次の場所
ダイニングルーム戻るとすでに使徒たちは座っていた。
阿賀野とリラが戻ってくるのを見るとダリルはすぐに切り出した。
「俺が決めたいことは次の行き先だ」
「それは重要ね」
藍那は手に取っていた飲み物をテーブルに置いた。
「問題はどうやって決めるかだ」
「では、くじ引きで決めるのはどうでしょう」
ヴァリオは能力でくじを具現化させていた。
「揉めても仕方ないしこれが一番公平だな」
アレスも孤児院の集団から離れてやってきて、彼の意見に乗っかった。
ヴァリオは阿賀野たちの顔を見てくじを差し出しくじを引くことを促す。
「もちろん、私は最後に残ったものでいいです」
「じゃあ引かせてもらうわ」
藍那が最初に引いた。
それに続いて、阿賀野、リラ、ダリルもくじを引いた。
ダリルが引いたくじに赤い印がついていた。
「おめでとうございます。それが当たりです」
ヴァリオはダリルににっこりとほほ笑んだ。
「そうか。では次は俺の故郷に行くことにさせてもらう」
「これで決まりましたね。では私が明日に備えるのでそろそろ寝室に戻ります」
そう言うとヴァリオはダイニングルームを後にした。
「俺は少し街で買い物をしてから寝室に戻る。すぐに戻るので心配はない」
ダリルもまた部屋を出ていった。
「俺はまだまだここにいるけどお前たちはどうする?」
アレスはピザを頬張りながら尋ねた。
「僕も部屋に戻ります。アルダさんに料理おいしかったと伝えておいてください」
「私も戻るわ」
「私はもう少しだけここにいます」
「そっか、じゃあひとまずは解散だな」
こうして、アレスの故郷での最後の一日が終わった。
翌朝、孤児院のメンバー全員が見送りに集まっている。
アレスはひとりひとりと言葉と抱擁を交わし終えたところであった。
「アレス、それからあなたたちも元気でね」
「アルダさんもお元気で」
阿賀野たちはアルダと握手をした。
「アレス……」
ドーラは不安な表情でアレスを見送ろうとしていた。
「行ってくるよ、ドーラ」
「うん。なんだか、また会える気がする」
見送るドーラたちに背を向け、阿賀野たちは召集権を行使する。
光の粒子を残して次の場所へと向かった。
(俺はやることはやった。もうこの後は全部仲間を守るために全力を尽くそう)
アレスは孤児院以外の仲間にも感謝と満足を胸に、召集権で天に昇っていった。
*
阿賀野たちは深い森の中に移動していた。
昨日の阿賀野とリラが通行人に使徒だと悟られたことをふまえて、
安全な場所に召集権を行使して移動し、
そこから目的地に向かうというダリルの提案である。
移動が終わり、安全確認のためリラがいち早く能力を発動し、
差し迫った危険がないか確認を終える。
「とりあえずは大丈夫そうです」
「そりゃよかった。ワープしていきなりドカンじゃたまらないからな。
ところでエストランデルさん、そのペンダントはどうしたんだい?」
アレスが昨日は付けていなかったヴァリオのペンダントに気付き、何気なく尋ねた。
「これですか。これは昨日の出会いに感謝してその記念に作成しました」
ヴァリオはにっこりと笑う。
「そんな風に思ってくれていたなんて嬉しいよ」
アレスは目を輝かせた。
その後も様々な会話が続くと思われたが、
予想以上に険しい道のりであったため、
自然と会話はなくなっていった。
「なあ、ダリルさんの家は隠れ家か何かか?」
アレスは息を切らしながら尋ねる。
「そのつもりで作った」
ダリルは息一つ切らしていない。
「マジかよ……」
「何か理由がおありなのですか?」
不思議とヴァリオも息を切らしていなかった。
ダリルは後ろに続く一行の様子を一目見て、少し歩みを遅めながら答える。
「脱走兵でな。訳ありだ」
「それでサバイバル術に長けていたのですね。合点がいきました」
ダリル以外ではヴァリオだけは平然としている。
「もうすぐだ。頑張れ」
阿賀野たちは行軍のようにダリルの家を目指した。
その後、10分ほど森なのか山なのかわからない道を進んでいくと突然視界が開けた。
そこには、木造のログハウスが建っており、
小さな畑と簡素な井戸が横にあった。
上空からわかりづらくするための工夫か、適度に木や雑草が生えたままになっている。
「ここだ。少し待っていてくれ」
ダリルは到着を告げるとログハウスの中に入っていった。
数分後、ダリルの瓜二つの男が共に出てきた。
ただし、その男は片足が義足だったため、ダリルと見分けがついた。
「紹介する。兄のザリル・ムアックだ」
ザリルは朗らかにほほ笑んで手を差し出しみなと握手を交わした。
外見はダリルとそっくりであったが、内面は違うようだ。
ザリルの言葉をダリルが翻訳する。
「こんなところによく来てくれた。
あまりおもてなしはできないが、とりあえず今日は疲れただろう。
ゆっくりしていってくれ」
阿賀野たちは部屋を案内された。
あいにく、元々2人で住むことを考えて作られた家でありあまり部屋はなかったため、
阿賀野とアレスとヴァリオは同じ部屋に、藍那とリラは同じ部屋に、
ダリルはザリルと居間で寝ることとなった。
あまりいい環境とは言えないが、
険しい道を歩いてきた阿賀野たちにはとてもありがたいものであった。
阿賀野とアレスは部屋に入るなり荷物を置いてすぐに眠りに落ちた。




