あれが竜なのか!
高い天井の講堂の中にはすでに多くの生徒たちが集まっていた。一段高い壇上の上には、学校の校章が金色の糸で刺繍された幕が吊り下げられていて、その下に校長が立っていた。しっかりと正面を見つめた目。貧乏ゆすりも何もせず、緊急事態だと言うのに、どかっと立っている姿は頼もしい限りと言うか、緊急事態なのか?と言う疑念さえ抱かしてくれる。
一方、生徒たちをまとめている先生たちの間には緊張感が感じられ、生徒たちを慌ただしく整列させようと声を張り上げたり、手で指図したりしていた。
俺たちを整列させようとしている神山先生は俺たちに整列を急かしながらも、その表情に焦りは感じられない。しっかりとした視線で、俺たちの整列具合を見定め、「そこ、もっと右」とか、適時指示を出していっていた。
生徒たち全員が整列し終えると、騒がしかった講堂に静けさが訪れた。俺を含め、生徒たちの視線が校長に向けられた。
校長がゆっくりと俺たち生徒を見渡した後、口を開いた。
「みんなに集まってもらったのは緊急事態を知らせるためである。
隣国イズモが謎の竜と竜騎士によって落ちたようである」
その言葉に講堂に集められた生徒たちから、講堂を震わせるほどのどよめきが起きた。俺も驚きで大きく目が見開き、拳を握りしめた両手に力がこもった。
東側と呼ばれるこの世界の半分には俺たちの国、カマクラとアカサカそしてイズモがある。イズモには「神の門」と呼ばれるものがあって、イズモの王家が古来より守り続けてきた。神の門の中には、この世界を手に入れる事ができる力が封印されているとの言い伝えがある。その門が、何者かの手に落ちたと言うのだから、皆が騒ぐのも無理はない。
もっとも、その門は二つの鍵で封印されていて、この二つの鍵なしで開くことはできない。そのカギは俺たちの国の王家とアカサカの王家が代々保管し続けていた。
講堂を震わせるほどだったどよめきが、少しずつおさまって行った。生徒たちもお互いを見合わせていたが、正面を向き、その視線を校長に戻し始めた。静けさが戻り、生徒たちの視線が自分に再び集中した事を確かめると、校長が呪文をとなえた。
「光幻録」
講堂の中が光を遮る薄い膜に覆われ始め、明るかった視界が薄暗くなって行く。
「今から見せるのは、イズモに潜入していた我が国の密偵が見た竜とイズモの精鋭たちの戦いの記憶である」
校長の背後にぼんやりと街の風景が映し出されはじめた。街の情景が明るくなってくるにつれて、街の輪郭もはっきりとし始めてきた。空には大きな翼を広げた見た事もない生き物が浮遊し、地上を睥睨していた。
これが竜なのか?
金色に輝く体はうろこのようなもので覆われていて、胴体から長く伸びた首。長くない前足に比べ、大きく太い後ろ足。頭の先から、長いしっぽの先まで入れると、全長は10mを軽く超えている。
伝説上の生き物であって、実在なんてしないものと思われていた竜がいた。
こんな生き物が今までどうして見つからなかったのか?この世界の東側以外の場所に潜んでいたのか?
そう思っていた時、映し出されている情景の中心が竜の首にまたがっている一人の戦士に移った。白く陽光を反射する剣を右手に持ち、鋼鉄の鎧を身にまとっている。背には真っ赤なマントが風にはためいている。これが竜騎士なのか?
この竜と竜騎士に対峙しているのはこの国の精鋭と思われる部隊で、炎撃や雷撃、氷撃と言ったあらゆる攻撃を間断なく加えていた。




