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吸血鬼は夜に舞ふ  作者: 凍霜
二章『憑依編』
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八話 吸血鬼ノ館

アリス・・・お前・・・

 中央処刑場には、数人の教師と兵士の死骸が放置されていた。一部からうめき声も聞こえる。返り血を浴びたカイルとヴェスは、死体から少し離れた場所に座っていた。


「……。男だけはつまらないな。お前のせいで臨時用の血液も無いし、もうクタクタ。あー、家に帰ればよかった。飲んどくべきだった……」


 ヴェスは文句を吐き続けた後、空を仰いだ。


「家……?」

「そう、家。吸血鬼の一部が住んでいる、館。俺の家だ」

「家……」


 カイルは家にいた記憶が無い。また四つんばいも出来ない小さな時に、孤児院に連れて来られたと聞いている。ここ最近になって戦士育成学校に入学した。


「来るか? ――紹介したい」


 空では鳥達が、下の残酷な様子を知らずに、悠々と飛んでいた。


「じゃあ、行く。どうしたらいい?」

「飛べるか?」


 ヴェスは、背中に付いている、黒く、小さい羽を見せ付けるように羽ばたかせた。


「無い。羽自体無い」

「まぁ、人の生血を吸ったんだ。その内、生えてくるだろうよ。俺がお前を連れて行く。……先に行きたい所あるか? 荷物取る?」


 ヴェスは、紹介ついでに住まわせたい様だった。カイルは、人の血液が付着した剣を、ヴェスに返す。


「寮で、いろいろと取りたい物がある」

「うわ。じゃあ、途中で休憩しながら行くか。ぶっ通しで行ったら、俺、日光で死ぬから」


 面倒くさそうに立ち上がったヴェスは、両腕でカイルを持ち、羽を精一杯バタつかせ、寮へと向かって行った。


「重いな、お前。お陰で重心がふら付く」


 苛立ったカイルは何も言わなかった。




 寮。今は授業中で、誰もいない時間帯だ。カイル達は正面からではなく、直接窓を突き破って入室した。


「久しぶりだな、この部屋。よし、荷物整理しろよ」


 ヴェスは、椅子を日光の当たらない所に移動させて、仮眠を開始した。

 カイルは本校指定の鞄に、冬期ブレザー、下着……と、まぁ様々な物を詰め込んだ。遠足でも旅行でもない。断じて違う。

 詰め終わって、鞄を抱えたカイルは、自分の部屋を名残惜しそうに見た後、仮眠を通り越して熟睡中のヴェスを手で突く。


「終わったか……。まったく、寝させろよ」


 ヴェスは、しばらく眠たそうに大きな欠伸をしていたが、いつもに戻ると、窓から下に飛び降りた。カイルもそれに続く。


「行くか」

「……。ああ」


 ヴェスは、館の方角に、カイルを持って向かって行った。




 カイル達が館に着いたのは、夕方頃だった。

 周りは木で囲まれており、薄暗い。


「ここが館だ。入るぞ」


 大きな扉を開けて入ろうとすると、カイルの足が柔らかい『何か』を踏みつけた。


「……げぶ」


 柔らかい『何か』は、人の形をしていた。うつ伏せ状態で眠っている。

 カイルは、下を見て硬直したと思ったら、そのままぶっ倒れた。女性だったからである。

 これに困ったヴェスは、二人を引いて中に入り、アリス達が待つリビングに連れて行き、任せた後、ヴェスは自らの部屋にこもって、寝てしまった。

 リビングに連れて来られたカイル達をどうするか。困ったのは、アリス達だ。無言で置いて、そのまま出て行ったヴェスから、何も聞いていない。


「姉貴、どうする?」

「あ、この前のカッコいい男の子だわ!」

「よし、逃げ出さないようにしておくかな」


 近くに放置されていた縄を持って、縛ろうとするルージュを、アリスは引きとめた。


「まだ駄目」

「何故? いつ起きるか分からないぞ?」


 アリスは、何故か常備されていた(クロロホルム)を取り出し、彼の鼻と口を薬が染み込んだ布で覆わせた。


「いつも思うが、姉貴。何故そんな危険な物を――」

「企業秘密」


 アリスは言葉を遮り言った。そして、妹であるアリアに、微笑した。


「……」


 勿論、アリアはドン引きだ。


「何する気なの?」


 ルージュは、顔を引きつらせて問う。ちなみに、答えは既に分かっていての問いだ。


「何って……観賞よ。きっと、鍛えられた筋肉は、美しい曲線を描いているに違いないわ! そりゃあ、こんな物は使いたくないけど、途中で起きられたら大変じゃない? だから、こうするのよ。これは上等だわ。逃さない……!」


 ドス黒いオーラがアリスを覆っていたため、二人は身を寄せて退いた。顔が強張っている。

 布を外し、アリスはそこで興奮して、とうとう鼻息を荒くした。


「姉貴……頼むから自室でやってくれ……!」

「隣で倒れている子、どうするの……」


 ワイシャツのボタンを上一つ外したアリスの耳には、二人の声など入らないようだった。


「こういうのはね……。ゆっくりと観賞するのがいいのよ……」

 二つ目のボタンを外す。


「うわぁ、いい身体しているじゃない……。やっぱり、イイ男ね」


 理性をすっかり失った彼女は、カイルの腕に噛み付いた。噛みつつも、三つ目のボタンを外す。


「うわ。不味いと言ったら不味いし、美味しいと言ったら美味しいわね。人間の味と吸血鬼の味が一気に……」


 飲むのをやめたアリスは顔を上げて、暫く肉体観賞した後、鼻血を吹いて後ろに倒れた。


「……我が人生に悔い無し……」


 仕舞いには、そのまま動かなくなってしまった。


「……嬉しそうな顔」

「さて、アリスも死んだ事だし、危険人物として縛っておくか。何故かボタンが三つ外されている人と、よく分からない女を」

「姉貴……。本当に筋肉好きだよな……。生きてるのかー?」

筋肉フェチの人が近くにいたので、ちょっと使ってみた。描写やらアリスの言葉は想像。よく解らん。

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