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突入

 集会所内では国連軍の部隊ではなくロシア軍の部隊が占領していた。

「ブズロフ少尉、外部の国連部隊から無線の応答がありません。どうしますか」

「何?ほかの奴にも発信してみろ」

 ブズロフは隊員の報告に短く答える。

 隊員は無線を村にいるほかの部隊や仲間に次々と発信するが、何も返ってこない。

「応答ありません」

「まさか、ここが当たりだって言うのか」

 集会所内部では、村人全員が集められ手を頭の後ろに抱えた状態で、

 銃を向けた兵士たちに囲まれていた。

 抵抗する間もなくあっという間にここへ集められたようだ。


「あんたの孫が来ているかもしれんぞ」

 ブズロフは感情を込めずに、捕らえられているエレーナに言った。

 彼女はただ黙っている。

「安心しろ、あんたたちには危害を加えるつもりはない。

 ただ、情報提供を求めているだけだ。

 何せ俺たちはあんたたち国民を守るために動いているんだからな」

 ブズロフは冷淡な薄ら笑いを浮かべた。

 村人たちは頑としてリラのことは話していなかった。

 軍は怖くなかったが、リラがひょっこり戻ってきて見つからないかが気がかりだった。

「その国民の一人をこれから殺そうとしてるあんたらがそれを言うのかい」

 別の村人が怒り交じりに皮肉を言ったが、ブズロフは一瞥しただけで無視した。

「さて、どうするか。援軍が必要なようだな。

 本部に報告をしろ」


 命令を受けた隊員が本部へ発信しようとしたときであった。

 突然集会所の扉が勢い良く開いた。

 集会所にいる者全員が目を向けたが、そこに人の姿は見えなかった。

「なんだ、風か?おい、誰かそこを閉めろ」

 隊員が扉を閉めようしたときに、集会所内に迷彩化を解いた阿賀野たちの姿が突然現れた。

 ダリルはブズロフの背後に現れ、背中に銃を突き付けている。

 ダリル以外は拳銃をそれぞれ兵士に向けている。

 軍の人間は完全に包囲されていた。

 兵士たちは驚いてどよめきが上がった。

「抵抗するな。おとなしく手を上げろ」

「驚いたな。本当に突然現れやがった」

 ブズロフは冷静に両手を上げた。

「リラ!」

 エレーナはリラの名前を呼んだ。

 リラもすぐにエレーナのもとへ行きたかったが、兵士を無力化させるのが先である。

 彼女は安堵の表情でエレーナを見た。

「順番に縛る。手伝ってくれ」

 ダリルは村人にも呼び掛けた。

 解放された村人たちは兵士をどんどん拘束していった。

「お前が部隊長か。着いてきてもらおう」

 ダリルはブズロフだけを外に連れ出した。

 ほかの兵士の拘束が終わるのを確認すると、阿賀野たちも集会所から出てきた。


「案外あっけなかったな」

 アレスは少し拍子抜けと言いたげに外に出てきた。

 続いて阿賀野と藍那も出てきた。

 リラはエレーナに声をかけたため、少し遅れて出てきた。


 ダリルとブズロフは集会所の裏にいた。

 阿賀野たちがやってくる頃にはダリルはある程度の情報は聞き出していた。

 今回はロシア軍と国連軍が合同で決行した作戦であること、

 本部はやはり街にあり、全部で1000人規模の作戦であること、

 対話の際に顔を記録し、可能な範囲で個人情報を広く特定していた等を聞き出していた。


「一番肝心なことをこれから聞くぞ」

 ダリルの視線が少し鋭くなる。

 ブズロフは2、3発殴られたような跡があり、

 唇を切ったのか口から血を流しており、反抗的な目をしていた。

「軍が派遣されたのはここだけか?」

 ブズロフは笑い始めた。

「どう思う?」

 ダリルはブズロフを殴った。

 ブズロフは勢いよく集会所の外壁にぶつかった。

「質問をしているのはこちらだ」

 彼は無言で口元の血を肩で拭い、ダリルを睨んだ。

 だが、すぐに薄ら笑いを浮かべた。

「いいだろう。話してやるよ」

 片膝を上げ、そこに腕を乗せてその場に座り込んだ。


「国連は対話の時にお前たちの顔を記録した。

 その後すぐに素性の調査を行った」

 ダリルが険しい表情をする。

「その結果、お前たち全員はほぼ特定できている」 

「特定できたからなんだってのよ!」

 藍那が噛み付いた。

 しかし、ブズロフはさらに笑うだけだった。

「そりゃ、特定ができたら今度はご家族の方に『お話』を伺わないとなあ」

 ダリルは鋭い眼光をブズロフに向けている。

 アレスは顔を青くし、恐る恐る尋ねた。

「まさか、お前ら俺の家族に何かしたのか!?」

「さあ、どうだろうなあ。

 ひょっとしてここと同じように軍が派遣されてるかもなあ」

 アレスは膝を落とし手を地面に付いた。

 その様子をあざ笑うかのようにブズロフは続ける。

「お前たちがおとなしく捕まえれば解放されるかもしれないぞ」

 アレスは拳を握りしめた。

「それがっ……それがお前たちのやり方だって言うのかよ!!」

 ブズロフはアレスの顔を見て満足そうな表情を浮かべた後、

 隙を突いて拘束を解除し、ポケットから手榴弾を取り出し安全ピンを抜いた。

 ニヤリと不気味な笑みを浮かべると、そのまま手榴弾を持ってアレスの方に突進してきた。

 アレスが盾を出そうとしたが、ダリルが左手首を握りしめ強い視線を向けていた。

 ブズロフの体は一瞬で消し飛ばされた。


 アレスは尻餅をついた後、力なく倒れ込んだ。

「俺は……どうしたらいいんだ……」 


 誰も答えることができず、みな無言で集会所に戻った。

 阿賀野はこのときの夕焼けがひどく不気味に見えた。


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