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20、四管

【★キャラクター紹介★】

呉林 のの香


性格:穏やか。芯は強い。

個性:基本的に敬語.丁寧語で話す。

外見:薄茶色のボブヘア。

メモ:美少女がゆえに皆んなから好意を持たれる

   罪作りな女の子。いつも無表情。

 式紙しきがみとの内輪揉めを終えた後、2人は鳥居の先へと足を踏み入れた。

 ほの暗い通路の両隣を、蝋燭ろうそくの灯りだけがぼんやりと、わずかに照らしている。


「せっかく呼んだんやから、先導してよ」


 あるじに言われ、こヅルが心得ました! とばかり、勢いよく奥へと飛び込んでいった。


「さぁ、ののちゃん。行こう?」


 離れてしまっていた手を、恭しく差し出して美羽みうはのの香を誘う。


「……絶対、ののちゃんは、みうが守ってあげる」


「ありがとう。わたしも美羽ちゃんのこと、守るからね」


 信じられるのは、互いだけ。一度、確かめ合うように視線を交わすと、2人はこヅルの後を追った。



「── やぁやぁ。いらっしゃい、やっと来たね」


 神社の奥へと進めば、だだっ広い空間が広がっている。幾つもの部屋が仕切りで区切られていた。障子を引き、真新しい畳の並ぶ室内へと、足を踏み入れる。


 2人を出迎えたのは、胡散臭い笑顔を浮かべた背の高い男だった。

両手を広げ、大仰おおぎょうに歓迎の姿勢を見せる。


 その男、名を『青祭あおさい』と言う。名字もあるのだろうがこの人間に一切、興味がないので美羽みうは知らない。


 黒のセットアップスーツに身を包み、ニコニコと無駄に愛想が良い。

一見すると、顔が整っているのも相まって、ただのイケメンにしか見えない。けれど、こやつも結構な曲者くせものであるのを美羽みうは知っている。


「……ふんっ、さっきのやっぱりお前か。なんなん?毎日おるけど、暇なん?」


 予想通りの人物を目の前にして、美羽みう憮然ぶぜんとした顔で、開口一番に嫌味を言ってやった。

あの、騒音のような鈴音すずおとを響かせた犯人は、青祭である。


「あっはは、酷いなぁ。俺だって、ちゃんと仕事はしていますよ。美羽みうちゃんは、ほんっと俺に対する当たりがキツいよね?」


 肩を揺らし、さも愉快気ゆかいげな声をあげる。けれども、目の奥は静まり返っていることを美羽みうも、のの香も知っていた。


「あは、ははは、だーってね。君たち2人とも、表でイチャイチャしててなかなか入って来ないからさ。少しだけ、意地悪してみちゃった」


 片目をつむり、とびきりの笑顔を投げて寄越す。そんな気障ったらしい動きですら、青祭あおさいは息をするみたく簡単にやって魅せた。


 恐らく、清葵学院せいおうがくいんのお嬢様らは大多数が気にいるだろう、と思う。けれども、この場にいる2名は生憎あいにくそうではなかった。


 やられた2人。特に美羽みうはその仕草に悪寒おかんが走り、「おぇっ」とえずく。


「キショい!死ねよ、いま殺すか?!」


「そんな〜、軽い挨拶みたいなものだよ?まぁまぁ、怒らないでよ。俺なんて、美羽みうちゃんほどの力があれば、いつでも殺せるでしょう?俺は君たちと違って、普通の人間なんだから。

さっきの騒音も、この神域のなかに居るから内部にあるものを少し弄れるってだけ。とってもか弱い存在なんだよ、俺は」


 大層たいそう長ったらしい演説を終えると、青祭はくるり身体の向きを変えた。


 小首を傾げ、のの香を見遣る。


「……そうそう、のの香ちゃん。あんまり道端で他人の目に付くようなことをしてはいけないよ?なんと言っても君は、由緒ゆいしょある四管しかん血統けっとうなんだからね?」


 偉そうな教師の如く、青祭がのの香へ注意をした後、どさくさ紛れに彼女の両手を自身へ引き寄せる。


「さすが、今日もとっても可愛らしいね」


 甘言かんげんを囁き、繋いだ手をぎゅっと、強く握った。


 丁度、のの香の背後に控えていたこヅルが、まるで雷鳴のようなもの凄い素早さで不届き者へと、体当たりする。

 障子をぶち破り、青祭あおさいが吹っ飛んで行った。



四管しかん

── 先人が作ってきた『法』を守る立場にある血族の総称。

 宗家そうけである、本管ほんかんに次ぐ家格かかくを持ち、代々特殊な力を備えた者が生まれやすい、四つの分家のこと。

呉林くればやし九条くじょう東久世ひがしくぜ三葉みつばをまとめた呼び名。

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