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凄惨な記憶

 薄暗い灰色の空を隠そうとするかのような黒煙が、あちこちから立ち上っている。その黒煙の根本には真っ赤な炎がとぐろを巻いて噴き上げていた。目の前の道には人が倒れている。顔を横に向け、見開いた目、力無く開いた口。服は背中の部分でぱっくりと裂けていて、真っ赤に染まっている。

 視点が道の左に動いたかと思うと、すぐに右に動いて、また左に振れた。

 動揺しているのか、視点が定まらない。

 その間に映し出された道のあちこちに人が倒れている。大人ばかりじゃない。子供も殺されている。

 その時、俺は気づいた。視点が低い。この記憶の持ち主自身が子供の可能性がある。

 視点が道のはるか先に向かった。そこには向かってくる大勢の人影があった。視点が細い路地の中に入った。きっと、向かって来ようとしていた者達は敵なんだろう。

 周りの壁が流れて行く。走っているようだ。かすかだが、この記憶の持ち主のものと思われる息が聞こえてきている。息切れ気味だ。限界が近そうだ。

 視点がその先の空間の左右に向かっている。建物の入り口を探しているらしい。民家と思われる建物の入り口を見つけた。扉を開けて、中に飛び込んだ。

 薄暗い中、家財道具が散乱している。

 これが世に言う略奪なのか?

 家の中で隠れる場所を探しているのか、敵の有無を確認しようとしているのか、視点が左右を行き来している。奥の部屋を見定めたようで、そこに視点が向かって行く。開いたドアの隙間からのぞく、その部屋の中も色々なものが散乱していて、荒らされた後のようだ。それでもかまわず、その部屋に飛び込んだ。そこはさらに凄惨な場所だった。

 顔面をざっくりと切られ、血の海に沈んだ二人の男。そこから少し離れた場所に、上半身の服がはだけた状態で、下半身には何もつけておらず、仰向けの状態で血の上に沈んでいる女性の姿があった。この記憶の持ち主が子供なら、ただの殺人にしか思えていないだろう。でも、俺くらいになれば、その意味は分かる。なんて事だ。

 視点が再び左右に振れている。きっと、こんな恐ろしい場所には身を潜められない。そう言うことだろう。

 視点は再び入ってきた場所に向かい、外に飛び出すと、また走り始めた。

 細い路地の中を走り続けている。その先には大きな道が広がっているようだ。

 どんどん近づいてきた。その時、この記憶の持ち主の息以外の人の気配を感じさせる音が聞こえ始めてきた。

 馬のいななき。馬蹄の音。


 「助けてくれー」


 男の助けを求める声。


 「いや、いや、やめてぇ」


 女の人の悲鳴。

 その先はもっと危険だ。空気の振動がそう伝えている。記憶の持ち主が立ち止まった瞬間、路地とその先が交差するほんの狭い空間にまばゆい光が見えたかと思うと、真っ赤な雨が降り注いだ。敵と思われる兵士が男の人を正面から切りつけていた。


 「おとうさん」


 倒れた男の人のところに駆け寄ったのは小さな男の子。兵士はその手の剣をぶらりと下げたまま、にやりとした。その次の瞬間、その兵士は男の子の背中に剣を突き刺した。


 「きゃあー」


 女の人の悲鳴がしたかと思うと、その男の子に走り寄り、しゃがみこんだ。服が乱れ気味のその女の人を兵士は力づくで立ち上がらせたかと思うと、着ていた服を引き裂き、胸を鷲掴みにして押し倒した。その女の人は、もはや自我を失ってしまっているのか抵抗することも悲鳴を上げる事もなく、力なく人形のようになっていた。

 記憶の持ち主もようやく自分のすべきことを思い出したかのように、体を反転させると、来た道を戻り始めた。目指したのはさっきの死体が転がっていた部屋だった。敵がすでに去った場所、そこが安全である。そう判断した、いや動物としての直感のようなものに導かれたのだろう。

 記憶の最後は、死体が転がり血の海が出来上がっている部屋の押し入れの隙間に駆け込んで、押し入れを閉じるところで終わっていた。

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