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始まった竜との攻防戦!

 イズモの精鋭たちですら全く歯が立たなかったあのとんでもない竜が向かってきている。その事実にどうしていいか全く分からず、動揺しているだけの俺たちに向かって、神山先生が大きな声で言った。


 「あなたたちはここにいて」


 その言葉に俺たちはただ頷き返す事しか、できやしない。そんな俺たちから、神山先生はすぐさま北野先輩に視線を移して、指示を出した。


 「北野君、あなたは校長に連絡して」


 神山先生は北野先輩にそう言うと、駆け出しはじめた。北野先輩は頷くと、部隊の基地に向かい始めた。遠のく二人の姿。心強い二人がいなくなった空間に、心細さを埋めるためか、生徒たちは固まり始めた。

 あの竜の強さはここにいる誰もが知っている。神山先生はもちろん、校長先生でさえ勝てやしないのではないか。みんな不安に押しつぶされそうだ。

 北野先輩から話を聞いた校長をはじめとした先生たちが飛び出してきた。


 「君たちは建物の中に」


 校長が言ったその言葉で、俺の周りにいた生徒たちが、慌てて建物を目指して走り始めた。外にいるより、建物の中の方が安全。感覚的な衝動がみんなを突き動かしている。

 俺もみんなから遅れて、建物を目指しはじめたが、希未ちゃんが外にいる事を思いだした。外より安全かも知れない建物の中に、一人逃げ込む。俺にはそんな事はできなかった。校長たちの後を追って、俺も駆け出した。

 薄暗い広葉樹で作られた自然の壁の中に足を踏み入れた。そこを駆け抜けると、先生たちが並んでイズモの空を見ていた。大きく翼を広げた竜は真っ青な空を駆け、もう間近まで迫っていた。

 竜が大きく口を開けた。

 竜の炎撃弾が飛んでくる。俺がそう感じた時、神山先生が叫んだ。


 「風集壁」


 巨大な風が俺の周りを駆け抜け、神山先生の髪が大きくなびかせた。

 他の先生たちも体を揺らしている。

 さっきの授業の時以上の迫力である。

 これがきっと、神山先生の真の力なんだろう。

 あまりの風の強さにつぶっていた目を開けた時、竜の口から火の玉が飛び出すのが見えた。

 先生たちに向かって飛んできた竜の炎撃弾は神山先生が作った風集壁の前で、停止した。

 さすが神山先生である。

 俺が感心してしまった次の瞬間、その炎撃弾は爆発した。

 爆音の振動と立ち上る煙に硫黄臭。

 炎撃弾とは何かが違う。

 これは人間と竜の違いなのかも知れない。

 風集壁はその爆発も封じたようで、先生たちは無事のようだ。

 ちょっと安心して落ち着いた俺はようやく、ここに来た理由を思い出した。

 希未ちゃん!

 見渡すと、先生たちの周囲には戦士の人たちや俺の学校の生徒たちがいる。

 肩のあたりまで伸びた黒い髪。


 「希未ちゃん」


 俺がそう言って駆けだした時、校長の声がした。


 「幻送乱」


 生物の脳の中に有る神経回路を混乱させ、幻を見させる校長の得意技だ。これで、竜は幻の世界をさまよい、俺たちを識別して攻撃する事などできなくなったはずだ。

 神山先生が風集壁を解いた。みんなが一斉に攻撃を始めた。


 「炎撃弾」

 「氷撃槍」


 先生や同じ学校の生徒たちの呪文が響き渡る。

 竜の体を襲う火の玉。氷の槍。

 しかし、少しもダメージを受けた気配がない。


 「雷撃槍」


 山田の声と共に、空から大きな雷が竜を襲った。真っ黒に焦げて、地上に落ちて行くべき竜。

 しかし、竜は何事も無かったかのように浮遊し、口を大きく開けた。

 その口の先は山田に向けられている。


 「いかん。

 こいつには効いていない」


 校長の声が上ずっている。

 神山先生が驚いた顔つきで、校長を一度見つめたかと思うと、すぐさま竜に視線を向けた。

 開いた大きな竜の口の中に赤い炎が見えていた。

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