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暗躍

 阿賀野たちはとある山奥に到着していた。

「なんで、よりによってこんなとこを選んだの」

 藍那は低い声で阿賀野に尋ねた。

 その目は腫れており、暗い表情をしていた。

 しかし、阿賀野は何も答えなかった。


「まさか、どうせもうすぐ死ぬとか思ってるの!?

 だからせめて最後は日本だなんて考えたの!?!?」

 辺りは静まり返っている。

 藍那の問いには何も返ってこなかった。

 阿賀野はただ彼女をじっと見ながら告げた。


「藍那は会いたい人とかはいないの?」

 阿賀野の頬に平手打ちが入り、音が響いた。

 だが、彼はただ藍那に優しいまなざしを向けるだけであった。


「とうとう2人になっちまったなァ!

 またまた強化される、ぞ……」

 2人のもとに現れたガイドは阿賀野の激しい憎悪と殺意のこもった、

 今までに経験のないような鋭い眼光を向けられ、思わず言葉を詰まらせた。

「まァまァ、落ち着けって。

 これは業務連絡みたいなもンなんだよォ。

 お前さんたちの使徒としての気配が能力の強弱に呼応するようになったぞォ。

 つまり、消耗しているときは気配を察知されにくくなったんだァ」

 演技なのかはわからないが、

 今回は調子を落として使徒の死亡による強化の内容を告げた。

 阿賀野がダリルの能力を使おうと、

 左手首を右手でつかもうとした瞬間にガイドはそそくさと消えていった。


「話を戻そう。

 とにかく、このままここで野宿していてもしょうがないし、

 藍那の故郷でも行ってみないか?」

 やや気圧されたのか、藍那はこっくりと頷いた。 


 国連本部人類軍ブリーフィングルームにて、

 人類軍総司令のケディは報告を受けていた。

「やはり日本は表立っての協力はできないとのことでした」

 会議の結果の報告書を読み上げる部下にうんざりとした表情を浮かべながら、

 ケディは報告を聞いている。

「これが日本の各主要新聞社の記事を翻訳したものです」

 差し出された書類を手に取り、けだるげに目を通す。

 流し読みであったが、最後まで読む必要を感じず、

 それらを机の上に放り投げた。

「平和ボケが現実逃避に昇華したようだな」

 記事に書かれていたのは、政権交代を目論む野党による与党への退陣要求であった。

 さらには、憲法遵守による平和的解決と言えば聞こえはいいが、

 盲目的で他の意見や事実をまったく考慮していない訴えが挙がっていた。

 一方の与党も、責任追及を逃れるための消極的な回答をするだけで、

 方針を何一つ見出せていなかった。


 この日本政府の対応により、人類軍は数日間の硬直状態から抜け出せないでいた。

「あそこまで追い詰めたならあと一押しなのに!

 アレまで送ってやったのになんて奴らだ!!」

 机を叩いて嘆く部下を、ケディはただ苦々しい表情で見ていたが、

 思い出したように1つ付け足した。


「確かに日本という国はあまり表立っては動かないようだが、

 奴らもそこまで日和っているわけでもないはずだ」

 煙草に火をつけ、繰り返した。


「表立ってはね……」


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