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集団下校

 「先生、相手は誰なんですか?」


 希未ちゃんが立ち上がって、たずねた。神山先生は希未ちゃんに一度視線を合わせた後、厳しい表情で教室を見渡してから言った。


 「相手の正体は分かっていないわ。

 ただ分かっているのは、相手は三人組。そして、その相手は校長の魔法さえ通じないと言う事」

 「校長先生の魔法が?」

 「誰が勝てるって言うんだ?」


 生徒たちの動揺は最大になっている。校長が敵わない相手。誰が相手になれると言うんだ。


 「校長先生も殺されたんですか?」

 「大丈夫よ。

 怪我をされてはいるけど、難を逃れたわ。

 校長先生の話では、唯一効果があったのが光制歪らしいわ」


 俺の頭の中にイズモとの国境で、遭遇した竜の姿がよみがえってきた。その敵はまるであの時の竜と同じじゃないか。アカサカから侵攻してきた敵の耐魔法能力もかなりのものだった。

 敵が装着していた鎧を調べれば何か分かったかも知れない。

 その時、俺はある事に気付いた。

 だから、アカサカはすぐに停戦を申し込んできたんだ。やられるとは思っていなかった兵たちがやられ、俺たちがあの鎧を手に入れ調べる事を防ぐために、遺体をすぐに回収する必要があった。

 だとすると、今回の敵はアカサカと通じている。その力の元をたどれば、竜につながるのかも知れない。俺はその考えを自分の頭の中で検証し、誤りがなさそうだと感じ、一人大きく頷いた。


 「目的は何なんですか?

 分かっているんですか?」


 そんな俺とは関係なく、生徒たちはこの事件に対する質問を続けていた。神山先生はその質問に、残念そうな表情で首を横に振った。


 「相手の正体が分からない以上、その目的も分からない」


 俺の視界の中のみんなの表情は戸惑いから、すでに不安一色に変わっている。そんな雰囲気を察して、神山先生が言った。


 「大丈夫よ。

 国境警備に就いていた精鋭部隊の一部を、この地域の警護に回すことが決定されたわ」


 その声には力強さはあった。しかし、そんな事だけで、十分だなんて、誰も思ってなんかいない事は、みんなの表情を見れば分かる。俺たちの学校の校長先生の能力が別格だった事はみんなが知っている。その校長先生でさえ、相手を倒せなかったばかりか、怪我を負い、敵の目を欺いて逃げるのがやっとだったんだ。国境警備の精鋭が守ってくれたって、敵を倒せるとは思えない。


 「とにかくよ」


 そんな俺たちに、神山先生は二度手をぱんぱんと叩きながら言った。不安でざわついていた教室に静けさが戻ると、神山先生は言葉を続けた。


 「今日から、一人で帰宅はしない。

 何人か固まって帰宅するからね」


 その言葉に俺たちはお互いの顔を見合わせた。

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