敵はやはりアカサカだ
三人組。
これが俺たちを襲っている奴らだ。
すぐに殴り掛かれるほどしか離れていない。
この距離では雷撃を使うには近すぎる。炎撃も巻き添えを食らいかねない。
「にし……」
「氷撃牢!」
俺がどうしようかと迷っている内に、敵の声を遮って、西川先輩の声が耳に響いた。
一瞬の内に氷の牢獄に閉じ込められた三人。先手必勝。しかも、氷撃で、俺たちには被害が及ばない。さすが、西川先輩。思わず、感心して頷いてしまう。
だが、西川先輩の表情は厳しいままだ。
校長先生がどんな魔法を使ったのかは知らないが、校長先生の魔法が効かなかったと言う言葉が俺の頭の中に甦ってきた。西川先輩の手が、俺の手を掴んだ。ついついどきっとしてしまった俺は、今敵に囲まれている最中だと言う事を一瞬、忘れてしまった。
西川先輩はそのまま俺の手を引っ張って、三人を閉じ込めている氷の牢獄の隙間から外に逃れた。
少ない通行人たちが、この騒動に感づき遠巻きに成り行きを見守っている。西川先輩が三人から離れた場所で立ち止まると、三人の様子に目を向けた。凍てつき体の体温を奪い去る牢獄は、その呼吸すら奪い、閉じ込められた者を安らかな闇の世界に誘う。
だが、これを破った者がいた。竜騎士だ。
厚い氷を透して、その内部に泡が見て取れる。内部が溶融し、水に戻ってきている。
竜騎士と同じだ。一体、どんな魔法なのか?
そう思っている内に、厚い氷の表面にひびが入り始めた。
「逃げるよ」
西川先輩が俺の手を取って、走り始めた。俺たちが走り始めてすぐ、背後で氷が砕け散る音がした。水が流れ出す音も混じっている事から言って、内部の氷はかなり融かされていたらしい。少し振り返ると、ずぶ濡れの男たちが俺たちに向け、指を差し出した。
俺の頭の中で、指先から発する火花と「ばーん」と言う音が甦ってきた。
林の中で遭遇したアカサカからの侵攻部隊と同じ動作だ。敵はやはりアカサカだ。
「風集壁」
俺はとなえた。俺の予想は当たっていたようで、敵の指から火花が散った。西川さんが走りながら、振り返った。
「東山君がやったの?
あれって、アカサカの部隊と同じだよね?」
「みたいです」
俺はそこまでは言ったが、その先の事は恐ろしくて言えなかった。それはあの竜騎士とこいつらは同じかも知れないと言う事だ。だとすると、すでにアカサカはイズモの手に落ちている事になる。俺たちのカマクラだけが、「神の門」を竜騎士が開き、この世界を手に入れるのを防ぐ、最後の砦なのかも知れない。




