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無敵の竜!

 青く澄んだ空を覆い隠すかのように、大きく翼を広げ浮遊する竜。竜が作り上げる影は、まるで俺たちを絶望の闇に放り込もうとしているようじゃないか。

 俺は今から起こるであろう竜の攻撃に恐ろしさを感じずにいられない。


 「風集壁」


 神山先生の声が轟くのと、大きく開いた竜の口から火の玉が射出されるのはほぼ同時だった。集められる風に乗って、火の玉が吸い寄せられるように、速度を増して山田に向かって行く。山田は体の力を失っていたかのように、風の勢いで前のめりになっている。


 「危ない」


 横にいた戦士が山田の手を引っ張って支えた。

 赤い火の玉は神山先生が作った空気の壁で、進路を塞がれて停止し、やはり爆発した。

 地面にしりもちをついた状態になっている山田は突然、反転したかと思うと、震えながら四つん這いになって、逃げ出し始めた。

 一方、竜は自分が放つ炎撃弾がふさがれている事に気付いたのか、その首をかしげる仕草をした。ただの動物ではなく、知性があるのかも知れない。

 その次の瞬間、竜は再び口を開いたかと思うと、その首を思いっきり左に向け、ゆっくりと右に向け始めた。


 何だ?

 炎撃弾でもない。


 そう思った時、地面が砕け散って行く音が俺の耳に届いた。

 視線を向けると、地面が真っ二つに切り裂かれて行っている。


 何だ?この魔法は?


 俺の視線が裂かれていく地面の先端を追って行く。


 「ぎゃあ」


 俺と同じように、地面が引き裂かれていく様を見ていた戦士が悲鳴を上げた。


 「ぎゃあ」


 隣の戦士が続けて悲鳴を上げた瞬間、最初に悲鳴を上げた戦士の上半身が地上に落下した。


 「風撃斬?」


 俺の頭の中に竜が使っている魔法が浮かんだ。だが普通、俺たちが使った場合、一瞬の内に狭い方向にその魔力が発動する。こんな長時間、それもゆっくりと切断していくようなものは見たことがない。

 これが竜と俺たちの違いなんだろうか?


 「風集壁を貫通しているわ」


 神山先生が叫んだ。

 その声で、先生たちを除くみんなが竜に背を向けて、逃げはじめた。

 竜の口先は逃げはじめた人たちを正確に追っている。次々に真っ二つに切断されていく人たち。


 「希未ちゃん」


 俺は希未ちゃんのところまで駆け寄ると、その手を取って、逃げはじめ。


 「光制歪」


 校長の叫び声が聞こえた。

 光を歪ませ、目の前の風景を違う場所のものとすり替える高等呪文だ。

 俺は走りながら、振り返った。

 裂けていた地面が停止している。

 竜はまた首をかしげている。

 校長の魔法が効いて、竜は俺たちを見失っているらしい。

 その安堵感とこれから起きる事を確かめたくて、俺は足を止めた。

 希未ちゃんとつないでいた手がぴんと伸びた。

 俺が希未ちゃんに目を向ける。

 希未ちゃんも立ち止まって、俺の方を見た。

 俺はすぐに竜に視線を戻した。

 希未ちゃんも状況を悟ったのか、俺の横にやって来て、竜に視線を向けた。

 その瞬間、竜は大きな翼をはためかせ、空に舞い上がった。

 俺たちの頭上を越えて、飛び立っていく。

 その向かう先はイズモへの帰還ではなく、俺たちカマクラの国内。この先に広がる街は俺と希未ちゃんを含めた、この学校の生徒たちの街である。

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