友達
召集権で日本にやってきてから数日が経ち、
2人は藍那の故郷にやってきた。
もはや、使徒としての能力が高まり過ぎたため、
視覚的な迷彩では人々に勘づかれてしまうので、
気配さえも遮断する完全迷彩をまといつつ移動し、
ここまでやってきたのであった。
移動中の藍那の消耗はとりわけ激しく、
途中で休憩をはさむ必要があった。
阿賀野はこのタイミングでの襲撃を恐れたが、
消耗時には顔を見られない限りは使徒だと悟られることはなかった。
「ここが藍那の通ってた学校か」
2人はとある高校の前に立っていた。
阿賀野は完全迷彩にしたうえで、藍那自身は気配のみ遮断させていた。
度重なる能力の使用により、細かい調整が効くようになっていた。
傍から見れば、1人の少女がおどおどと門の外から学校の様子を窺っているように見えている。
ちょうど下校の時刻であった。
意を決して校内に入り、ゆっくりと歩いていると声をかけられた。
「藍那……藍那なの……!?」
振り返るとそこには、藍那の友人が立っていた。
「凪咲……」
名前を呼んだ瞬間、抱きしめられた。
「今まで……大変だったでしょう……
何もしてあげられなくてごめんね……」
「ありがとう…」
2人は泣きながら抱き合っているが、下校が始まっており、
生徒たちの喧騒が校庭にも響いてくる。
「とにかくここにいたらまずいよね。
とりあえず校舎の裏から教室に行こう。
みんなもきっと会いたがってる」
凪咲は涙を袖で拭きながら藍那の手を引いた。
その後、藍那たちは教室に向かった。
凪咲は藍那と親しかった者のみを教室に集めた。
その間、藍那はトイレの個室で待っていることになった。
迷彩化されている阿賀野もそのまま付いていったが、
安全確認も兼ねてトイレの外で待つことにした。
そして、30分ほど経って藍那は凪咲に手を引かれ教室へとやってきた。
教室に入ると、藍那の友人たちが集まっていた。
「本当に藍那だ……」
みな涙を流しながら再会を喜んでいる様子であった。
藍那も目元を拭いながら友人との再会を喜んだ。
阿賀野は迷彩化して姿を隠しつつ、教室の隅から微笑ましげに様子を見つめていた。
そこへ、別の生徒が更に教室へ入ってきた。
「芽衣も来たんだね」
しかし、何か様子がおかしかった。
そわそわして何かを恐れているような様子があった。
「どうしたの芽衣?」
ガタガタと震えだし、突然藍那を指差し叫んだ。
「ここです!ここに使徒が来てます!!早く来てください!!」
廊下の方から数人が駆けてくる音が聞こえる。
教室にいる友人たちも絶叫する。
阿賀野は藍那に近付き、一度迷彩化を解除し声をかけたが、
彼女に反応はなかった。
(せめて迷彩化してもらいたいところだけど無理そうだ。それなら……)
藍那の手を引いてその場から駆け出そうとしたが、
むしろ彼女の方から手を引いて逃げることを促してきた。
「待って藍那!」
凪咲が呼び止めようとするが、その声は彼女には届かなかった。
(やっぱり、もう信用できる人なんていないんだ……)
とにかくどこか遠くへ行こうとする藍那に、
阿賀野はいつもとは逆に手を引かれながら無言で走っている。
藍那の涙が後ろにいる阿賀野にぽつぽつと当たっていた。




