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思わぬ解決

「アレス!!犯人が出頭したらしいぞ!!!」

 ジャンピエロが血相を変えながら飛んできた。

 苦手なドローンの操作と格闘していたアレスはコントローラーを放り投げた。


「マジか!誰がみつけたんだ?」

「阿賀野とリラと神父さんがその場に居合わせたらしい。

 とりあえずダイニングルームに集まってるぞ」

「すぐ行こう」


 アレスがダイニングルームに着いたときには、全員が集合していた。

 遅れて来た2人が座ると、阿賀野がいきさつを説明し始めた。


 リラの能力を一時的に強化し、犯人の居場所を特定した2人はすぐにそこに向かった。

 リラの能力を維持しながらの移動は困難だと見た阿賀野は能力を中止させて急いでその場に向かった。

 そして、その付近に到着したときに一人の男が目に入った。

 その男はホームレスだと一目でわかった。

 そして、何やらただならぬ様子であり、麻薬の類を使用しているように見えた。


 おそらくこの男に違いないと思い、2人はその男を調査することにした。

 その男は交番の目の前に立ち、警官と話をしていた。

 レコーダーで録音するため、会話の内容を聞き取ろうと近づいたところ、

 別の通行人が2人を見て指さしながら悲鳴を上げていた。

 ガイドが言っていたとおり、能力が強まってきたため、

 人でない何かであることを本能的に悟らせてしまったのだ。


 逃げるべきか狼狽していたところ、たまたま近くにいたヴァリオが現れ、

 阿賀野たちに声をかけ、一緒にここまで逃げてきたとのことであった。


「エストランデルさんの能力がなければ、きっと逃げ切れませんでした」

 リラが改めてヴァリオに感謝を告げる。

 彼は自身の能力で階段を発現し、阿賀野たちとそばの民家の屋根に昇った。

 3人が昇った後には階段は消えており、

 誰も追って来ることはできなかったのだ。

 彼らはそのような消える通り道を駆使し、

 ここまで逃げてきたのだ。

「エストランデルさんも随分と能力を使いこなせるようになってきてるなあ」

「ええ、おかげさまで」

 素っ頓狂に感想を述べていたアレスだが、一つの疑問を呈する。

「それで、そのホームレスが犯人だったのか?

 会話の内容は確認してないんだろう?」

「いや、それがその後自らが犯人だと自供し出頭したんだ。

 ジーモたちが聞いた情報なんだが間違いはなく、

 先ほど警察からも正式に公表されたらしい」

 エドガルドがアレスに補足した。


「そっか。じゃあ今度こそこれで解決したんだな」

「改めて礼を言うよ。本当にありがとう」

 エドガルドたちが阿賀野たちに深く礼を告げた。

「これで安心して次に行けますね」

 ヴァリオは柔和な笑顔を見せた。



 その日の晩はアレスの送迎会を行うこととなった。

 この日ばかりは普段は夜更かしを許されていなかった孤児院の子供たちにも参加が許された。

 アレスが冒頭に対話への決意表明を兼ねた簡単なあいさつをして会は始まった。

 基本的にはアレスの通訳がないと会話ができない阿賀野たちであったが、

 今回の事件を通してたとえ言葉の通じない異国の者であろうと、

 心を通わせることはできたと確信していた。


「家族が多いって大変だね」

 大人数に囲まれて話をしているアレスを遠目に、

 飲み物に口をつけながら藍那がふと呟いた。

 とても優しい表情で見守っている。


「そういえば、高嶺さんの家族は?」

 阿賀野がふと尋ねた。

 藍那は一瞬寂しそうな表情を浮かべたが、

 飲み物を飲み干して答えた。

「私、養子なんだ。本当のお父さんとお母さんは昔事故で死んじゃった」

「それは、ごめんなさい」

 阿賀野は慌てて謝罪した。

 しかし、藍那ははかなげな笑みを浮かべた。

「いいの。それに今の親とはあんま仲良くなかったし」

「そうですか。僕も似たようなものです」

「そうなの?」

「はい。父親は僕が生まれたころに病気で他界し、母親も去年亡くなりました」

「それで、今はどうしてたの?」

 藍那は驚いて尋ねる。

「母が遺してくれたお金で高校に通ってました。

 大学を卒業するくらいのお金はあったので、

 それまでは一人で生きていくつもりでした」

「てかあんた高校生だったの?私と同じじゃん!何年生?」

「2年生です」

「うっそ、私と同じじゃん。

 なんで敬語使ってんのよ。ため口でいいじゃん」

「すみません、つい癖で」

「なにそれ。変なの」


 思いの外共通項が多かったため2人の会話は弾んでいたが、

 藍那は一つ思い出して落ち込む。

「でも私たち、もう普通の高校生じゃないんだよね……」

 阿賀野は藍那の顔を見る。

 しかし、かけることのできる言葉が思いつかなった。

「私、飲み物取ってくる」

 そう言い残すと藍那は立ち去った。

 阿賀野は窓の外を見た。満月が輝いていた。

(ちょっと外に出るか)

 そのまま席を立ち外に出た。


 孤児院のドアを開け外に出ると、夜風が阿賀野の頬を撫でた。

 異国の地で感じる風は不思議と心地よかった。

 入口の小さな段差に腰かけて月を見上げた。

(本当に、世界の命運が僕たちにかかってるんだよな)

 目まぐるしく時間が流れて、息をつく暇もなかったが、

 阿賀野は出発して以来初めて今まで起こったことを思い返していた。

 麻衣との約束を果たさなければならない。

 そのためにこうして奮闘しているのだ。

(麻衣、無事に逃げ切れたかな)


 ふと阿賀野は麻衣の身を案じた。

 どの道今更戻ってもどうにかなるものでもない。

 自分のやるべきことをやろう、そう改めて決意した。

 すると、ドアの開く音がした。

 振り返るとリラが出てきていた。


「芳樹、隣座りますね」

 リラは阿賀野の隣にゆっくりと腰かけた。

 風に乗ってリラの髪のいい香りがした。

 思わずドキっとして前を見たまま体を硬直させる。


「いい夜ですね」

 リラが満月を見上げながら呟く。

「アンドレーエヴナさんは……」

「リラって呼んでくださいって言いました」

 阿賀野が言いかけるがリラがムッとした表情で遮った。


「あ、ごめんなさい。リラ…は、おばあちゃんと一緒に住んでたんだっけ?」

 ぎこちなくも名前を呼びながら質問するとリラはにこりとほほ笑んで答えた。

「そうです。私の両親は私が幼い頃に事故で亡くなりました。

 それ以来おばあちゃんに引き取られ、田舎町のはずれに住んでいました」

「なんだリラもか」

「どういうことですか?」

「僕と高嶺さんも両親を亡くしてるんだ。

 ひょっとして神さまはそういう人を選んだのかな」

 阿賀野が力なく笑う。

「そうかもしれませんね。でも、この家は暖かいです」

「そうだね。だからこそ僕たちはこういう家を守るために対話しなくちゃならないんだ」


「芳樹、今日はありがとうございました」

「急にどうしたの」

「芳樹がいなければうまくいきませんでした。

 犯人を見つけられないままこの街を出ていくことになったらきっと私は後悔していました」

「それはリラの能力のおかげだよ。

 結果的にはむしろ僕のせいで街の人に見つかって危ない目にもあったし」

「ふふ、敬語、やめたんですね」

 リラは阿賀野をからかった。

 阿賀野は恥ずかしくなって言い訳した。

「ほら、同年代だと自然とね……」

「いいんですよ。私もそのほうが親しみやすいです」

「でもリラは敬語なんだね」

「おばあちゃんから家族以外にはそうしなさいと教えられたので。私はこれでいいんです」

「変なの」

 2人は笑い出した。


 するとまたドアの開く音がした。

 ヴァリオがやってきた。

「おふたりともここにいたんですか」

「どうしました、エストランデルさん」

「明日からのことで今決めたいことがあるので集まってほしいとムアックさんが」

 ヴァリオに呼ばれ、2人は部屋に戻っていった。


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