再開
30分後、搭載した爆弾をすべて投下しきった人類軍の爆撃機は後退していた。
そして、周囲の煙が少しずつ晴れていき、
人類軍の歩兵が阿賀野たちを包囲する頃には、
煙に代わって炎が黒焦げになった森を取り巻く地獄のような状態になっていた。
全世界へ使徒が死んだとのアナウンスがされていた。
しかし、死んだのはどうやら1人だけのようだった。
こんな状況で生きていられる生物がいるとは到底信じられなかったが、
周囲を警戒しながら爆弾の着弾点の中心を確認しようとしていた。
周囲は炎に包まれており近付くことは難しかった。
「本当に奴はまだ生きているんでしょうか…」
一人の兵士が望遠鏡を覗きながら呟いた。
誰もが同じ思いであった。
だが、次の瞬間、周囲の兵士の姿が一瞬で消えた。
それを見た兵士がすぐに本部へ通信を入れた。
「こちらの兵士が消し飛ばされました!
おそらくまだ奴は生きています!!」
それと同時に更に悪い知らせが入った。
全世界の空に写ったのはガイドの姿であった。
「ここまで激闘を繰り広げた人類の皆さま、ご苦労様でしたァ!
ついに使徒は最後の一人になりました!
ここで一つ重大なお知らせがありまァす!」
ガイドは意地の悪い笑みを浮かべながら続けた。
「一部のみなさんは勘づいているとおり、
使徒が死ぬごとに生き残った使徒には特典が授与されまァす。
それは今までは発表はしていませんでしたが、
今回は最初で最後の大きな大きな特典なのでこうして全世界にお伝えしまァす!
そ・れ・はァァァァ!?!?」
ガイドは突然調子を変えて、流暢にそして冷静で残酷に説明した。
「最後に残った使徒は、ただ一人だけ人を指名できます。
そして、その指名された人は特別に、
8人目の新たな使徒として活動してもらうことになります」
「くそッ!厄介な特典だ」
アメリカの人類軍総司令本部でこれを聞いていた人類軍総司令のケディは悪態をついた。
(だが、ここまで追い詰めることはできたんだ。
問題はない。
これまでと同じように着実に攻めるだけだ)
ケディは一息付くため、指令室を出ていった。
阿賀野は迷彩化を保ったまま、軍への強襲を続けていた。
声にならない声で半ば呻きながら戦っている。
彼の能力は強化した能力の持ち主が死亡した際に、
その能力を100%引き継ぐことができるため、
ヴァリオを除くすべての使徒の能力を全開で使うことが可能になっていた。
通常であれば、ほぼすべての能力を同時に使用している今の状態は消耗が激しく、
10分と持たないはずであったが、不思議と息切れする気がしなかった。
いや、もう消耗を気にすることすら忘れて憎しみに身を任せて暴れているというべきか。
迷彩化して気配を遮断しているものの、
強大になりすぎた阿賀野の気配の残滓を人類軍の兵士は感じ取っていた。
「奴は…!どうなっている!?
これだけ能力を使えばそろそろ限界が来るはずじゃないのか!!」
「脳のリミッターが飛んじまったんだ……」
そう呟いた兵士たちもすぐに消し飛ばされる。
荒れ果てた山中に雄たけびが轟いた。
そこから、阿賀野は本能のままに戦い続けた。
やがて迷彩化は失われたが、それでも人智を超えた速度で移動しながら、
防ぐことのできないダリルの能力を使用する化け物は、
もはや誰にも止められなかった。
覚えているのは、ただただ目の前に立ちはだかる敵は、
すべて消し飛ばさなければならないという、
どす黒い感情があったことだけである。
そして、どれくらい経ったかわからなかったが、
気が付けばどこかわからない山中の林で捨てられたボロ雑巾のような状態で倒れていた。
「芳樹……!」
異形の者を見つけるなり近寄ってきた少女がいた。
それは阿賀野の幼馴染で彼を送り出した麻衣であった。




