44話目
夏休み6日目、第一回イベントまで今日を入れて残り3日。あたしはいつも通り夏休みの宿題をしている。
と言ってももうそろそろ終わりそうなくらいなので、少しくらいサボってもいいかもしれないけど。
少しペン回しをして遊んでいると、いいタイミングで電話がかかってきた。
あたしの携帯には彩と家族の番号しか入っていないので、彩だろう。あたしは携帯を開くと、電話に出た。
それはそれとして、今日もセミがうるさいなぁ。
「もしもし?」
『あ、もしもし芽里? 今なにしてるの?』
「えっ? 夏休みの宿題だけど?」
『……昨日も開いてなかったっけ?』
「うん、そろそろ終わりそう。これが終わったらゲーム三昧だよ、やったね!」
『あ、うんそうだね。……って終わるの早くない!?』
1度納得しかけた彩は、あたしの宿題が終わりそう宣言に驚愕の声をあげた。ごちそうさまです。でも耳が痛いから急に大声はやめてほしい。
それにしてもどこに驚いているのか、あたしにはまったく分からない。ゲームの時間以外は、日常生活の時間を除けばすべて宿題に使っているのだから当たり前なのに。
そう考えていると彩は確認するように声を出した。
『芽里、確認だけどさっき宿題が終わりそうって言わなかった?』
「言ったよ? あとは読書感想文だけだよ?」
『……芽里、夏休み入ってから外出した?』
「え? 出てないけど? 宿題とゲームだけでいっぱいいっぱいだよ?」
『うん、よく分かったわ』
電話越しでも、なんとなく納得したように首を縦に動かす彩が見えた。いや、幻覚だけど絶対あっちでやってる。雰囲気がそうだもん。
というかなにを分かったのか、そしてなにを納得したのか。
そんな風にあたしが思っているとは露知らず、彩はちょっと嬉しそうな声を出してあたしに提案をした。
『芽里、デートしよう!』
「ふぇ?」
『デートだよ、デート! ちょっと買い物に付き合って!』
「いや、別にいいけど……」
『有り金全部持ってくるんだよ!? なにがあるか分からないんだからね! お昼に最寄り駅に集合! そこら辺でお昼も一緒に食べようね!』
「あ、どこに行くの? ってもう切れてるし」
言いたいことだけ言って電話切られちゃった。
でも彩はたまにこういうことがあるし、あたしも別に嫌じゃないからいいんだけど。というか逆にちょっと嬉しいし? とそこまで考えて、彩が言っていた言葉を思い出して顔が少し赤くなった。
だって、だってデートって……。
あ、ヤバい。これまでも2人で遊びに行ったりしてたのに、デートって言われただけで恥ずかしさやら嬉しさでいっぱいに……。
「っていやいやいやいや!? あたしたち女の子同士だし! そんな別に……」
と首を振って思考を停止させる。
うぅ……彩が変なこと言うからぁ。いや、これは普通のことだから! いつも通り、いつも通り。
あたしは目を閉じて、深く深呼吸をした。そして目を開けて、意識を切り替える。
「よし! そうと決まれば着替えなきゃね! どんな服にしようかなー。彩が喜んでくれるような服装がいい……っていやいやいや!? その発想はおかしいよ、あたし!?」
………どうやら意識を切り替えるためにした深呼吸は、意味がなかったらしい。
結局悶々としながらも、彩のことを想像しながら服を選ぶあたしなのだった。
覗き見してたお母さんいわく、嬉しそうだったけど異性には絶対に見せられないようなだらしない笑顔だったとのこと。なにそれ怖い。
というか勝手に部屋を覗かないでよ、お母さん!
VRゲームってジャンルでゲームをせずに買い物に行く主人公たち。
おい、お前らどこに行くー!?ゲームしろってー!




