近辺に置かれているコンテナから発進したりするケースが確認出来るのだが…。


ロードデュエルが行われている場所、それは学校の外…高層ビルの立ち並ぶ街のど真ん中だった。そして、ロードデュエルを一種の課外授業と判断している生徒も何人かいるのは事実である。


《このロードデュエルこそ、学園都市群セイバーロードを象徴する存在であり、学園都市における大事な観光資源にもなっている》

【大事な事なので、2回言いました的な何かか?】

【ロードデュエルは本当に必要なのか?】

【学園都市の収益は半分以上がロードデュエルによる物と聞いている】

ネット上では、このようなやり取りが行われるのも日常茶飯事で、ロードデュエルスレ専用のガイドラインがある位に広まっている。


 ある市街地エリア、そこでは複数のセイバーアーマーが特定の1機を取り囲むような状態となっている。

《奴を止めろ!》

〈あのスピードの相手を、どうやって止めるか分からない。どうすればいい?〉

《アレは無視して、周囲のダークビジョンを撃ち落とせばいい》

無線でそんなやり取りが展開されている。ダークビジョンの撃破スコアを競うのがロードデュエルの基本ルールであり、他のチームも同じ目的で動いているのだ。

〈駄目だ! やられる!〉

赤い右肩のセイバーアーマーが機能停止したと思ったら、次の瞬間には周囲を取り囲んでいたと思われる同型機が大量に機能停止をしていたのだ。その数は20機を超える。


 騎士を思わせるような絢爛豪華なデザインの一方で、カラーリングは黒をメインとしている矛盾した存在…機能停止や大破したセイバーアーマーの中心に立っていたのは、スクールブレイカーという学園内でも警戒されているセイバーアーマーだった。

「あの時と同じだ」

スクールブレイカーを遠くから目撃していたのは、黒のセミロングヘアーで右目が隠れ、身長が167センチ位の学園指定のブレザーを着た女性だった。

「スクールブレイカー、彼の目的は一体…」

彼女の名は秋雲あきぐもほむら、別名は不知火しらぬい。何故、彼女は別名を持つのか、その理由は後ほど明らかになる。


 スクールブレイカーは、別の場所でも有名な存在だった。数台のカメラが彼の映像を映しているのだが、その目的はカメラの所有者によって異なる。

『消えた?』

ほむらがいた場所とは別の高層ビル内、スクールブレイカーのロードデュエルを中継していたと思われるアナウンサーの男性は、目の前での光景に驚いていた。

『テレポートに代表される技術も確立されていないのに、目の前にいたスクールブレイカーが消えるはず…』

カメラには映っていなかったスクールブレイカーだったが、カメラから目を離した一瞬だけは見えていた。そして、気がついた頃には姿を消していたのである。どのような技術を使用したのかは不明だが、特殊なフィールドか何かでカメラに画像を映さないようになっていたとする説が有力のようだ。

『一体、何が起こっているのか?』

そして、アナウンサーも別の場所へと移動を開始した。スクールブレイカーの姿も消えた為である。


 その頃、ほむらはある人物から連絡が入り、その人物と会話をしていた。

「―分かった。すぐ、そちらに向かう」

通信を切った後で、ほむらは別エリアへと向かった。別エリアへは徒歩で向かう訳ではなく、近くにある特殊な端末にカードを接触させる。

《認識完了しました。セイバーボード〈スサノオ〉、コントロールチェック―》

女性のシステムボイスが流れた後、周囲に設置されたインフォメーションボードから別のメッセージが画面に表示され、それが急に流れ始めたのだ。


【セイバーボードが発進します。半径100メートル以内には立ち入らないで下さい】


 20秒後、目の前の道路がハッチへと変化し、そのハッチから現れたのはSFに登場するような戦闘機を思わせるデザインのボードが固定されたカタパルトだった。これには周囲の一般人も驚いているが、これが学園都市での日常茶飯事とも言える出来事なのだ。

「問題はないようね」

ほむらは端末に読み込ませたカードを右腕に装着しているセイバープレートにセットし、ボードの自動ロックを解除する。

《セイバーボード スタンバイレディ》

先ほどと同じシステムボイスが端末から流れ、カタパルトが東の方角へ回転し、ゆっくりと変形していく。ほむらがセイバーボードの上に乗ると、彼女の着ているブレザーの制服が光り出し、何かの青い光がボードの方へと流れているように見えた。どうやら、これがセイバーボード専用のエネルギーとなるらしい。

《セイバーボード ゲットセット》

エネルギーが充電された後、ほむらの制服も何かが転送されたかのように変化し、瞬時にしてSFに登場するようなエッジの効いたデザインのスーツ姿に変化していた。学園の制服にはスーツ装着機能も付いているらしい。

「ゲットライド!」

数秒後にほむらが乗ったボードがカタパルトから発進、彼女は目的地へと向かった。


 午後1時20分、別のエリアでは他のロードファイトを観戦している人物が何人かいた。その中に身長170センチ位で背広を着た女性という、周囲とは異彩を放つ人物がいた。

「あれがネームドのセイバーロードか。他は何度も見た事があるが、あのタイプを見るのは初めてか」

周囲の人物が彼女に近寄ろうとしないのには理由があった。彼女は特殊なバイザーで素顔を隠している事である。素性の分からない人物には手を出すなという法律がある訳ではないのだが。

(それにしても、あのデザインには引っかかる部分がある。調べてみるか…)

彼女は手に持っていたセイバープレートでデータベースへアクセスをするのだが、該当するデータは全く見当たらない。

《該当データがありません》

画面に表示されたエラー文章を見て、彼女は不審に思った。基本的にはセイバーロードで使用されている各種装備はデータベースへ登録されているからである。これには、不正改造された装備が出回る事を防いだり、海外へ兵器転用をされるのを防止する目的があった。

「あのネームド、何かあるわね」

そして、彼女は該当エリアを後にした。データベースが使えない以上、直接乗り込むしかないと考えたからだ。


 同時刻、ほむらは周囲の様子を警戒しながら該当エリアへと向かっている。しかし、敵の存在も確認出来ず、目撃するのは一般市民ばかりだ。

「こちら不知火、どの辺りにいるのか教えてほしい」

『こちらの場所は、カジュアルショップの近くと言えば分かるわ。位置情報は既にナビへ転送したから、ボードが自動的に誘導してくれるはずよ』

「今の場所から急いでも…5分はかかりそう」

『5分なら問題はないと思うわね』

その後、ほむらはメットのバイザーシステムを起動させ、ナビゲートモードをONにする。しばらくしてマップが表示され、目的地までの距離関係が即座に計算された。その時間は5分である。

「もう少し、耐えられる?」

『特に問題はないわ。敵はダークビジョンだけ、ライバルチームも確認されていない。近くで行動しているチームも、距離に換算して5キロ以上の位置にいる』

「分かった。あなたに任せる。あとの事はお願い、松鶴」

ほむらが連絡していた相手、それは同じ部隊に所属している松鶴しょうかくイオリだった。彼女は女性でありながら、セイバーロードのランカーと呼ばれる存在になっており、第1小隊の隊長も務めている。

『一般市民にはダークビジョンが見えないから、それを踏まえて行動してね』

「分かっているつもりよ」

そして、ほむらは該当するエリアへと急ぐ。セイバーボードに関しては飛行タイプも存在するが、彼女が使用するのはホバータイプである。スピードは出るが、交通ルールには従わなくてはならない。

《該当エリアでのセイバーボードの速度は時速30キロに制限されています》

バイザーに警告メッセージが表示され、速度も強制的に30キロ以上の速度は出ないようになっていた。どうやら、周囲を走っている自動車の速度に合わせた仕様になっているらしい。

「これが第1種警戒モードであれば、速度制限のリミッターも解除されるのに。あるいは、飛行型ボードを…」

そんな事をほむらはつぶやく。しかし、ない物をねだる訳にはいかないのでナビを利用した最短ルートで先を急ぐ事にする。


 同日午後1時20分、別の学校にある教室内では…。

「何て事だ。また被害が拡大したのか?」

30代と思われる司令官の男は、彼らの報告を聞いて驚いていた。慌てている様子こそはないが、その報告は悪いニュースだったのは間違いない。

「スクールブレイカー絡みだけでも50件以上、半年前は沈黙をしていたのですが…」

小隊長の報告によると、スクールブレイカーは今月及び先月後半になって活発に動きだしたらしい。そして、そのターゲットは一部勢力に限定される。

「奴をスルー出来れば問題ないのだが、別の勢力がスクールブレイカーに仕掛けている以上、こちらに飛び火している」

彼らがスクールブレイカーに攻撃を受けている理由、それは彼らとは違う勢力がスクールブレイカーに攻撃を仕掛け、その影響だと言うらしい。

「どうしますか?」

小隊長の隣にいた隊員が司令官に質問をする。すると、司令官からは予想外の回答が出てきた。

「別勢力が仕掛けるというのであれば、こちらも便乗してスクールブレイカーを叩く」

司令官の一言は、これからの展開を予感させる物だったのは間違いない。


 同日午後1時30分、目的地に到着したほむらだったが、周囲の状況は若干悪化しているように見えた。

『まさか、別の第3者に通信傍受されるとは思わなかった』

松鶴の使用しているセイバーアーマーは、パワーローダーを連想させるような重装タイプの物である。それでも、左腕が中破、3連装キャノンがエネルギー切れ、脚部装甲も大破という状態で、戦闘を継続している方が奇跡と言う状態だ。

「第3者? 学園都市とダークビジョン以外で勢力があるとすれば…!?」

ほむらは何かに気付いた。ダークビジョン以外はクラン別でチーム名称が異なる場合もあるが、基本的には所属が学園都市になる。つまり、この場合の第3勢力を示すのは一つしかない。

『それこそあり得ないわ! 超有名アイドルは、スクールブレイカーによって駆逐されたはず。それは既にニュース等でも伝わっているのは知っているでしょ?』

「世の中に絶対と言う物は存在しない。それによって、完全自滅したBL勢力と言う例もあった。だから、今回の事件に関係しているのは」

『ちょっと待って! BL勢力は完全に黒歴史となったはずよ? それが、再び活動を始めたっていうの』

「活動を始めたという事を確認出来る手段はない。しかし、超有名アイドル勢力が学園都市へ介入しているという事が意味するのは、それを潰そうという勢力がいる事」

『別の勢力って、ジャンル毎という事?』

「そうとは限らない。一時的に1つのBLという勢力で超有名アイドルを潰そうと考えている可能性もある」

『そこまでして超有名アイドルは何を得ようというの?』

謎の生命体と機械が融合したような外見をもつダークビジョンを撃破しながら、ほむらと松鶴は議論をする。


 それから5分後、次々とダークビジョンを2人が撃破していくと、バイザーには共通のゲージが表示された。ダークビジョンと英語で書かれたゲージの色は黄色になっており、先ほどまでは表示されていないゲージでもある。オプションで表示及び非表示を選択出来る可能性もあるのかもしれない。

【インフォメーション ダークビジョン残存率10% ※これ以降は残存兵力数を表示し、兵力数が0になった時点で戦闘終了になります】

このメッセージは、ダークビジョン側の増援がなくなった際に共通で表示されるメッセージである。時間制限がないロードデュエルの場合、このメッセージの表示は戦闘終了が近い事を意味していた。

「彼女達が得ようとしている物、それは現代版の賢者の石よ」

ほむらの一言を聞き、松鶴は肩で笑う。ファンタジー世界ではないのに、賢者の石とは…。

『非現実的過ぎる。それを手に入れて、彼女たちは何を行おうというの?』

松鶴の言う事にも一理ある。異常とも言えるような利益を上げていた超有名アイドル、ピーク時には国家予算10年分に匹敵する額を得ていたという話もある。

「何を行うかは分からない。確かなのは…」

ほむらは両腰にマウントされたビームサーベル2本をダークビジョンへと投げつける。

「超有名アイドルは、自分達だけがアイドルを名乗る事を許され、それ以外には莫大な使用料を請求して名乗らせないようにしている事」

投げつけたビームサーベルはブーメランのように戻ってくるのではなく、リールを巻き取るような仕組みで戻ってきた。サーベルを突き刺されたダークビジョンは、ノイズ交じりのエフェクトが入った後に消滅をする。

『つまり、あなたは今のアイドルが、超有名アイドルに莫大な使用料を払って名乗る事を許可されているとでもいうの?』

松鶴はパワーローダーが丁度コンテナ射出エリアにいる事を逆に利用し、セイバープレートを操作して大型ガジェットに該当する大型ハンマー〈エクステンド〉を射出、損傷していない右腕で受け取った。

『それは既にアイドルとは言わない。超有名アイドルにコントロールされたかませ犬のような存在にすぎない!』

振り下ろしたハンマーは、瞬時にしてダークビジョンを蒸発、ノイズのようなエフェクトを出すような余裕さえ見せない超展開でもあった。


 午後2時、「事態が悪化しているのでは…」と考えていたのは運営も同じだが、それ以上に懸念を抱いていた人物が1人存在する。

「事態は以前の時より深刻化している。それを打開する為には、スクールブレイカーを追跡する必要がありそうね」

学園都市のサーバールームと思われるビルへ乗り込み、専用のコンピュータにアクセスしていた人物、それは背広を着たバイザーの女性だった。

「アカシックレコード、世界線、超有名アイドル、賢者の石等のキーワードが意味する物、それは〈あるジャンル〉を永遠の物にしようとする人物による暴走」

キーワードを入力していく内に何かの核心を付くようなレポートを見つけた彼女は、バイザーの機能を停止させ、手持ちのコンピュータへテキストをダウンロードしようと考えた。

《【警告】該当するテキストの持ち出しは出来ません》

ダウンロードをしようとした矢先、モニターには警告のメッセージが表示された。しかし、周囲に警告音が鳴っているような様子はなく、そのまま作業を続行する。

「これが持ち出せないのなら、他のテキストを…」

彼女がダウンロードしたテキストは警告が出た物ではなく、それを考察したウィキのコピー文章だった。こちらに関しては特に警告が出ることなく、あっさりとダウンロードが出来たのだが、彼女は何か引っかかる物を感じている。


 10分後、何とかデータを持ち出した彼女は、駅前のファストフード店でコーヒーを飲みながらデータをチェックしている。

「どちらにしても、事態は深刻となっている。このままでは超有名アイドルの暴走による歴史の繰り返しを展開する事になるだろう」

彼女の名は瀬川榛名せがわ・はるな、過去に音楽ゲームの楽曲提供等をしていた人物であり、セイバーロードのシステムを生み出した人物。

「全ては動きだしてしまった。この世界線でも、再び超有名アイドルを駆逐しようという流れになってしまうのか」

瀬川は懸念している。今までの世界と同じような結末が繰り返されるならば、全ての元凶は超有名アイドルにあるのでは…と。


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