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37話目

掲示板もう書き終わってるんだけど、あと二人いないの?

あと二人いないなら削除案件なんだけど。

今日の0時までだからいる人は早めにねー。

 夏休み5日目。

 あのあと残党狩りをするついでにはじめの目的通りモンスターを倒して、ドロップをアイテムボックスにできる限り詰めこんだところで久々に本気で恐怖を食べた(・・・)せいか疲れちゃったから、その日はそれでログアウトした。

 興奮していたのかログアウトしてから今日起きるまでの記憶が朧気だけど、お母さんに聞いてみるといつも通りだったらしい。ちょっと声に恐怖を滲ませていたけど、よく分からない。

 まあ、それはともかく。

 朝ごはんを食べたあたしはすぐにゲームにログインするのではなく、夏休みの宿題の続きをやっていた。

 宿題が終わるまでは午前中をそれに費やす所存なのだー!


 そうやって脳内でふざけながら勉強をしていると、ピンポーンと玄関のチャイムがなった。

 誰か来たらしい、誰だろー?

 お母さんは朝早くに「今日はセールがあるから早く並ばないとっ!」と言いながらボルト顔負けの速度で走っていったので、家には誰もいない。お父さん? 今日も帰ってきてないよ。ブラックな企業にお勤めの社畜さんだよ、可哀想に。

 まあ、給料がその分物凄くいいらしいけどね。

 でもあたしはそこら辺はよく分かっていないというか、お父さんがどういう会社で働いているのかまったく知らない。

 と考えながら玄関まで向かう。


「はーい、どちら様ー?」

「あ、芽里? 私だけど?」


 ドアを開けるとそこにいたのは彩で、夏らしく水色のノースリーブワンピースという大胆な格好で家の前に立っていた。

 彩はあたしの顔を見るとなぜか「やっぱりか……」と言いながら、おでこに手を当てて首を少しだけ振った。


「話があるから中に入っていい?」

「いいよー? 麦茶でも飲むー?」

「うん、もらうね。あれ、おばさんは?」

「お母さんならセールがあるからって走っていったよー」

「……ちなみに声の感情は?」

「なんでか知らないけど恐怖だったよー? ハッ!? まさかセールに間に合わないかもって怖くなってー……」

「んなわけあるかい、アホ」


 パシーンッ!

 彩がどこか呆れたような、それでいてどこか怖がっているような声を出して、あたしの頭を思いきり叩いてきた。

 ちなみに彩は、あたしの感情を読み取る力を知っている。だって一番最初に彩に使ったわけだし、知ってて当然と言えば当然だよねー。

 というかなんでみんな怖がってるのー?

 とりあえずリビングに行き、彩にはイスに座ってもらって麦茶を出す。出された麦茶を一口飲んでから、おもむろに口を開いた。


「で? 昨日何があったの?」

「うーん、昨日はねー。オモチャといっぱい遊んだんだー。美味しかったよー?」

「あぁ、予想はしていたけどもこのモード(・・・)本当にキツい」


 なにかあったのだろうか? 彩は疲れきったような声を出す。でも、昨日のことって言われてもそれぐらいしかないしなー。

 というかなんでそれを聞くんだろー? いや、記憶にないだけであたしが昨日少しだけ話してたのかなー?

あ、ヤバいよー。昨日のこと思い出したらまた昂ってきちゃったよー。平常心、平常心ー。


「んー? どうしたのー? あっ、もしかして独り占めしちゃダメだったー? でもあのときあたし以外いなかったから仕方なかったんだよー」

「いや、よーく分かった。というか掲示板で粗方知ってたから、今日はその確認と芽里の治療に来たの」


 どうやら昨日のことを知っていたのは掲示板情報で、それを確認しにわざわざ家まで来たらしい。あと治療のためだとかー。

 そして彩は席を立つと、指を鳴らしながらあたしに近づいてくる。

 その顔はさっきまで恐怖や疲れと言った感情を声に出していたとは思えないほど、清々しそうでにこやかに笑っている。


「彩ー、治療ってなにー? あたしどこも悪くないよー?」


 そう、あたしはどこも悪くないのだ。

 それどころか昨日のこととかがあって気持ちいいくらいであって、少なくとも治療するようなことは1つも心当たりがない。それを聞いて彩は少し悲しそうに顔を歪めて、涙目で本当に申し訳なさそうにこう言った。


「痛いけど、ゴメンね?」


 そして頭を殴られて意識が朦朧とする。

 あたしが最後に見たのは涙を流しながら、誰かに電話をする彩の姿だった。

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