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力の差を見せつけてやる

 すでに首都近くまで俺はやって来た。

 東の空が心なしかほのかに赤みを帯び始めてきた。もうすぐ地の果てから姿をのぞかせる太陽が、空の真ん中に来る頃には、この国は消滅しているに違いない。

 俺の背後には俺が通るために、道となってもらった幾多の家々の残骸が広がっている。俺の前にも、俺が通るために破壊された家々の残骸が広がっている。

 そして、俺が作り上げた残骸の道を通って、俺の国の戦士たちが続いて進撃してきていて、どこからか現れてくる敵と散発的な戦いを繰り返し続けていた。

 俺はそんな出来事には全くお構いなしに、アカサカの王宮目指して行る。俺は目の前に破壊されていない街並みが立ちふさがる前に魔法を放ち、一気に邪魔な建造物を片づけていく。そこに人がいようがいまいが、俺には関係ない。ここにいるのは敵だ。


 「風撃孔」


 目の前の邪魔な建物が一気に吹き飛び、俺のために王宮への道をまた一歩開いた。

 俺が足を踏み出す。

 えぐれた地面の石ころを踏んだ瞬間、石ころが俺の足の裏で転がり、俺の体勢が崩れた。

 その瞬間、俺は右肩に痛みを感じた。


 「ぐうっ」


 右肩に目を向けた瞬間、聞きなれた声が背後でした。


 「風集壁」


 神山先生の声だ。俺が振り返ろうとした時、俺の目の前にいくつもの炎の弾が現れた。炎撃弾。俺を狙ったであろう炎の弾は、神山先生の空気の壁に阻まれ、ゆっくりと地上に落下して使命を果たせないまま消えて行った。


 「ちょっと早いけど、アカサカ侵攻は確かに私たちの作戦だし、私もあなたを援護するわ。

 で、怪我は大丈夫?」


 にこりとした表情でありながら、少し心配そうな瞳で神山先生が俺に近づきながら言った。俺は自分の気持ちのまま、痛みよりうれしさを優先させて、微笑み返しながら頷いた。


 「気を付けなさい。

 自分の力を過信しすぎ。もうアカサカの王宮が近いんだから、ここから先は強力な魔法攻撃を受ける事くらい、考えておきなさい。

 敵はあちこちの遮蔽物の陰に潜んで、攻撃をかけてくるはずよ」

 「はい。先生」


 神山先生が俺の前までやって来て、右肩の傷の具合を確認した。服は破れ、赤く染まっているが、血はあふれ出ていると言うほどではない。じわっと出ているそんな感じだ。破けた服からのぞく俺の右肩は上の皮が見事に削がれた感じで、そこに血がにじみ出していた。


 「まあ、これくらいなら、大丈夫ね」

 「はい。ありがとうございます」

 「戦える?」


 俺の戦意を聞いている。そう感じて、俺は再び正面に向き直った。俺が造り上げた一本のえぐれた道。その途中で土ぼこりが渦を巻いて上昇を始めた。それはすぐに巨大な渦になっていった。その姿はまるで竜がとぐろを巻きながら、天に昇って行くかのようだ。

 風撃渦。魔法による竜巻だ。あれをぶつけて、風集壁ごと俺たちを打ち破る気だ。神山先生の笑顔で、一度穏やかさを取り戻した俺の心の中に、再び怒りが沸き起こった。


 「もちろん。やりますよ。先生」


 俺は神山先生に背中を受け、敵に向き直ったまま、そう言った。敵に俺の力を見せつけてやる。


 「風撃渦」


 同じ魔法を相手の風撃渦にぶつけ、消し去る事で、力の差を見せつけてやる。それなりの自信を持って放った魔法。それと同じ魔法で、桁違いの力を見せつけてやる。

 それはただ単に敵の魔法を消失させたと言う効果だけなんかに止まらない。相手の心に少なからず恐怖の芽を植え付ける事になるだろう。

 俺の放った風撃渦が瞬く間に巨大な竜に育ち、敵の風撃渦に向かって行く。その大きさは敵の何倍にもなっている。大きさの違いはただの外形的な差なんかじゃない。巻き込む力の差でもある。

 俺が風撃孔で全てを吹き飛ばした直線の両横には、まだ健在な建物が密集していた。その建物を次々に破壊し、その残骸を吸収し、巻き上げている。朝の気配を伝えるほのかな明かりの中に浮かぶそれは、竜の体を覆ううろこのようじゃないか。

 その姿にきっと風撃渦を放った敵は愕然としているはずだ。そう思った俺の顔がいやらしくにやりと歪んだ。

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