0話目
というわけで完全見切り発車!
封印術士とは全く別の作品となっています。
そこだけ注意で!
「ハァ……ハァ……」
鬱蒼と茂った木々に囲まれて、何かから逃げるように走り息を切らして尚も走り続ける一人の男が居た。
その男はまるで作り物のような──いや、実際に作られた顔を恐怖で歪めながらガチャンガチャンと着ている鎧から音を立てながら走る。
男は関節部分が動かしやすい構造となっているその鎧と、背中に抱えた大きな西洋式の剣──所謂バスタードソードから一般人ではなく戦闘を生業とした者であることが分かる。
そして走ること少し。
「ハァ……ハァ……。クソッ! なんなんだよ、アイツは」
男は悪態をついた。恐らくその“アイツ”なるものから逃げてきたのだろう。
そして、体力回復の為に腰を下ろしたその瞬間。
『もしもし? あたしメリー』
男の頭に声が響いた。
その声はどこか幼く聞こえ、またその声の高さから女性であることが予想された。
男は青ざめた。そのセリフの続きを想像してしまったが故に。
そしてまた声が聞こえる。
『今、あなたの後ろに居るの』
その声を聞いた瞬間、男は後ろをバッ! と振り向く。しかしそこには誰もいない。
ホッと息を吐くと正面を向いて……。いきなり男の首が落ちた。
男がそのとき見たのは、赤いロリータドレスを着たナイフのようなものを持った少女の歪み狂気を纏った笑顔だった。
『クスクスクスッ。あたしはあなたの後ろにいつでも居るの。また遊んでね?』
男はその声を最後に、ポリゴンへと変わって散っていった。
そして残るは、生い茂る木々といまだにクスクスッと笑っている少女だけだった。
「あー、楽しかった! これだからPKは止められないんだよね!」
そう言って少女は笑う。
しかし、それは心底楽しそうな──少なくとも先程人を殺めたとは思えないほどの──満面の笑みだった。
「アヤに感謝しなきゃ! こんなに人の恐怖がたくさんある場所に連れてきてくれたんだがら!」
しかし、この場面を見ればそのアヤというこの少女の友だちも後悔しそうである。
あるいは、この少女の友だちもどこかおかしいのか? それはまだ誰も知らない。
「それじゃあもっと狩ろっと。メリー、いっきまーす!」
そうして少女――メリーはまた森の奥へと消えていく。
これは人の恐怖や驚愕に染まった顔をこの上なく愛しているメリ──賀島芽里が流行りの五感没入型VRMMORPG『メイク・スキル・オンライン』(通称MSO)で楽しく遊ぶ話である。
えー、書きたいときに書くので不定期更新が定期です。
ご了承ください?
面白そうだったら感想下さい。
多分やる気が出ます。




