バカップルの痴話喧嘩
「リオネル様世界一愛してるー!」
「アベラ世界一可愛いー!」
いつもはそんなおバカでハイテンションな会話を日常的にしている、公爵家のご令嬢と伯爵家のご子息である婚約者二人。
しかしこの日は違った。
「…」
「…」
会話が一つもない二人に、使用人達はハラハラと見守る。
「…もう、なんでわかってくれないんですか!」
アベラが突然キレた。使用人達はびっくりしてアベラを見つめる。
「リオネル様にはリオネル様だけの良いところがいっぱいあります!リオネル様はまず可愛い!そして可愛らしい見た目からは信じられないほど魔法を極めていらっしゃる!強い!かっこいい!頼りになる!そんなリオネル様こそ至高!」
それを聞いてリオネルも負けじと言い返す。
「アベラこそなんでわかってくれないのさ!」
使用人達はリオネルに視線を移す。
「アベラはこの世で唯一無二の存在なんだよ!?まず世界で一番可愛い!俺なんかよりずっと可愛い!そして剣術の達人だ!物理攻撃でアベラと勝負出来る相手なんていない!素晴らしい実力だ!世界中どこを探してもこんなに完璧な女性はいない!そんなアベラこそ至高!」
睨み合う二人。一触即発と思われたところに、通りかかったリオネルの姉が一言。
「リオネルが至高の男性、アベラが至高の女性、二人合わせておしどり夫婦でいいじゃない」
そのまま二人には目もくれず去っていく姉。リオネルとアベラは…。
「…リオネル様とおしどり夫婦」
「アベラとおしどり夫婦…」
「「…のった!」」
ということで、お互いを〝至高の異性〟として再認識して見事に仲直りを果たした二人。
一方でくだらない争いに頭を悩ませていた使用人一同は、あとでリオネルからお菓子の詰め合わせを配られていた。