69話目
ながーい!
あとシリアスっぽい展開やめろや!
夏休み11日目。よく考えたら、昨日から8月だったわけで。もうすぐ出校日が来るよ……。
たしか今年は8月6日が出校日だから、今日が2日ってことは……あと今日を入れて5日しかないね、うん。別にいいんだけど、学校行きたくないなぁ……。
嫌いって訳じゃないんだけど、これだけ外が暑いと学校に行く気力も失せちゃうよ。まあ、まず外に出たくないんだけどね。
そう思いながら棒アイスをペロペロ舐めていると、電話がかかってきた。いつも通り彩だね。もう慣れてきたよ。
あたしはいつものように携帯を手に取ると、通話に出た。
『あ、もしもし芽里?』
「もしもし?」
『芽里! 明日プールに行くわよ! それも今年近所にオープンしたところに!』
「えぇー、やっぱりプールに行くの?」
しかも明日かぁ……。随分急なものだね。いや、元々行こうとは言われてたけど。それも強制参加だし。
まあ、彩とデ、デートできるならいいんだけど……。
『彩とデート』と言う言葉が心の中で出てきてしまい、少し顔が赤くなる。でも外は暑いんだよね。
特に今年は異常気象がどうとかで、最高気温39℃とかざらだし。そう顔を赤くしたまま考えていると、彩が何を言っているんだと言わんばかりに声をあげた。
『あったり前でしょ! そのためにこの前水着買ったんでしょ!?』
「そうなんだけど。でもなぁ」
『うぅ……シクシク』
「あーもう、分かったよ! 分かったから泣かないで! いや、ウソ泣きだって分かってるけど、心に来るものがあるから!」
声の感情としては楽しそうだったし、涙声なんかじゃなかったしで分かりやすいウソ泣きだったんだけど、あたしはそれが分かった上で彩のお願いを聞き入れた。彩はこんな風にどうしてもお願いを聞いてほしいときは、分かりやすいウソ泣きをする。
あたしは嘘とはいえ、彩には泣いてほしくなかったのでいつもそれでお願いを聞き入れてた。もしかしたらその時から既に彩のことが好きだったのかも……?
でもそれだと幼稚園くらいからになるんだけど……いやいや、そんなわけないよね、うん。あたしが答えると、彩は嬉しそうに声をあげた。うん、電話越しでもだらしない笑顔が見えるよ……。
『じゃあ明日だよ! 明日の9時に芽里の家に行くからね?』
「あーうん、分かったよ」
『それじゃ、この話はおしまい!』
「え? なにか別の話もあるの?」
正直他の話題なんてゲームの話か、いつもの彩の『宿題見せて!』くらいしか思い付かないんだけど?いや、意外と思い付いたね。
ちなみに今年は、彩も宿題を終わらせてあるらしい。好きなもののためならなんでもするくせに、好きなもののためにならないことは一切しない。彩のいつものスタンスだね。他のところにもちゃんと使えばいいのに……。掲示板の内容とかは一言一句覚えてるくせに、勉強関連は本当に覚えようとしないんだよ。なんでなのかな?
まあ、それは置いといて。
彩は溜め息を吐くと、先ほどとは打って変わって疲れたような声をあげた。
『芽里、昨日次の街に来たの?』
「うん、行ったね。昨日の情報通りだったよ?」
『いや、そこじゃないんだけど。また色々と言われてるよ?なんでも、バックさんたちのパーティーとやりあったとか』
バックさん? 誰それ? いや昨日やりあったのは、両手バックラーさんたちだよね? じゃあそのうちの誰かかな?
うーん、あたしには分からないかなぁ……。
彩はあたしの沈黙を正確に理解して、話し始めた。
『ほら両手にバックラー持った人たちだよ』
「あ、やっぱりあの人たちなんだ。でもあれは、あっちが喧嘩売ってきたからだよ?」
『バックさんたちパーティーはそうだって言ってるんだけど、なんでもそれを見てた他のパーティーがいたらしくてね?芽里のことを『卑怯なPKやろう』とか『スキルをはじめから作れたからって調子に乗ってる雑魚』とか言ってて……』
「えぇ……。というかその人たちも、森に来れるくらい強いならあたしが少なくとも雑魚ではないって分かるはずなんだけど?」
あたしは自身のことをそこまで評価していないので、強いとか思ってないんだけど少なくとも雑魚と呼ばれるようなこともないとは思ってるんだけど? 中堅プレイヤーくらいの強さはあると思ってるんだけどなぁ。そう思っていると彩が、とんでもないことを言い出した。
『いやその人たちね? まだ証拠はないんだけど、人が狩っていたモンスターを横から掠め取るみたいに攻撃して、素材を奪うような害悪プレイヤーなんだって』
「え? そんなことできるの? 素材ってドロップが勝手にボックスに入ってくるよね?」
『素材のドロップは、パーティーやレイドを組んでなかったらラストアタックをした人のボックスに行くらしいの。それでじゃない?』
うへぇ、確かにそれは害悪プレイヤーだね……。でもそれって今の話と関係あったの? そう聞くと彩はさらに言葉を続けた。
『多分バックさんたちの後ろについて行って、モンスターと戦わずに街を移動するつもりだったんじゃない? ボスは攻略方法確立されてたから、アイテムでどうとでもなるし。アイテム代は、他のプレイヤーから素材を盗ったものだろうしね』
「それって所謂寄生みたいなものじゃないの?」
『その通りね。でも証拠がないから、GMコールもできないの。まあ、多くの他のプレイヤーの気分を害するプレイヤーではあるんだけど、今はどうしようもないってところね』
「へー、そうなんだ。……うん?」
あたしは彩の言葉で引っかかる部分があった。他のプレイヤーの気分を害するって、あたしもやってなくはないような気が……?
あれ? でもイベントで暴れたのに、なにもなかった気がする。あれだけやったら絶対GMコールする人がいると思うんだけど?
そう思って彩に聞いてみると、それはないと言われた。理由を聞くと、溜め息を吐きつつ答えてくれた。
『芽里はまだ分別がついてる方なの。それに意外と芽里のファンもいるのよ? この前のイベントの動画が出てから増えたけど』
「ファ、ファン……?」
『なんでも《テラーモード》じゃないときの芽里が、スゴい可愛いって人気みたいね。あとは戦い方がえげつないけど強いってことで、そっち方面でも人気あるわよ? ただスゴい可愛いけど、それと同じくらい怖いって意見が多数ね』
「……どこ情報なの、それ? というか動画?」
どこから情報が来てるの? あと動画ってなに?
『情報は掲示板からで、動画は公式ホームページに載ってるわよ』
「………なにこれ?」
あたしはすぐに公式ホームページを開き、動画を確認すると第一回イベントの映像が使われたPVみたいなものがあった。あたし動画とか聞いてないんだけど。
そう彩に伝えると、どうやら一緒に入ってた説明書に利用規約として載っていたらしい。
ゲームのCMやPVのために映像を使わせてもらうので了承願います的なことが、長々と書いてあるみたい。説明書とかあたし読んでないんだけど……。
あたしが肩を落としたら、彩は雰囲気で分かったのか『もう手遅れだしあれはアバターなんだし、気にしなくていいんじゃない?』と言った。確かにそうだけど……そうだけど!
ま、まあもうどうでもいいや……。とりあえず彩に聞きたいのは、そんなことじゃないからね。
「……それで? なんでそれであたしがGMコールされないってことになるの?」
『んーとね。GMコールされないんじゃなくて、GMコールされてももう運営側はこっちに手が出せないんだよ』
「は? なんで?」
『だってこのPVのほとんどが芽里なんだよ? これが広まるってことは、芽里は一躍有名人なんだよね。しかもファンももういるくらいには、有名なプレイヤー。そんなプレイヤーに手が出せると思う?』
「いや、思ってるから言ってるんだけど?」
だってそれって有名人ならなんでもしていいよって言ってるものじゃない? それはダメでしょ、完全に。
『だーかーら。芽里のあれはイベント的にはあってるんだから、仕方ないでしょ? それにむやみやたらにPKしようとしないから、運営の方は厳重監視くらいに留めてるのよ! もし芽里が害悪プレイヤーになったら、ちゃんと対応はするはずだよ!』
「あたしが言うのもなんだけど、他のプレイヤーに恐怖を与えるようなプレイヤーって害悪プレイヤーに入らないの?」
『害悪プレイヤーって言うのは他のプレイヤーの獲物を横取りしたり、プレイヤーが努力して手に入れたものに対してチートだなんだって言うようなプレイヤーのことを言うの。それも特に努力をしなかったり、他のプレイヤーを見下したりするような感じの人ね』
「んー、よく分からないかも?」
結局それってあたしとやってること変わってないんじゃないの? あたしは首をかしげるばかりで、なにも分からなかった。いや、なんとなくは分かったかも?
とにかく、と彩は話の〆に入った。
『芽里は普段通りにしてれば大丈夫なの! 分かった!?』
「う、うん」
『じゃあ長くなったし、切るね!』
「あ、じゃあね。ってまたあたしが言う前に切ってる……」
普段通りにしてれば大丈夫、ね。とりあえず彩の言葉を守りながら、ゲームをしていこう。
あたしは携帯を充電器にセットすると、いつも通りログインしていった。
害悪プレイヤーとはどんなものなのか。
それは俺も知りません。
でも少なくとも、芽里は害悪プレイヤーとは呼べないプレイヤーだと思っています。
恐怖で意識不明になってしまうのと、誹謗中傷されて心が折れるの。
あなたはどっちを選びますか?
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名前は自信だけはある白豚、そのまんまだな!
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