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追手

 その後阿賀野たちは軍の兵士を1か所に集め、置き去りにすることに決めた。

 村人たちはそれぞれ別の街に住む親戚などあてのある者はそこに避難することにし、

 あてのない者も別の村に移住する等し、この村を放棄することとなった。


 阿賀野たちは今夜にも召集権を行使し、落ち着いて対策を立てるために、

 ダリルの兄ザリルの家にもう一度行くことにした。

 元々脱走兵であり、軍から逃げることを考えて作られた場所であるため、

 そう簡単には見つからないであろうとのことであった。


「本当にありがとうございました。どうかお気を付けてください」

「そちらこそ。

 また捕まりでもしたら俺たちのことは話してもらってかまわない」


 村人たちの礼に対し、ダリルはいざというときには尋問からは解放されるような助言を残した。

 阿賀野たちは能力の詳細やいきさつなど、

 ほとんどの情報は村人たちに話しておらず、

 相手に知られた場合に特に致命的になるような情報もなかった。


 一通りのやり取りが終わり、村人たちはこの村を去って行く時間になった。

 阿賀野たちは軍が再び攻めてくる恐れがあったため、

 残りの村人たちを見送ったうえで、

 一番最後に召集権で旅立つこととしていた。

 村人たちは車のないものは固まり、

 全員で森を抜けてほかの村へと向かうことになっていた。


「おばあちゃん、これで本当にさようならです」

 リラとエレーナは涙を流しながら抱擁を交わした。

 そして、エレーナもまた村を出る一行の列に加わっていった。

 阿賀野たちは村人の一行がすでに日の暮れた森の中の道なき道を進んでいくのを見送った。


「そろそろ俺たちも行くか」

 村人たちが見えなくなり、出発しようかとアレスが提案したときであった。

 閑静な村に微かな振動交じりの何かの音が聞こえた。

「何か音が聞こえる……」

 藍那が呟いたのとほぼ同時にダリルが叫んだ。

「フィルソヴァ!!能力を使え!!!」

 リラは涙を拭い、目を閉じた。

 そして、すぐに叫んだ。

「軍が迫ってます!!みんな逃げて!!!」

「応援部隊か。今すぐ召集権を使うぞ!!」

 ダリルはすぐに召集権を行使した。

 阿賀野たちの体が光に包まれながら宙に浮いていく。

 5mほど上昇したところで、迷彩色の車がこちらに向かって来るのが見えた。

「軍の奴らだ!」

 アレスは防御のために能力を使おうとしたが、

 召集権での移動中は能力を使えない。

「くそっ、早く終わってくれ!」

 しかし、召集権での上昇速度は緩やかである。

 上昇する間にも軍の部隊は近づいてくる。

 夜になり辺りが真っ暗となっている中、

 召集権での移動により光に包まれている阿賀野たちの位置は一目瞭然であった。

 15mほど上昇する頃には、ほぼ真下には部隊が集まっていた。


 車を急停車させ、ドアを蹴るようにして飛び出ると、すぐに銃をかまえた。

「撃てぇーー!!!」

 指揮官らしき人間が車の窓から顔を出し指示を出すと、

 車から飛び降りた4~5人の兵士が阿賀野たち目掛けて発砲し始めた。

 阿賀野の顔の右を弾がかすめる。

 それと同時にダリルの体が消え始めた。

(よし、もう少しだ。このまま無事に逃げ切れれば……)

 そう阿賀野が願ったときであった、横から悲鳴が聞こえた。


「リラ!?」

「足を撃たれたみたいです。でも大丈夫です」

 消え始めている藍那にリラは苦痛に顔を歪めながら力なく答えた。

「みんな消え始めている。もう少しだ……!」

 そう阿賀野がリラを勇気つけようとしたときであった。

 さらなる銃弾が阿賀野の左肩を貫いた。うめき声を上げる。


「すべて打ち尽くせぇ!!!」

 上官の鼓舞を受けるまでもなく、たとえわずかな時間でも隊員たちは可能な限り発砲した。


 ほんの数十秒の出来事であったが、この場にいる人間にはかなり長い攻防に感じられる重圧があった。

 しかし、やがて阿賀野たちを包む光とともに彼らの姿は夜空から消えた。


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