0.一に“予防”、二に“ケア”、“排除”は最終手段
大学生の頃、僕は鈴谷凛子さんという女性と知り合った。彼女は大学で社会科学を中心に研究をしていて、知り合った時、彼女は僕に向かっていきなりこう訴えた。
「一に“予防”、二に“ケア”、“排除”は最終手段です。あなたは間違っています」
……どうやら彼女は、僕が“私的制裁の禁止”や、“傷害罪”を犯している“問題有りな人間”である事を知っているらしかった。そして、僕がそのような罪を犯しているのは、“問題有りな人間”を成敗する為だと、どうやら彼女はそう思っているようだった。つまり、ダークヒーロー気取りなのだと。
暴行をしたり、騙したり、ズルをしたり。
残念ながら、そういった迷惑な行動を執る“問題有りな人間”が世の中にはたくさんいる。鈴谷さんは、そういった人間に対する対処方法の一番は“予防”だと言っているのだ。“問題有りな人間”が生まれないように何らかの予防を試みるべきだ、と。例えば、食生活の改善で栄養不足や偏りを治したり、睡眠不足を改善したり、まだ子供なら母性擁護の欠落を防いだり。そういった事だ。
予防ができなかったか、或いは予防に失敗して“問題有りな人間”になってしまったなら、今度はケアを試みる。相談に乗り、就職先を世話したり、場合によっては治療をしてみて、問題行動を起こさないようにアプローチをするのだ。本人に改善の意志があったなら、これは成功する可能性がある。アメリカでは、そういったケアを行う専門の精神科医がいるのだそうだ。今も活動しているかどうかは知らないけど。
――そして、それでもどうにもならなかったら、最後は“排除”しかない。
……と言っても、現代日本社会において、民間にそれは許されていないから、まぁ、司直の手に委ねる事になるのだけど、とにかく、理念としてはそのような事だ。
――だけど、彼女は勘違いをしている。
いや、僕は彼女の考えが違うとかそういう事を主張するつもりはない(そもそも僕は、“問題有りな人間”への対応に何ら理念なんて持っちゃいない)。
何しろ、僕は悪人の成敗なんてまったく考えていないんだから。正直に言って、どーでもいい。
僕はただただ白鳥さんを護りたかっただけなんだ。彼女が仕合わせに暮らせさえするのなら、それで良い。
僕はダークヒーローなどではなく、ただの異常なストーカーだと思う。




