襲われた生徒たち
「まーくん。何か、嫌な予感がする」
俺の所にやって来て、そう言った希未ちゃんは少し震えているようだ。希未ちゃんの手をとって、俺は頷いてみせた。
「大丈夫」
俺は山田のように自分の力を見せびらかして自慢したりはしない。だが、自分の力に対する自信はあった。俺は自分の大切なものを必ず守ると。
俺の言葉に希未ちゃんも頷いた。その時、廊下を足早にやって来る人の気配に気づいた。遅れたので先生が早足で来ているのだろう。特に何も無かった。そう言う事だと俺は思った。生徒たちも近づく足音にそそくさと自分の席に向かって行く。
教室が一瞬の内に静寂を取り戻したが、それはすぐにドアを開く音に破られた。開いたドアから神山先生が姿を現したかと思うと、早足のまま教団の上に立って、俺たち全員を見渡した。
「全員そろっている?」
その声と表情には緊張感が漂っていた。それは俺だけでなく、みんなも感じとったようだ。
「何かあったんですか?」
その問いかけに答えるより、神山先生は俺たちが全員そろっているかを確認することを優先しているようで、教室の隅々に視線を送り、空いている机が無い事を確認した。
「よかった」
そう言った瞬間、神山先生の表情が一瞬崩れた。
「あなたたちの先輩の何人かが何者かに襲われたの」
その言葉で教室の中は騒然となった。お互い、驚いた表情で見つめあっている。
「で、大丈夫だったんですか?」
「誰が襲われたんですか?」
「校長先生が行方不明だって噂が聞いたけど、関係あるんですか?」
教室の中は完全に統制を無くし、生徒たちが口々に勝手な質問を始めている。俺もみんなが口々にしている質問、全ての答えを知りたい。そんな気分で、神山先生をじっと見つめていた。
「静かに」
神山先生の一喝で、教室は一気に静けさを取り戻しはしたものの、生徒たちの気持ちまでは静まってはいない。動揺した表情がみんなに浮かんでいた。
「あのアカサカとの戦いと関係があるのかどうかは分かっていないけど、あの戦いに参加した何人かの三年生が襲われたの。
あの戦いに参加したくらいだから、それだけ優秀な生徒さんたちだけど、全く歯が立たなかったらしい」
それはとんでもない話だ。この教室の中にも、あの戦いに参加した生徒もいるにはいるが、大半は参加していない。そんな自分たちよりも上位の力を持つ者たちが、襲われて、全く歯が立たなかったと言うのだ。その敵が自分たちに向かって来れば、刃向うことすらできずにやられてしまう。
「で、襲われた人たちは大丈夫なんですか?」
神山先生は何も言わず、首を横に振った。
「えぇーっ」
「それって、殺されたって事?」
神山先生の反応に教室は騒然となった。それを否定しようとしない神山先生。それはつまり肯定したと言う事だ。女の子たちの何人かは、両手で顔を覆い、嗚咽し始めた。




