20、四管
【★キャラクター紹介★】
呉林 のの香
性格:穏やか。芯は強い。
個性:基本的に敬語.丁寧語で話す。
外見:薄茶色のボブヘア。
メモ:美少女がゆえに皆んなから好意を持たれる
罪作りな女の子。いつも無表情。
式紙との内輪揉めを終えた後、2人は鳥居の先へと足を踏み入れた。
ほの暗い通路の両隣を、蝋燭の灯りだけがぼんやりと、わずかに照らしている。
「せっかく呼んだんやから、先導してよ」
主に言われ、こヅルが心得ました! とばかり、勢いよく奥へと飛び込んでいった。
「さぁ、ののちゃん。行こう?」
離れてしまっていた手を、恭しく差し出して美羽はのの香を誘う。
「……絶対、ののちゃんは、みうが守ってあげる」
「ありがとう。わたしも美羽ちゃんのこと、守るからね」
信じられるのは、互いだけ。一度、確かめ合うように視線を交わすと、2人はこヅルの後を追った。
※
「── やぁやぁ。いらっしゃい、やっと来たね」
神社の奥へと進めば、だだっ広い空間が広がっている。幾つもの部屋が仕切りで区切られていた。障子を引き、真新しい畳の並ぶ室内へと、足を踏み入れる。
2人を出迎えたのは、胡散臭い笑顔を浮かべた背の高い男だった。
両手を広げ、大仰に歓迎の姿勢を見せる。
その男、名を『青祭』と言う。名字もあるのだろうがこの人間に一切、興味がないので美羽は知らない。
黒のセットアップスーツに身を包み、ニコニコと無駄に愛想が良い。
一見すると、顔が整っているのも相まって、ただのイケメンにしか見えない。けれど、こやつも結構な曲者であるのを美羽は知っている。
「……ふんっ、さっきのやっぱりお前か。なんなん?毎日おるけど、暇なん?」
予想通りの人物を目の前にして、美羽は憮然とした顔で、開口一番に嫌味を言ってやった。
あの、騒音のような鈴音を響かせた犯人は、青祭である。
「あっはは、酷いなぁ。俺だって、ちゃんと仕事はしていますよ。美羽ちゃんは、ほんっと俺に対する当たりがキツいよね?」
肩を揺らし、さも愉快気な声をあげる。けれども、目の奥は静まり返っていることを美羽も、のの香も知っていた。
「あは、ははは、だーってね。君たち2人とも、表でイチャイチャしててなかなか入って来ないからさ。少しだけ、意地悪してみちゃった」
片目をつむり、とびきりの笑顔を投げて寄越す。そんな気障ったらしい動きですら、青祭は息をするみたく簡単にやって魅せた。
恐らく、清葵学院のお嬢様らは大多数が気にいるだろう、と思う。けれども、この場にいる2名は生憎そうではなかった。
やられた2人。特に美羽はその仕草に悪寒が走り、「おぇっ」とえずく。
「キショい!死ねよ、いま殺すか?!」
「そんな〜、軽い挨拶みたいなものだよ?まぁまぁ、怒らないでよ。俺なんて、美羽ちゃんほどの力があれば、いつでも殺せるでしょう?俺は君たちと違って、普通の人間なんだから。
さっきの騒音も、この神域のなかに居るから内部にあるものを少し弄れるってだけ。とってもか弱い存在なんだよ、俺は」
大層長ったらしい演説を終えると、青祭はくるり身体の向きを変えた。
小首を傾げ、のの香を見遣る。
「……そうそう、のの香ちゃん。あんまり道端で他人の目に付くようなことをしてはいけないよ?なんと言っても君は、由緒ある四管の血統なんだからね?」
偉そうな教師の如く、青祭がのの香へ注意をした後、どさくさ紛れに彼女の両手を自身へ引き寄せる。
「さすが、今日もとっても可愛らしいね」
甘言を囁き、繋いだ手をぎゅっと、強く握った。
丁度、のの香の背後に控えていたこヅルが、まるで雷鳴のようなもの凄い素早さで不届き者へと、体当たりする。
障子をぶち破り、青祭が吹っ飛んで行った。
※
【四管】
── 先人が作ってきた『法』を守る立場にある血族の総称。
宗家である、本管に次ぐ家格を持ち、代々特殊な力を備えた者が生まれやすい、四つの分家のこと。
呉林、九条、東久世、三葉をまとめた呼び名。




