クイーン同士の空中戦
ティアマトは俺とユキを乗せて、フロアの上空を猛スピードで飛び回る。一方のカミヤもエキドナに乗って空中を乱舞している。
下を見ると、その場に留まったままのアズールがいる。奴は動く素振りがなく、この戦いをただ見守っているのだろう。
「キリノ様、先制攻撃を仕掛けましょう」
「ああ」
俺とユキは弓矢を構え、エキドナへと放った。的は大きいため命中させるには苦労しないが、一撃一撃がまるで効いていない。
「ティアマト! あいつらへ攻撃しろ!」
「グルルルル……」
ティアマトは俺の声に応じ、低い唸り声を上げながら狙いを定める。そして、エキドナへと炎の息を吐いた。
「エキドナ、こっちもブレスだ。押し負けるな!」
カミヤの命令がこだまし、エキドナは氷の息を吐いて対抗してきた。二つの息はぶつかり合い、虹を生じさせる。
先程から、この大事な一戦にもかかわらず、そのダイナミックな戦闘に胸が躍って止まない。大きな竜に乗って空を駆け巡りながらの戦闘。こんなにわくわくする戦いは今までになかった。
「負けるな! お前は空の女帝なんだろう!? 勝て! エンプレス!」
「捻じ伏せろ! クイーン!」
俺の乗るティアマトとカミヤの乗るエキドナ。二体の竜はお互いにぶつかり合い、すさまじい衝撃を生んだ。
「俺もいるぜ!」
カミヤは衝撃に耐えながらもエキドナの背の上で立ち上がり、剣でティアマトを攻撃し始めた。
「な!? この!」
俺は咄嗟にワープ薬を投げ付けていた。エキドナはそれにより地上へと飛ばされ、宙にカミヤが残る。
意図したことではないが、これで決着かと思った。
だが、カミヤは身を翻し、ティアマトへと乗り込んできた。
「しぶとい奴め!」
「そう簡単に負けたりはしないさ」
剣を構えこちらへ向かってくるカミヤへと、俺は弓矢の狙いを定める。そして、シルバーブレッドを放ったが、それは剣の一振りで遮られてしまう。しかも、その剣の放った妖気とも言うべき衝撃がティアマトの体を傷つけた。
「く……! 落ちろ!」
俺は覇王の剣を振り、炎を飛ばした。その瞬間、カミヤはティアマトから飛び降りた。
「何っ!?」
落ちてゆくカミヤへと視線を向けると、その先にはエキドナが空中で待機していた。全て計算通りとでも言いたげな不敵な笑みを浮かべながら、カミヤはエキドナの背に受け止められる。
「やはり一筋縄ではいかないな。ユキ、集中砲火を浴びせよう」
「了解です!」
俺はユキと共にシルバーブレッドを連射した。ティアマトも三種のブレスでエキドナへと追い込みをかける。
対するカミヤもショットガンアローを放ってきたので、俺はイージスで受け止めた。
俺はひたすら隙を窺い、再びカミヤを地へと落とす作戦を決行した。残りのワープ薬を二つ同時にエキドナへと投げ付ける。
だが、カミヤはそれを盾で叩き落し、無残にもワープ薬は地面へと落下してゆく。そして、それを地上でアズールが拾い、二つとも無駄に使用した。
「あいつ!」
「アズールには落ちたアイテムは全部消滅させろと言ってある。残念だったな」
残るアイテムは透明人間の薬しかない。これを有効活用するには、ティアマトを一人にするしかない。
「ティアマト! 俺たちを地面へ下してくれ!」
その声に反応し、高度は瞬く間に下降してゆく。そして、数秒にして俺たちは地面へと戻ってきた。
俺はユキと共に降り、透明人間の薬をティアマトに使用した。
「カミヤたちを倒せ!」
「グルルルル……」
透明になったティアマトは低い唸り声を上げ、飛び立ったようだ。羽音と共に起きた強風が遠ざかってゆく。
「ユキ、俺たちも引き続き弓矢で応戦だ!」
「はい!」
俺は上空のエキドナへとシルバーブレッドを放つ。だが、エキドナは猛スピードで飛び回り、それをかわし続ける。
こちらへ反撃する様子はない。カミヤは俺たちを弄ぶような態度なので、おそらくは透明人間の薬の効果が切れるのを待ち、再び空中戦を楽しもうとしているのだろう。
しかし、それはあまりにも無謀だったようで、突如としてエキドナは地へと落下した。直後、その場所へとティアマトが姿を現す。
「今だ! カミヤを撃て!」
俺は一斉攻撃の合図を出し、シルバーブレッドを放った。ユキも同時にシルバーブレッドを放ち、ティアマトもトドメを刺そうと突進した。
だが、エキドナは最後の力を振り絞るかのようにカミヤが背から落ちないように庇う。
カミヤもあきらめてないようでティアマトへとショットガンアローを連射した。
だが、その無防備な瞬間を狙って放った俺たちの矢がカミヤを射止める。
二体の竜とカミヤは地へと落ちた。そして、スカイエンプレス・ティアマトとヘルクイーン・エキドナ、それからカミヤの計三名が倒れたことをシステムメッセージが告げる。
「やった……。倒した!」
「いいえ、まだです!」
ユキの指し示す方を見ると、なんとカミヤが立ち上がっていた。
「何で……? 確かに倒したってシステムメッセージに出たのに!」
「ああ。それは見事だったよ。けれど、俺は復活薬を予め使用していた。一度だけ蘇ることができたのさ!」
衝撃の言葉がカミヤの口から告げられた。
「来い! アズール!」
その声に応じ、アズールが部屋へと入ってくる。
勝ったと思ったのも束の間、最悪の事態を迎えていた。




