73話目
失速したけど、問題なし!
強いて言うなら文章力のなさに嘆いていることか!
そのあとあたしは衛兵さんと別れて、予定通り街を見て回った。予定と違うのは、シキちゃんがついてきてることだよね。
あ、シキちゃんって言うのは座敷わらしちゃんの名前ね。ざ″しき″わらしだから、シキちゃん。
はい、そこ! 安直とか言わない!まあシキちゃんの名前はそれ以外にも理由があるよ、一応。
それはまた追々語るとして。
あたしは、色々とありすぎて精神的に疲れたのでとりあえず休むためにシキちゃんと一緒に、街の中心にある噴水広場のベンチに腰を下ろした。
最初は《畏怖の魅了》のせいで魅了しちゃったみたいで、どこかシキちゃんとの距離を感じていたんだけど、今ではニコニコと満面の笑みを浮かべてあたしの隣に座ってくれるくらいには距離が縮んでくれたみたい。
街を見て回っているうちに怖くなくなったのかどうなのかは、あたしには分からないけど、目があうと嬉しそうに笑うから、《畏怖の魅了》はもう効いていないと思う。
ただ普通に可愛いだけじゃなくて昔の彩に似てるから、反応に困るんだよね。
「可愛すぎて拐っちゃいそうだよ! いや、テイムしたからある意味拐ってるみたいなものだけど! これは合意の上だから! 合意の上で拐って……アイタッ!」
考え事をしていると、誰かに頭を叩かれた。あたしが叩かれるのを見て、シキちゃんはあたしの背中に隠れてしまう。
いや、あたしを盾にするの止めよう? もう2回目だよ?
シキちゃんとは後で話し合うことにして、あたしは頭を叩いた犯人の顔を見るために、考え事をしているうちにいつの間にか下げていたらしい頭をあげた。
「メリー、なにブツブツ言ってるの?」
「ア、アヤ!? なんでここに!?」
「なんでって言われても……特に理由はないんだけど?」
なんでもアヤは、たまたまここを通りかかったらあたしがベンチに座ってブツブツ言っていたのが見えて、変なことを言っていたからとりあえず叩いた、ということらしい。
考えてたことを声に出していたみたいだけど、聞かれて困るようなことを考えてなかっただけ、ましだったのかな?
あたしがホッと一息吐いて一瞬シキちゃんの方を見ると、アヤもシキちゃんに目をやったもののなにも聞いてこなかった。
そしてなにかを思い出したのか、あっ! と短く声をあげると、アヤはあたしの横に座って話し始めた。
「そういえばメリー。また掲示板で叩かれたよ?」
「えー? また掲示板?」
「そうそう。なんか『獲物を横取りされた挙げ句PKされた! クソガキで雑魚の癖に舐めてやがる!』的なことを、延々と言われてたけど?」
「わーい、当たらずも遠からずだー」
獲物を横取りされたって言うけど、シキちゃんが逃げた先にたまたまあたしがいただけだし、あっちが煽ってきたから話してたら衛兵に勝手に殺されただけじゃん。
それもこれも人通りの多いところで、しかも衛兵の前で武器を抜くのが悪いと思います、はい。それをあたしが殺したことにされてもって感じなんですけど……。あとクソガキ関係ないでしょ!
それに雑魚って! PKされたことにしてるのに、雑魚は無理があるでしょ! 自分で自分のことを、雑魚以下って言ってるよ! アヤにそれを説明してみると、どこか納得したようで呆れたような声を出した。
「あー、なんとなく分かった。ID調べたら今日の朝教えた人たちみたいだし、メリーが言ったことを私がまとめたら多分収まると思うよ」
「え? そんな簡単に収まるの?」
「私が言えば収まるんじゃない?」
ゲーム内のアヤって何者なの……? アヤに聞いてみても、恥ずかしそうに苦笑いするだけで教えてくれなかった。
えー、気になるんですけど?
そう思っていると、苦笑いしていたアヤが急に真顔になってあたしに言ってきた。
「メリー。もしかしたら本人たちからなにかちょっかいをかけられるかもしれないから、気をつけてよ? 掲示板には書いたから、この前みたいに大勢に囲まれるってことはないだろうけど」
「アヤの発言力が強くてよかったね! ありがとう!」
「い、いや、別にいいけど。本当に気をつけてよ! ああいうのは、本当にしつこいんだからね!」
「はーい。それじゃああたしはそろそろログアウトしようかな」
「もう宿はとったの?」
「宿をとるようなお金ないよ、あたし」
あたしはいつも通り虚空から幽世の鍵を取り出した。するとアヤが驚いたように声をあげ、目を見開いていた。
「ん!? なにそれ!?」
「え? 幽世の鍵だけど?」
「チョットイミワカラナイデス」
「なんでカタコトなの?とりあえずじゃーね」
あたしは幽世の鍵を使って、《ルーナ・ノヴァ》に入っていった。
さて、シイちゃんとシキちゃんの顔合わせをしてからログアウトしなきゃね。そういえばシイちゃんとシキちゃんのステータスをしっかり見たこと全然なかったよね。
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名前:シイ
種族:落葉なき椎Lv1
スキル:《落葉なき椎》《ドングリショット》
状態:テイム
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名前:シキ
種族:座敷わらしLv1
スキル:《座敷わらし》《真実の眼》
状態:テイム
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種族名のスキルは、種族としての力が使えるようになるとしか書いてなかったからよく分かっていない。
多分落葉がなくなったり、幸運になったりするんだと思う。あとは《ドングリショット》はドングリを投げて攻撃するスキルで、《真実の眼》は真実だけを見るスキルらしい。
あたしの《気配遮断》を見破ったのは、《真実の眼》の効果みたいだね。
まだレベルが1だから弱いけど、そのうちレベルあげやらせないといけないね。
あたしが考え終わると、シキちゃんはシイちゃんに頭を下げて、シイちゃんはそれを見てワサワサと音を出していた。
どうやら意気投合したみたいだね。
うんうん、それじゃあログアウトしますか。
シイちゃん「ワッサワッサ、ワッサ」
シキちゃん「(ペコペコ、ペコリ)」
メリー「うちの子たちが可愛い!」
作者「《百鬼夜行》なのに、怖くなくていいのかよ……。」
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名前は自信だけはある白豚、そのまんまだな!
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