招待状
だんだんと暑くなっていたある日。
なんとなく授業を受け、ぼーっとしながら休憩時間をとり、また授業を受ける。5限と6限の間の休憩時間にそれに気がついた。
柊真「あれ、こんなメール届いてたのか?」
大量のメールの中に、埋もれていた1件のメールを開く。
件名『上坂柊真様』
本文『この度はLIARにご登録誠にありがとうございます。審査の結果、上坂様は正直者と認定されましたのでご通知申し上げます。つきましては、下記の日時に、IDカードをお渡しいたしますので、御足労おかけ致しますが、よろしくお願いいたします。』
本文の下には地図が記載されており、住所が書いてあった。
柊真「なんだよこれ・・・正直者認定って・・・」
首を傾げながら、必死に記憶を辿る。正直者・・・正直者・・・。
柊真「あっ!あのブラクラか。というか、ブラクラじゃなかったのか」
んーと、少し考える。
怪しい…怪しすぎる。
詐欺メールなのか、ただの迷惑メールなのか。
慎重な性格のため、普段ならば危ない橋は渡らない。
が、この日の柊真は違った。
(どうせ生きてても楽しくないし、いつ死んでもいい人生だしな)
そう考え、行くことを決意した。
前日にもメールが届いていた。
『いよいよ明日に迫りましたが、ご準備のほど、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。※遅刻の場合、ID所有を拒否したものとみなしますので、お時間には余裕をもってお越しください。』
柊真は、メールを眺めながら妙な高揚感を抱いていた。
自分の人生で何かに期待する日が来るとは。
もちろん恐怖心もないわけではない。だが。
何か選ばれたようでうれしい気持ちもあった。
翌日―。
指定されていた時間より、10分早く着いた柊真。
場所は、東京の有名繁華街のとある路地裏。
一歩出れば、ネオンの看板がきらびやかな街である。
ますますハニートラップやカツアゲなどが頭をよぎる。
(悪い予感が当たりませんように…)
時計が進むにつれ、柊真の鼓動も強くなっていく。
そして、時間になった瞬間。
柊真「あれ?誰もこないぞ」
きょろきょろしていると、マンホールが動く音が聞こえた。
同時に光も見えた。
(異世界にでもワープするのか?そんなばかな…)
柊真は、マンホールのほうに近づく。
するとマンホールから低い声が聞こえた。
??「上坂柊真か?」
柊真「は、はい。そうですが…あの、メールを受け取ってきました」
??「ほーう」
その低い声の人物がマンホールから出てきた。
真正面から見ると、柊真よりも遥かにでかい。暗闇でもわかる筋肉質な体。
一体この人は…。
柊真が疑問を抱いている中、男は手を出した。
??「スマートフォン貸せ」
柊真は、素直に男に渡す。男は、スマートフォンを操作するわけでもなく、裏面をなぞる仕草をした。
??「本人で間違いなさそうだな。10分も前に来ているだなんて、お前真面目だな」
柊真「あ、ありがとうございます…」
男からIDだ、と渡されたものを見ると柊真の顔写真と生年月日が記載されており、正直者認定の判子が押されていた。
??「とりあえず、本部に行くからついてこい」
男はマンホールに入っていく。
柊真が、迷っていると早くしろと催促された。
(もう逃げ場ないじゃん…)
柊真は、迷った挙句、男についていくことを決めた。