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藍那の家

 藍那たちを乗せた車は、とある一軒家に止まった。

 周りも同じような家が建ち並んでいる、

 どこにでもある住宅街の真ん中であった。

 近くには地元の子供たちがよく遊びにいく雑木林のある小さな山がある。

 藍那も昔はよくこの山まで遊びに来ていたことを思い出していた。


「ここが今住んでる家だ。さあ入って」

 父親に促され、藍那たちは家に上がった。

「2階の上がって突き当りの部屋が藍那の部屋だ」

 そう案内すると、藍那の父親は奥の部屋へと消えていった。

 2人はやや拍子抜けしたが、言われるがままに2階へと向かった。

 部屋のドアを開けると、机やベッド、本棚が並べられていた。

 藍那の部屋は驚くほどきれいに整えられていた。


「自分の部屋なのに初めて入るなんて変な感じ」

 藍那は少しおかしそうにベッドに腰かけた。

「芳樹も座りなよ」

 藍那は少し奥に詰めた。

 ベッドに座れということなのだろう。

「じゃあ、一息つかせてもらうよ」

 そう言って彼女の横に腰を下ろした。

 しかし、相変わらず警戒は解けなかった。

 むしろ住宅街の真ん中であるため、

 いつも以上に気を張り巡らせる必要があった。


「とりあえずしばらくは交代で気配遮断をしよう」

 少し表情が和らいでいた藍那であったが、

 すぐに今までの張りつめた表情に戻った。

 それは以前よりも寂しそうな表情であったが、

 阿賀野はできるだけ顔色を変えずに続けた。


「いくら僕も気配遮断を使えるようになったとはいえ、

 いや……使えるようになったからこそわかるけど消耗が激しい。

 いつまでもここにはいられない」

「わかってるわよ」


 藍那は視線を落として俯いた。

 阿賀野ははっとして謝った。

「藍那の故郷に行こうって言ったのは僕なのにごめん」

「ううん、しょうがないよね」

 そして、伸びをしながらベッドに横たわった。

「とりあえず、お父さんと話してきたら?」

「うん。でもその前に一休みする。

 芳樹も寝る?

 疲れてるでしょ」

「そうしたいところだけど、

 まずは僕が気配遮断を使っておくよ」

 そう言うとベッドから立ち上がり、

 部屋の反対側の壁に寄り掛かり座り込んだ。

「じゃあ私はお父さんと話してくるけど、あんま部屋漁らないでね」

「わかってるよ」


 阿賀野は苦笑した。

 藍那も少し満足したような笑みを浮かべると、

 ベッドから飛び起きて、部屋を出ていった。


 そのあとで、阿賀野はこれからのことを久しぶりにじっくりと考えてみた。

 すると、ふと恐ろしい考えが頭をよぎった。

 自分でもここまでの考えが出てきたことに愕然とした。

 それをしっかりと吟味している時間はないまま、

 藍那たちに呼ばれてリビングに向かった。


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