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再会


 最後の屋根から飛び降りて、集合場所である公園に着地する。

 仮面を外して視線を彷徨わせると、すぐにランザの姿を見付けられた。

 その後ろにいる見知った二人の姿も。


「イリーナ、ハル」


「シンリ……」


 二人とも表情が暗い。この世の終わりみたいだ。

 事態は思ったよりも悪いのかも知れない。


「ランザ、なにがあった?」


「……実は――」


 現時点ではっきりしていることのすべてをランザから聞いた。

 キルケが人を斬り殺したこと。

 殺されたのはドーピングドラッグの売人だったこと。

 現在も逃走中で足取りが捕まえていないこと。

 内容は嘘であってほしいと思うほどに信じられないことばかりだった。


「冗談でしょ……ドーピングドラッグなんて!」


「俺も最初は信じられなかったさ。でも、思い返してみれば思い当たる節はあるんだ。急激に強くなってたし、顔色も今思えば悪かった。それになにより……追い詰められてた」


「追い詰められてた?」


「シンリを追放したせいよ」


「俺を?」


「あんたが抜けてから深層に挑戦できなくなったのよ、私たち。自分でも驚いたわ、あんたがいないと私たちこんなに何も出来なくなるんだって」


「俺たちの当面の目標は深層に挑戦できるように経験を積むことだったんだ。でも、そんな現状に耐えきれなかったんだろうな、キルケ。一刻も早くって焦って、薬物に手を出した」


「人一倍、プライドが高かったから」


 たしかにキルケの性格ならやりかねない。


「あの時、俺が食い下がっておけば」


「シ、シンリくんのせいじゃない」


「そうよ、悪いのは私たち。それにどれだけ食い下がっても当時の私たちはあんたを追放してた。どうしようもなかったのよ」


 どうしようもなかった。

 本当に?

 俺がみんなを説得できていれば、せめて時間をおいていれば、なにか変わっていたかも知れない。

 たらればの話をしてもしようがないけど、考えずにはいられなかった。

 なんでだろう? あんな酷い裏切りにあったのに。


「……キルケと薬物の売人の間になんらかのトラブルがあって殺しにいたった。キルケはまだ捕まってないんだよね」


「あぁ、行き先に心当たりがないか散々聞かれたよ。まぁ、俺はキルケのことそんなに知らなかったけど」


「代わりにあたしたちが洗いざらい全部話したわ。次の被害者が現れないように」


「で、でもまだ捕まってない」


「殺した売人から薬物を奪ってるはずだ。居場所を突き止めても簡単には捕まらないだろうな。すくなくとも使い切るまでは」


「そうなってからじゃ遅い」


 ドーピングドラッグの使用者がどんな末路を辿るのか。

 俺はこの目ではっきりと見た。

 キルケの手元に今いくつあって、いくつ打ったのかはわからない。

 すでにすべて使用した後かも知れない。

 それでも間に合うのなら使用を止めないと。


「俺たちで見付け出そう」


 キルケがコリンのようになる前に。


「見付けるったってどうやって? 心当たりはみんな警察が調べた後だ」


「見付からないってことは私たちの知らないどこかにいるってことよ。虱潰しにしてたら、それこそ時間が足りないわ」


「こ、この街を四人で調べきるなんて、無理だよ」


「……手はある。出来れば関わらせたくないんだけど」


 そうも言ってはいられない。

 俺はすぐに通信石で連絡を取った。


「はい、もしもし」


「クク。さっきの今で悪いんだけど、力を貸してほしいんだ」


 頼みの綱はククだ。


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