破壊の代償
ヴァリオはようやく、先ほど倒された兵士たちの蘇生を終えた。
10時、11時、12時、1時、2時の5方向から兵士が阿賀野たちに銃を向けている。
「それしかないんですね」
「ああ、どの道奴をここで倒さなければ俺たちに未来はない」
ダリルは阿賀野たちに作戦を示した。
「阿賀野、頼んだぞ」
ダリルに肩を叩かれた阿賀野は無言で頷き、
一度目を閉じて深呼吸をした。
そして、盾を解除した。
その瞬間、それぞれの方向から銃撃される。
右方向は藍那が、左方向はリラが盾を発現させ防いだ。
正面はダリルが能力を発動して消し飛ばした。
しかし、ヴァリオの体がすぐに再生していく。
「何度やっても無駄です!!
潔く人類のために死になさい!!」
その瞬間、ダリルは叫んだ。
「阿賀野、今だ!」
阿賀野はダリルの後ろから肩に手を置き能力を発動した。
「アビリティ・ライズ」
ダリルは能力を発動するために掴んでいた左手首をより強く握った。
「どれだけ破壊しようとも私は蘇りますよ。
1回私を殺すのに消耗が大きいのは、蘇る私ではなくあなたの方です。
消耗戦など無駄なのです!!」
ダリルは眉間にしわを寄せ、ヴァリオだけを凝視した。
「おや、これは?」
ヴァリオは異変に気が付いた。
「ダリルさん、あなたはまさか……」
抵抗するヴァリオは汗をかき始める。
「私の信仰心を破壊しようとしているッ!!」
ヴァリオは銃を発現させ、ダリルを撃とうとしたが、
脳が激しく揺さぶられる感覚がし、頭を抱える。
「愚かなことを!!」
さらにヴァリオは先ほど消し飛ばされた後方の兵士を復活させるスピードを速めた。
蘇った兵士はダリルに向けて発砲する。
横にいる藍那とリラが防ごうとするが、
ダリルの視界に異物を入れると妨げになってしまうため、
防ぎ漏らした銃弾がダリルの右肩や腹部に当たる。
ダリルは叫び声を上げた。
「うおおおお!!!!」
被弾した箇所以外にも、
能力を激しく使用しているため吐血し、
目からも出血する。
ヴァリオも金切り声のような叫び声を上げながらダリルの能力に抗う。
ダリルはさらに被弾するが、それでも倒れない。
ヴァリオも目や鼻から出血し始めたが、
それでも抗い続ける。
そして、終幕は訪れた。
ダリルがその場に倒れ、吐血した。
一方のヴァリオは血と汗の混ざった顔で大きく息を切らしながらも立っていた。
「わ、私の勝ちだ……!」
ヴァリオは天を仰いだ。
「私が勝ったのだァァァァァ!!!!」
笑いながら兵士に命令した。
「さァ、残った奴らを早く片付けるのです!!
一斉掃射です!!
最後のグレネードを使うのです!!
私ごとやってかまいません!!!」
兵士たちは残りの弾薬をすべて使い切るつもりで、
ヴァリオごと阿賀野たちに一斉掃射を始めた。
ヴァリオの甲高い笑い声が響く。
「あははははァ!!!
これで私の罪は許されます!
これで私は救われるのです!!」
ヴァリオは銃撃を受けその場に倒れた。
そして、いつものように能力で蘇ろうとしたときであった。
「あれ?なんだ、これ」
ヴァリオは違和感に気付いた。
「何を……信じたらいいんだ……?」
ヴァリオは吐血した。
猛烈な悪寒がしてくる。
「おかしい!!どういうことだッ!?!?」
ヴァリオはそのうち目が見えなくなってきた。
「神は……?
神?神ってなんだ?
神は、どこにィィィィ!!!???」
ヴァリオは白目を剥き絶命した。
体中にはいくつもの穴が開いていた。
血が滴り過ぎて沼のようになっている。
その表情は苦痛と狂気にまみれていた。
「お前は、最後には神ではなく自分自身を信じた」
ヴァリオはダリルの能力に打ち勝ったかのように思えたが、
最後にはダリルの能力に自分は勝つという、
神ではなく自分の信仰心を信じていたのであった。
兵士の一斉射撃は藍那とリラで辛くも防いだ。
しかし、すべては防ぎきれず、
その大半は動けないダリルに被弾していた。
彼は最後の力を振り絞った。
前方の兵士が消し飛ばされる。
続いて、右方の兵士もやや遅れて消し飛ばされる。
左方の兵士も消し飛ばそうとしたが、
もう能力が発動できなかった。
充填を終えた左方の兵士が再び発砲しようとしたが、
阿賀野がダリルの能力を使い消し飛ばした。
周囲の敵をすべて殲滅すると、
阿賀野たちはダリルの近くに寄った。
もはや治療は手遅れであった。
3人は泣き叫びながら何かを言っているが、
ダリルはよく聞こえていなかった。
真上の太陽に向かって震えながら血まみれの手をかざすと、3人の方を見る。
「お前たちに、会えて……よかった」
ダリルはそう言い終えると力尽きた。




