決戦!イズモに巣くう竜。
眼下に広がる街はどこまで行っても、荒廃の気配をはらんでいた。街の所々から立ち上る黒煙。高度を落せば、人々の悲鳴が聞こえてきそうな気さえする。
俺の手を取ってくれている希未ちゃんの口は固く引き締まっている。きっと、この惨状を何とかしたいと言う気持ちがそうさせているに違いない。
速度を上げた校長にも、希未ちゃんはついて行っている。
眼下に広がる景色は街、川、山と姿を変えていった。この国の首都はこの山の向こうに広がっているはずだ。
山を越えた向こうに広がる街も、きっと荒廃しているに違いない。そんな危惧を抱きながら、山を越えた。
視界にこの国の首都が姿を現しはじめた。
が、そこに広がる光景は想像とは異なっていた。
焼野原。
まさにそこは焼野原だった。
どこまでも続く真っ平らな土地。
そこは焼け焦げた建物の残骸で埋めつくされ、所々には黒く炭になった木材が空しく立っていた。そして、人の気配など全く感じられない。
「これは?」
「おそらく、竜との激戦の跡」
俺の言葉に神山先生がそう言って、いくつかの場所を指さした。その指先に目を向けると、地面が陥没していた。竜の炎撃弾の跡。そんな感じだ。
「ひどい」
希未ちゃんの声は震えている。
「ここまで被害が及ぶのか」
「それだけ、イズモの抵抗も激しかったって事でしょう」
俺の言葉に神山先生が答えてくれた。なるほど。そうかも知れない。
どこまでも続く焼野原。視線をそのまま地平線に向けて行くと、この国の王宮らしきものが見えていた。
「あれは王宮ですか?」
「たぶんね」
どんどん、その王宮が近づいてくる。王宮の少し先には海が見えている。
王宮の全景が見えた。
王宮の周りには大きな堀が巡らされているようで、王宮自身はほとんどダメージを受けていない感じだ。王宮を取り巻く白い壁。俺たちの方からでは門が見えない。おそらく、王宮の正門は別の方角にあるのだろう。
一気に王宮が近づいてきた。堀に囲まれた白い壁の中は緑あふれる庭園である。そして、その庭園の中にいくつかの建物が建てられていて、中央に高層の建物がそびえ立っていた。それが王宮の中心なんだろう。
王宮の敷地の中はもちろん、周囲にも衛兵の姿すら見えない。全くの無防備状態。
そう思いながら、王宮の敷地上空に差し掛かった時、王宮の正門が目に入ってきた。俺たちがやって来たのはちょうど正門の反対、裏側だったようだ。
そして、俺たちは気づいた。
その正門の向こうに、金色に輝く巨大な物体が見えている。
金色の表面に目を向けると、うろこのような紋様が見える。
見えているのは竜の背中だ。
竜が正門の向こうに横たわっているんだ。
「気付かれない内に、着地しよう」
校長がそう言って、高度を落としはじめた。
「そうですね。まずは竜騎士を倒しましょう」
神山先生もそう言って、高度を落としはじめた。
その時、視界の片隅に映っていた竜の背中が動いた。
そして、王宮を取り囲む高い白壁で隠されていた竜の頭が持ち上がった。
竜の頭はすぐさま俺たちに向いた。
完全に気づかれたらしい。
竜が大きな口を開いた。
口の周りに並ぶ白い牙。その奥に広がる暗く、赤い空間。その中に明るい光が生まれ始めた。
赤い。赤い。炎だ。
俺たちは慌てて進路を変えて、その炎をかわした。
青い空を貫くように、真っ赤な炎が伸びている。
竜は首を振って、狙いを定めた俺たちに炎を向けてきた。
「分散しよう。それと、王宮にはイズモの王族が捕らわれているかも知れんから、王宮に被害が及ばんようにするため、王宮には近寄るな」
校長の言葉に、俺たちは三つに別れた。校長は竜の正面の上空に、神山先生は左側に、俺たちは右側に。
「希未ちゃん。竜に近づけるか?」
希未ちゃんは強張った表情だったが、俺に振り向いて、力強く頷いた。




