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魅力


「魔物の名前はウェントゥス、風纏う鳥の魔物。深層の魔物の中でも中堅クラスだって話ー」


「ウェントゥスか。たしかこの時期だと卵を温めてるね。うわ、絶対気性が荒くなってる」


「ちょっとお花燃やすだけだし許してくれなーい?」


「ちょっとお宅のカーペット燃やすけどいいよね? って言われたらどうする?」


「顔面パンチ!」


「相手はウェントゥスですから、その程度では済みそうにありませんね」


「じゃあ、家主ごと焼いちゃおー! 目玉焼きのおまけ付きー」


「物騒だなぁ」


「端から見れば強盗の作戦会議ですよ」


 幸いなことに俺たちはすでにダンジョンに足を踏み入れている。

 周囲に他の冒険者もいないし、魔物も聞き耳を立ててない。

 聞いているのは石積の壁や石畳みの地面くらい。

 まぁ、壁に耳あり障子に目ありって言うけど。


「こっそり火を付けるって案は一応ありだけど」


「普通、家に火が付いたら消しますよね」


「おっきい翼で豪快に風を吹かせて直ぐに鎮火させちゃうねー」


「でも、それで花が散れば目的達成では?」


「残念、ドーピングドラッグの元になるのは根っこのほうなのだー。トリカブトの毒と同じー」


「戦いは避けられそうにない、か」


 学生が二人いる以上、強敵との戦闘は出来るだけ避けたい。

 けど、そうも言っていられないか。

 冒険者になった以上、二人も覚悟ができてるはず。

 一切の危険から遠ざけたいのなら宝箱にでも仕舞っておけばいい。

 二人は絶対にそれを良しとしないのはわかってる。

 だから精一杯のサポートをしよう。


「ところでー、二人はいつからそーゆー関係なの?」


「聞き方に悪意がある」


「馴れ初め聞きたいなー」


 聞きたいなら話してもいいけど、ありのままの事実から省くべきことがある。

 ククも聞かれたくないことがあるだろうし。


「シンリさんに助けてもらったんです。ダンジョンで」


 ククのほうから切り出してくれた。

 こちらは言われて困ることはない、こともないけど。

 具体的にはお礼が今の形に収まるまでの過程の話とか。

 だけど、概ねククに任せておけば問題はないはず。


「それで何かお礼をと申し出て、今の形に。ちょうどシンリさんも前のパーティーから抜けた直後だったので」


「なるほど、なるほど。お礼かー……ねぇ、先生! そう言われてどう思ったの?」


「どうって?」


「こんなに綺麗で可愛い未成年の女子生徒にお礼したいって言われたんでしょ? 先生、男だよね? ね?」


「ホントに悪意があるよね」


 言わんとしてることはわかるし、実際にククは正気じゃなかったとはいえその気だったし。

 でも、なにも無かったし、なにもしなかったし!

 俺は無実だ!


「あれあれ? なんでククちゃん赤くなってるの? 可愛いって言われて照れてる訳じゃないよね?」


「こ、これは別にっ。なんでもありません」


「ふーん……ふーん?」


「やめて、そんな目で俺を見ないで」


 あの時はククの視野が極端に狭くなってただけだから。

 ちゃんとわかってるから。

 だから過去を顧みて恥ずかしくなるのは、今だけでいいから辞めてほしい。

 いや、ホントにマジで。

 この思いを口に出すとノアがまた深読みしちゃうから言えないのがもどかしい。


「はい! この話はここで終わり! 終了!」


「あーん、もっと聞きたーい!」


「ダメです。ノアさんはすこししゃべり過ぎです」


「たしかにそうかも。でも、それがあたしの魅力でしょー?」


 魅力があり過ぎるのも困りものだ。

 しばらく封印してもらえないかな? ダンジョンを出るまででいいから。


「ま、しよーがない。今回はこの辺で勘弁してしんぜよー」


「ありがたき幸せ」


「くるしゅうないくるしゅうない」


 そんな会話をしながらも直感でトラップや魔物を回避して先へと進む。

 人数不足もある程度解消されたことで思いの外、進行速度は速くなった。

 気がつけばダンジョンの表層も終わりを迎え、深層が顔を覗かせる。

 ここからは、というかここからも、気は抜けない。

 互いに頷き合って俺たちは深層に足を踏み入れた。

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