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イズモとの国境に立つ!

 イズモはすでに動いていた。

 大量の兵が国境に集結し、侵攻を開始してきていた。俺と神山先生がその場所にたどり着いた。そこはあの竜を初めて見た場所だ。少し小高い丘の先に広がる草原。そこには無数の兵士たちで埋めつくされ、本来緑色の心安らぐ風景が殺気立った風景に塗り替えられていた。

 イズモから攻め込んできているのは戦士の部隊。俺たちの国の最前線に立っているのは、戦士たちだけではなく、怪我から復帰した校長を始めとした魔法使いの部隊も参戦していた。魔法使いに戦士だけでは戦いにはならない。戦況は俺たちの国の圧倒的優位だ。

 だと言うのに、敵兵は前進をやめようとはしない。死を覚悟で、ただただ突っ込んできている。

 これではただの殺戮になってしまう。俺がそう感じた時、懐かしい声がした。


 「まーくん。王宮はどうだったの?」


 俺を見つけた希未ちゃんがやって来ていた。俺が希未ちゃんに口を開こうとした瞬間、神山先生に手を引っ張られた。その顔つきは真剣そのものだ。


 「先に校長先生に報告必要でしょ」


 ごもっともだった。確かに最後は神山先生も参戦していたが、騒動を引き起こしたのは俺であって、神山先生は俺を救おうとしただけである。


 「ごめん。校長に報告したら、戻って来るから」


 神山先生はあたりを見渡して、校長を探している。校長を見つけるのに、時間は要さなかった。神山先生が首を振って、辺りを見渡したのはほんの数回だった。


 「行くわよ」


 そう言うと、小走り気味に歩き始めた。「じやあ」って感じで、希未ちゃんに軽く手を上げて、俺は後を追った。死に場所を求めているかのような敵兵を、怪訝な顔つきで校長は見下ろしていた。


 「校長」


 神山先生の声に、校長が振り返り、俺たちに視線を向けにこりとした。


 「ご苦労。どうだった?」


 校長が神山先生にそう言うと、神山先生が深々と頭を下げて、大声で言った。


 「すみませんでした」


 神山先生は下げたまま頭を上げようとしない。俺はそれを見て、慌てて頭を下げながら、言った。


 「すみませんでした。悪いのは僕です。

 ついついかっとなって、王様に無礼な口をきいて」


 自分の責任だと言うのに、人様に頭を下げさせるなんて、かっこ悪過ぎ。自分の事は自分で責任をとらなくてどうする。とは思ったものの、そこから先の言葉が出てこない。

 神官を殺して、王を脅したなんて、どう説明したらいいのか。


 「止められなかった私の責任です」


 神山先生は頭を下げたままだ。


 「ふむ。

 幻制読」


 校長先生が呪文をとなえた。幻系の呪文で、人の記憶を幻として浮かび上がらせるものだ。さっきまで照りつけていた明るい陽光が弱々しくなり、薄暗い空間が俺たちを包みこんだ。

 そこにぼんやりと浮かび上がったのは王宮の謁見の間。王が金銀で飾られた椅子に座っている。


 「両名、このたびのアカサカ討伐での働きは天晴れである」


 王の声が聞こえてきた。あの事件の最初のシーンだ。そこから最後までの出来事が映し出された。

 あの時、俺は感情がたかぶっていたので、あまり感じていなかったが、こうして冷静な状況で、自分の行いを見せつけられると、どこかに逃げ出したいくらい恥ずかしい。何と言う非礼さ。見るに堪えれなくなって、下を向いていても、恥ずかしさで顔が赤くなってしまう。

 早く終わってくれ。たとえ終わると、校長から怒鳴られるとしても、そう思わずにいられない。

 やがて、全てが終わると、薄暗かった空間にまぶしいばかりの陽光が戻ってきた。俺は気まずい思いで、校長に視線を向けた。


 「はっ、はっ、はっ、は」


 校長はお腹を震わせ、顎を上げて笑い始めた。


 「これは、これは、想像以上のやんちゃをしたもんだ」


 意外な反応に、俺と神山先生が目を見合わせた。


 「さて、どうしたものかな」


 その次には真剣な表情になって、俺たちを見つめた。校長から、次の言葉がすぐに出てこない。きっと、次に口を開いた時には目いっぱい怒られるに違いない。


 「仮にもこの国の王だからな。事が片付いたら、私と謝りにいくか。

 だが、それまでの間、王が報復のため、何をしでかすか分からんから、神山先生は彼を見守ってやってくれんか。特に、封印の陣には注意が必要だ」

 「はい。分かりました」


 神山先生の言葉に、校長が力強く頷いている。


 「ところで、変だと思わないですか?」


 神山先生の言葉に、校長はうん? と言う表情をして、にんまりと笑った。


 「神山先生も思うかね?」


 校長の言葉に神山先生が頷いた。二人で何を分かりあっているのか? 俺だけ仲間外れの気分だ。

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