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0day 夜の女王、月に笑う
この館は世界から嫌われている。いや、嫌われているというのは正確には語弊がある。それは『好きの反対が無視ではなく嫌い』という限りなくポジティブな捉え方をすればの話ではあるのだ。あくまで詩的表現、あるいはポジティブに捉えるのであれば「嫌われている」というのも嘘ではない。
では、現実はどうか。
「この館には現代社会との連絡手段は皆無に等しく、現代社会からも認知されていない」
この表現が正しいだろう。この館がどうしてそうなったか、それはおそらくこの館の主が神様に嫌われているからに違いない。
「朱人、かまってくれよー」
「今忙しいから後でなー」
そう、俺は忙しい。アダルティなゲームのパートボイスをフルボイスにする作業が。
首の周りに這い寄る腕には我慢するが、明らかに乳房を揉みしだく行為には断固とした態度で対応する。
「『もげろ』」
「ぎゃあああ!腕が!なんか回転エネルギー的な力とパワーでぶちぶち言ってる!」
これでしばらくはおとなしくなるだろう。思えば遠くにきたものだ。まだ三日とたっていないけど。