恐るべき竜の力!
炎撃弾。精鋭たちの炎撃弾である。おそらくある程度の厚さの鉄の板なら貫通するほどの威力を持っているはずだ。なのに、竜の鱗に小さな穴をあけるのが限界のようだ。竜の鱗とはそれほど硬いものなのか?
雷撃槍。空中から襲ってくる雷。その前には何者も立ちはだかる事ができない。竜をいくつもの雷が襲っているが、焼け焦げる事も無く、空中を浮遊し続けている。
氷撃牢。敵を厚い氷に閉じ込めるとは言っても、竜はあまりにも大きすぎる。
竜騎士を狙って繰り出している。その効果は確かなもので、竜騎士を氷の牢獄に閉じ込めている。普通なら、脱出不可能な厚い氷だ。しかも、体温を奪われ、呼吸もできず死の世界に送られるはずなのに、竜騎士を閉じ込めた氷塊は内部から溶融し、最後は竜騎士の物理的な力によって、粉々に破壊されている。
精鋭たちの攻撃にも竜はたじろぎもせず、空中でゆっくりと翼をはためかせ、ただ同じ場所に浮遊していた。
講堂の中に再び大きなどよめきがこだました。
「全然こたえていないんじゃね?」
「弱点はないの?」
そんなどよめきの中、竜の動きに変化があった。
竜は一度首を上に向けたかと思うと、大きく口を開け、再びその視線を地上に向けた。
その瞬間、開けた口から赤い炎をまとった玉が吐き出された。
猛スピードで地上に向かって、火の玉が向かって行く。
「巨大な炎撃弾?」
「竜って、俺たちみたいに魔法が使えるのか?」
初めて見る竜の魔法に大きな動揺が走った。俺たちと同じように見ていた先生たちの顔にも、驚きが現れている。
竜が放った炎撃弾は地上に激突すると、巨大な穴を穿った。
その場にいたイズモの精鋭たちは肉片となって、血しぶきと共に辺りに飛び散り、少し離れた位置にいた精鋭たちは炎に焼かれながら、その爆風に吹き飛ばされていった。
一撃で多数の戦死者をイズモは出した。
集中していて的になるのを避けようと、イズモの精鋭たちが散らばり始めた。
散開しながらも、攻撃を繰り返す精鋭たち。
しかし、どんな攻撃も竜はもちろん、竜騎士にさえダメージを与えられていない。
竜は再び口を開いた。
いくつもの炎撃弾が散開し始めていた精鋭部隊を襲った。
飛び散る肉片と血しぶきは爆風が持つ熱によって、焼き焦がされていく。その場にいたら、いやな匂いを否応なく嗅がされていた事だろう。
大半の精鋭部隊は死に絶えたのか、竜を襲う攻撃が散発的になった。
あれだけ一斉に攻撃してもダメージを与えられなかったんだ。そんな散発的な攻撃では全く無意味に違いない。
そう思っていると、もはやここに戦うに値する敵はいないとおもったのか、竜は市街地から王宮に向けて飛び去って行った。
その後姿を最後に、風景は精細さを失い、薄いグレーの靄になって消え去って行った。
「この後、王宮はこの竜と竜騎士により蹂躙され、イズモの王家は監禁されたそうだ。
そして、今。王宮は竜と竜騎士に占拠されているらしい」
明るさを取り戻しはじめた講堂の中で、校長が言った。生徒たちは近くの級友たちに視線を合わせあっている。そんな生徒たちの表情には、神の門が謎の者の手に落ちたであろうと言う重大性と、敵の脅威の大きさへの戸惑いが浮かび上がっている。
「だが、事態はそれだけではない」
校長が力強い声で言った。俺たちを勇気づけるためではなく、さらに悪い知らせがある。そのためだと言う事は、校長の険しい表情が物語っていた。




