ドリーム到着
最初の町の入り口付近にはドリームという立て札があった。どうやらこの町の名前らしい。
ドリーミングオンラインというだけあって、町の名前なども雰囲気を統一しているのだろう。
そして、このドリームという町は、最初の町に相応しくそんなに大きくない。
「……着いたか」
「やっと着いたね、大変だった……」
おばけちゃんが疲れたような表情を見せる。
ルナちゃんは……相変わらず感情が読み取れない。
「でも、おかげでたくさんアイテムが手に入りましたね」
おそらく俺たちが最後尾だろう。だが、その分収穫もあった。
他のみんなは先を急ぐあまり遠回りはしなかったのだろう。その結果、早く町に着いた順に、プレイヤーとしては遅れている。
「んおっ! お前ら遅いグループだったくせに何だそのアイテムの山は!」
「しかもどれも高価そう……」
例の奴らが俺たちの方を指さして言う。
こっちは関わりたくないのだが……。まあ、目立つのは仕方ないか。
「とりあえずこのナイフと二本の杖以外は全て売っていいか」
「そうですね」
外野を無視し、入り口から一番近い店へと向かった。
「いらっしゃい」
「これを全部買い取ってくれ」
「えーと、スライムゼリーにコウモリの羽、それから……おお、琥珀か。これは高く買い取らせていただこう。全部で2762ゴールドだが、よろしいか?」
「ああ」
金額の提示に承諾し、料金を受け取った。
背後から視線を感じる。
「なっ! 二千……」
「あいつらふざけやがって……」
聞き耳を立ててないでどこか行ってほしい。
第一何もふざけてなどいない。先を急ぎ過ぎたお前らが悪いだろう。
だが、そう言い返すと面倒なことになりかねないので、不満を飲み込んで二人のもとへ戻った。
「で、何か買うか?」
「ちょっと装備を整えたいなあ……」
「いろいろ見て周りましょう」
いろいろと見て回りながら町の中心へと向かうと、そこにはいくつもの店が集結していた。
「いらっしゃい、よかったらどうぞ」
アクセサリー屋に呼び止められた。
「わあ、なんか綺麗なのがいっぱい」
おばけちゃんが目を輝かせている。
こういうのが好きなのだろうか。
「こちら、身につけると戦闘で役立つアクセサリーです」
「ほう、特殊な効果でもあるのか?」
持っていて損はなさそうだ。
「この『風のペンダント』なんてよさそうですね」
ルナちゃんがその内の一つを手に取り、俺へと見せた。
小さな羽によって飾られており、全体的に薄緑色をしている。
俺がそれをルナちゃんの手から受け取ると、値段が脳内に表示された。これもまた、そういうシステムなのだろう。
「500ゴールドか」
「高いかな……?」
「いや、買おうか」
「えっ! いいの!?」
おばけちゃんが弾ける程の笑顔を俺に向ける。
「ああ」
ゴールドを渡し、商品を受け取った。
それをおばけちゃんへ渡すと、喜びのあまり飛び跳ねだした。
「お買い上げありがとうございました」
「クロウさん、ありがとう!」
おばけちゃんが満面の笑顔を見せる。とてもうれしそうだ。
さて、次は……。
「次はクロウさんのですかね」
「俺はいい」
「あら、でも魔法屋に向かってますけど」
「まあな」
二人を連れ、魔法屋の看板がかかった小屋へと入った。
「いらっしゃいませ……」
「わあ、たくさんある」
店主である老人の目の前には、魔法書が山積みされていた。
「さて、どれがいいか……」
「失礼でなければ私めがあなたに合う魔法をお選び致しましょうか?」
「ああ、頼む……と言っても俺のではない、この二人のだ」
「さようでございますか、ではこの『ウィンド』と『アクア』の魔法でいかがでしょう」
「それで頼む、ありがとな」
「合計で2000ゴールドになりますがよろしいですか」
「高っ!!」
その金額を聞いて、おばけちゃんが叫んだ。
思わず声に出してしまったのだろう。
魔法を使えるようになる道具なのだから、これくらいしてもおかしくはないと俺は思うけれどな。
「いかがなさいますか?」
「ああ、買わせてもらう」
「ええっ!?」
ファントムが驚く一方、俺はためらいなくゴールドを手渡した
「ありがとうございました」
魔法書を手に店を出た俺に、ファントムが焦った様子で走り寄ってきた。
「ちょ、ちょっと!」
「なんだ?」
「……本当によかったの?」
「ゴールドは持っていても仕方ないからな。それよりも、これから先戦う準備をしておかないと……」
そう、ここで装備などを整えておくことは有意義なことだ。
ここで一時的にゴールドを失ったとしても、それはすぐにでも取り返すことができる。
逆に言うと、そのためにはより強い装備が必要となってくる。だからこうして惜しみなくゴールドを使った。
目先の損得だけ考えていては上手くいかない。そう、長い目で見ることが大切だ。




