3、不安
学校帰りに寄っただけのようなものなので、暦は教科書など以外特に何か荷物を持っていることもなかったので、やることもなく一人でただ机の前に座っていた。
(何もやること、ないなぁ……)
せっかく案内してくれた部屋も、自分がいるとなんだか不釣り合いな気がして落ち着かない。“異端”と蔑まれてきた自分には、どうしても似合わない。
「ちょっと他のところとか、のぞいてみてもいいかな?」
その問いには誰も答えることもなく、暦は一人立ち上がりドアノブに手をかける。が、しかし。
「うわっ!!」「ひゃっ!?」
ちょうどリトがドアを引いたところだったようだ。片手に何かを持ち、ドアノブを握ったまま固まっている。
「びっくりした……どこ行こうとしてたんだ?トイレか?」
「あ、いえ……暇だったので、ちょっと周りを見てみようと思って」
どうやら着替える用意を持ってきてくれたらしかった。そういえばさっき濡れたまま、まだ着替えてもいない。とはいえ、着替える服を持っていないのでこのままでいるほかはなかったのだが。
「あー、確かに暇だよな。まあ一応、着替え持ってきたから。濡れたままじゃ気持ち悪いだろうし、風呂でも入って着替えろよ」
リトは無造作に持っていたものを置いて、出て行こうとしたが何を思ったのか暦の方を向いてこう言った。
「あんた、料理できる?」
「へ?」
唐突な問いに少し戸惑う。出来ないわけではない、両親は共働きで、よく自分の分は作っているから。
「出来なきゃいいんだけど、何が好きか分かんねぇし手伝ってくれたら嬉しいなーって。どうせ暇だろうし、暇つぶしにでも」
「す、少しならできます。邪魔にはならないかと……」
何から何までしてもらった分、少しでもお返しをしたいと思った暦は、その答えを述べた。するとリトは天使のような笑顔を浮かべはにかんだ。
「じゃあ風呂から上がったらキッチン来いよ!!」
今度こそリトは部屋を出て行き、暦はリトの持ってきてくれた着替えを持って風呂場に向かった。
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