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竜の首を狙え!

 真っ赤な炎の弾が接近したかと思うと、俺の目の前で停止し、爆音を轟かせ、大きな炎となって消えて行った。

 炎撃弾の直撃はもちろん、風集壁が間に合い、爆風も、炎も防ぐことができた。

 目の前に迫っていた炎の弾が消え去ると、俺を新たな不安が襲ってきた。

 竜が放った炎撃弾は確実に俺をとらえていた。

 風集壁がなければ、炎撃弾は俺を直撃していたに違いなかった。

 この白い闇実の中、奴は俺たちの場所が分かっているのか?

 そう考えるへきだろう。

 これが偶然だなんて、自分に都合のいい考えを持つことは、死に直結するかも知れない。

 だとしたら、視界がきわめて悪い今の状況は俺たちに取って不利なだけだ。

 炎撃弾が防がれたと知ったら、次に奴はあの光の攻撃がくるはずだ。

 俺は周囲を覆う水蒸気を一気に吹き飛ばし、視界を確保することにした。


 「風撃渦」


 周囲の水蒸気が一気に天空に巻き上がった。

 空高く舞い上げられた水蒸気は、はるか上空で拡散し、跡形も無く青空の中に消えて行った。

 俺は竜に視線を向けた。

 晴れた視界の中、竜は俺に向けて、大きく口を開いていた。

 やはり、こいつは俺の場所をつかんでいたに違いない。

 そして、奴は今にもあの光の魔法を放とうとしていた。


 「光制歪」


 希未ちゃんの声が響いた。

 竜は開きかけていた口を一度閉じたかと思うと、反対方向を向いた。

 その向こうの地面が、裂けて行く。

 やはり、あの光の魔法だ。希未ちゃんの魔法が無ければ危なかったかも知れない。


 「ありがとう。希未ちゃん」


 俺の言葉に真剣な顔つきを一度緩めて、にこりとした。

 竜の知能は高そうだ。

 歪められた空間。自分の攻撃が全く効果を与えない事に、違和感を持ったようだ。

 突然、翼をはためかせ、飛び立ち始めた。


 「風撃渦」


 神山先生が呪文をとなえた。竜を巨大な空気の渦が襲った。

 巨大な翼はもろ刃の剣だ。

 翼が巨大なだけに、風の力を大きく受けている。

 神山先生が起こした空気の渦に抗えていない。

 胴体のように強靭でない翼は空気の渦の中で、しなり始めている。

 竜は上昇し始めていたにも関わらず、翼を閉じた。

 ある程度の物なら、巻き上げる力のある風撃渦だが、さすがに竜の巨体を吹き飛ばす力はないらしい。

 竜の巨体は大きな音を立てて、地面に激突した。

 大きく後ろ足を屈伸させて、その衝撃を受け止めようとしたが、風の力で体勢が傾いていた事と、地上からの距離が高かったため、その衝撃を受け止めきれず、前のめりに倒れ込んだ。

 これはダメージを与えられたかも?

 そう思いながら、竜の動きに注意した。

 流石の竜も、地面に激突したダメージが大きかったのか、それとも風の力に抗えないのか、動く気配を見せない。


 「神山先生。魔法を解いてください」

 「大丈夫?」

 「はい」

 「じゃあ、任せるわよ」


 神山先生が魔法を解いた。竜を押さえつけていた空気の渦が徐々に弱まってい行った。

 抗いきれる。そう感じたのだろう。竜が突然立ち上がり、首を大きく振り上げ、天空にその顔を向けた。


 「風撃孔」


 その長く伸びた首。そこを狙って、最大の風撃孔を放った。

 破壊する領域の大きさはごくごく狭い領域に絞り込み、その破壊力を極限まで高めた。

 今までに感じた事が無いほど、俺の周りの空気が激しく、渦巻いている。

 渦巻く空気は全てがその先端に集中し、竜の首を目指して向かって行った。

 集中し、圧縮された空気のその先端は硬く、鋭角に鋭く尖っていて、その前に立ちはだかる全ての物を貫くはずだ。

 本来、目には見えないはずの空気だが、その先端はあたりの風景を歪め、俺の風撃の存在を知らしめていた。


 「行っけぇ~」


 その先端が竜の首に激突した。

 竜の首が傾いた。

 風撃の衝撃に耐えれなかったようだ。

 だが、竜の表皮の硬度もかなりらしい。

 血を吹き出すこともなく、俺の風撃が竜の首で二つに分断され、虚しく空に吸い込まれている。


 「だめなのか?」


 俺の言葉に、希未ちゃんが言った。


 「信じられない。首は傾いたけど、竜の表情は全く変わっていない。

 目も瞬きすらしていない」


 その言葉に、俺は竜の顔に視線を向けた。

 苦しむ様子も、痛がる様子も見えない。

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