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一瞬の別れ

 阿賀野たちは常にリラの能力で感知をしながら、

 なるべく敵に出会わないように進んだ。

 幸い、作戦通りにいき、騒ぎのあった基地外部に比べ、

 一部の部屋を除き内部の兵は少なかった。

 一応阿賀野たちも拳銃を所持していたが、

 扱いには心もとなかったため、

 実質の攻撃担当はダリルのみとなっていた。


 倉庫を出て100mほど進んだところで、

 リラが立ち止まり、小声で言った。

「この先左の角に敵がいます。避けられません」

「わかった」

 ダリルは短く答えると、角を曲がって飛び出すとすぐに能力を発動した。

 兵士2名の体が消し飛んだ。

 ダリルの能力も成長し、視界すべてではなく、

 一部だけを選択して消し飛ばすことが可能になっていた。

 そのまま進んでいき、丁字路に突き当たった。

 ここでもリラは敵を感知し、再び小声で伝えた。

「ここは左右に2名ずつ敵がいます」

「片方は俺に任せてくれ」

 アレスがダリルに並び出た。

「右は任せた」

 ダリルはそう言うと、左に飛び出した。

 兵士が銃を発砲するより早く能力を発動し、兵士を消し飛ばした。

 一方のアレスに気付いた兵士は銃を撃った。

 しかし、アレスは右手を前に構え、盾を発現させ、攻撃を防いだ。

「俺だって特訓したんだよ!!」

 アレスはそのまま盾を回転させ、兵士の方に投げつけた。


 彼の能力は絶対防御である。

 その盾はそこに存在しているという事実を決して変えることのできないものであり、

 それ故に盾の後ろにいればどんな攻撃も当たらない。

 彼はこの性質を活かし、刃として使用することで攻撃も可能にしたのであった。

 さらに、能力の成長により盾をある程度自由に動かすことができるようになっていた。

 アレスが放った盾は端が鋭くなっており、

 刃のように変化していたため、兵士の体がそれぞれ真っ二つに裂けた。

 そして、兵士2人の体を通過した後、盾は消滅した。

 アレスは息を切らしながら呟いた。


「人を殺すってこういう感覚なんだな……」

「感傷に浸っている暇はない。

 今の音で援軍が来る前に進むぞ」

 そう言ってダリルは、死体を消し飛ばすと走り出した。

 彼に阿賀野とリラも無言で付いていく。

 アレスは自分が仕留めた兵士の死体があった場所を一瞥すると、

 すぐにダリルたちの後を追いかけた。

「あの十字路を右に曲がった突き当たりの部屋です」

 阿賀野たちが基地に侵入してから10分弱が経っていた。

 できるだけダリルの能力で敵を消し飛ばし、

 痕跡を残さなかったため、阿賀野たちが侵入していることは軍にはまだ判明していなかった。

 ダリルはリラに部屋の内部と周辺の敵の配置を尋ねた。

「室内の四隅に3人ずつと、部屋の外に6人。

 それから、この通路のそれぞれの方向から部屋に向かって来ています……」

 つまり、どこにも逃げ場はなく、敵との遭遇は避けられない状況であった。

「通路は俺が押さえる。

 時間がない。芳樹、力を貸してくれ」

 アレスは盾を発現させるべく、右手を構えた。

 阿賀野も彼の肩に触れ、能力を発動させる。 

「アビリティ・ライズ!」

 十字路になっている通路の、

 アルダたちが捕らえられている部屋以外の3方向に盾が発現し、

 道を塞いだ。

 それを待たずにダリルとリラが部屋に向かうべく、

 十字路を右に曲がった。

 すると、20Mほど先の正面にドアが見えた。

 その周りに固まっている兵士たちに見つかる。


「あいつらだ!撃てぇ!!」

 しかし、それより早くダリルが能力を発動し、兵士を消し飛ばした。

 だが、通路の死角になっていた兵士が生き残っており発砲した。

 銃弾はダリルの左肩に命中した。

 ダリルはのけ反り倒れながらも能力を使うべく、

 目線を兵士から離さなかった。

 しかし、ダリルは直前で能力を発動するのを断念した。

 激しい頭痛がダリルを襲い、動けなかったためである。

 今日だけで今までにないほど能力を使用しており、

 脳にはかつてない負担がかかっていた。

(今頃になって来るのか……!)

 兵士は部屋の内部に敵の襲来を知らせると、またダリルに銃を向けた。

 そして、引き金を引こうとしたとき、別の発砲音がした。


 その主はリラであった。両手で拳銃を持ち、震える手で発砲した。

 発砲した弾は兵士の左腕を貫いていた。

 ダリルはその隙を見計らい、右手でなんとか拳銃を抜き発砲した。

 弾は兵士の頭に命中した。兵士はその場に崩れ落ちた。

 一方、アレスと阿賀野はリラの感知した通りにやってきた兵士めがけて、

 先ほどと同じように盾で攻撃し、敵を殲滅していた。

 その直後に発砲音がしたため、

 2人はすぐにダリルたちのもとに駆けていった。

「ダリル!どうしてこうなった!!くそ!!!」

 アレスと阿賀野は、倒れている兵士と座り込みながら右手で左肩を押さえているダリルと、

 震えているリラを見ておおよその状況は察していた。


「部屋には俺と芳樹で突入する。リラ、ダリルを頼む」

「待て、お前たちでは無理だ」

 ダリルも立ち上がろうとするが、アレスが止める。

「俺だって能力の使い方を工夫すれば十分戦える。行くぞ芳樹!!」

 止めようとするダリルを背にアレスは部屋に入っていった。

 阿賀野もダリルをすぐさま治療すると、その後を追いかけた。


 アレスは部屋のドアを勢いよく開け、

 入った瞬間に阿賀野と同時に能力を発動させた。

 部屋の四隅にいる兵士たちをいくつもの盾が囲み、

 閉じ込めた形となった。

 これで一旦室内の敵はすべて無力化できたかに思えた。


「アレス危ない!!」

 突然ドーラがアレスの方に飛び込んだ。

 それと同時に発砲音が室内に轟いた。

「ドーラ……?」

 アレスは困惑しながら、倒れたドーラを抱きかかえた。

「アレス!」

 部屋の中央にいるアルダたちがアレスの後ろを指差し叫ぶ。

 これとほぼ同時に阿賀野は能力を発動させ自己強化する。

「アビリティ・ライズ!」

 ドアの死角にかがんでいた兵士が次に発砲するより速く、

 阿賀野は兵士の顎を拳で撃ち抜いた。

 兵士はそのまま気絶しその場に倒れる。

 阿賀野はアレスの方を振り返る。

「一人捕らえ逃していたなんて……バカな……」

「そんな……私確かに感知していたのに……」

 リラも涙を流しながらドアの外で崩れ落ちる。


「ドーラ……?返事をしてくれよ……」

 ドーラは薄く目を開け、アレスの頬に手を当てた。

 そして、今にも消え入りそうな声でアレスの名を呼びながら何かを語りかけた後、

 四隅の兵士が騒ぎ立てる喧噪の中で静かに息絶えた。

 アルダたちの方から悲鳴が上がる。


「うあああああああああ!!!!」


 アレスは半狂乱の様子で叫びながら四方の盾を操作した。

 部屋の四隅にうめき声と血しぶきが舞った後、

 彼の嗚咽だけが静かに部屋に響いた。


(くそっ、俺が突入していれば……なぜフィルソヴァの感知から逃れられた?)

 阿賀野の倒した兵士を確認していたダリルは、

 兵士がペンダントをしていることに気が付く。


(なんだこれは……どこかで見覚えがある)

 ダリルはペンダントを手に取るべきか悩んだが、

 阿賀野の声にはっとしてやめておくことにした。


「……アレス、ほかの奴らに見つかる前にここを脱出しなくちゃ」

 阿賀野が静かに提案する。

 アレスはそっとドーラをその場に降ろし、彼女の目を手で閉ざした。

「……わかってる。行こう」

 アレスは静かに立ち上がった。

「まだエドガルドが別の部屋で捕まってるの……」

 ローザが震える声で告げた。

「ここまで来たんだ。絶対に助ける。リラ、場所はわかるか?」

 リラは涙を拭った後無言で頷き、阿賀野の方を見た。

 阿賀野はリラの肩に手を置いた。

「アビリティ・ライズ」

 リラは目を閉じた。そしてすぐに、次の行動に移った。

「場所はわかりました。しかし、敵が迫っています」

「お前たちもこのまま一緒に来てくれ。もうそれしかないんだ」

 アレスが促すまでもなく、アルダたちは彼に付いていくことを決めていた。

「さようなら、ドーラ……」

 アルダたちはドーラに別れを告げながら、部屋を後にした。


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